KADOKAWAが大規模サイバー攻撃を受けてから一か月以上が経ったが、未だ復旧の目途はたっていないようだ。

だが、そもそも私がこのKADOKAWAサイバー攻撃事件の詳細をわかっていると言ったら嘘になる。

「世の出来事を全てXで把握している」でおなじみの私が、最初にKADOKAWAが攻撃されたことを知ったのはXのトレンドに現れた「ニコニコ動画ダウン」の文字である。

トレンドだけでなく、私のTLの話題は「ニコニコ動画が使えない」に終始していたため、当初問題が起こっているのはニコニコ動画だけという認識になってしまっていた。

後日、ただの不具合ではなくサイバー攻撃だということがわかってきたのだが、相変わらず当TLはニコニコの話しかしていないため「この動画サイトといえばYouTubeのご時世にあえてニコニコをピンポイント攻撃とはチョイスが渋い」とすら思っていた。

その後、ハッカーからの攻撃を止めるため、エンジニアが直接データセンターに赴き、電源とケーブルをぶち抜くという、敵の機体に乗り込み中枢を物理破壊するハリウッド仕草をしたことが話題になり、復旧のめどがたたないニコニコ動画の代わりに「ニコニコ動画(Re:仮)を爆速で立ち上げたところでXでの話題はピークに達した。

ちなみにこのハリウッド仕草は「自爆」によりなされることが多いが、多分このエンジニアは存命である。

  • サイバー攻撃が巨大な社会問題となった現代、頑張れニコ動

    その昔「ニコニコ動画がなくなったー」と歌っていた初音ミクさんも、今頃はひたすらネギを振り回して復旧作業を応援しているに違いない

「ニコニコ動画(Re:仮)」では、かつてニコニコ動画で人気を博した動画がリバイバル配信されており、青春がニコニコの中にしかなかった我々ネット中年が見る走馬灯のようになっている。

この動きの早さは賞賛されたのだが、逆にネット中年が「やっぱ陰陽師アガるわ」と、懐かしさで死んだ時点で、少なくとも我がTL上でのKADOKAWAサイバー攻撃の話題はひと段落ついてしまった感がある。

しかし、この大規模障害は、内部のシステム脆弱性によりATMが定期強制メンテに入るみずほ銀行のような起こるべくして起こった自滅ではなく、はっきりとした外部からの攻撃である。

また攻撃した側も、人生がニコニコとXで構成されている極北の人間に「やっぱニコニコは必要な存在」と思わせたくてこんな大規模攻撃を仕掛けたわけではない。

犯人の目的は「身代金」と言われている。 過去、この連載でも「最近のウイルスはパソコンをロックし『元に戻してほしければ金を払え』と要求してくるタイプもあるらしい」と紹介した気がするが、まさにそれが大規模で起こってしまったということだ。

ちなみに脅迫タイプのウイルスは、画面にポルノ画面を映した状態でロックしたり「お前のPCに児童ポルノを検出したので通報されたくなければ金を払え」というものもあるそうだ。

「エロで脅されると弱い」という人間の脆弱性をついてきており、これに対処するには「脅されて困るようなものは見ない」そして日頃から「見てたけど何か」と、己のエロに対して威風堂々とする訓練が必要である。

実際身代金の要求があり、KADOKAWAがそれに応じたかは不明だが、役員が犯人に対し「払ったのに攻撃をやめないなんてどういうことだ」と怒るメールのやり取りが何故かリークされたりと、内部でも揉めているようだ。

またXではニコニコの話題が大きかったが、もちろんサイバー攻撃の被害はニコニコだけではない。

KADOKAWAの業務サーバーが使えなくなり、業務に大きな支障が出ており、従業員や関連アーティスト、なぜかN校生とその保護者の情報が流出するなど、情報漏洩も大きな問題になっている。

正直、私自身も漫画家という立場で言うなら、ニコニコ動画の停止に騒いでいる場合ではない。

KADOKAWAは元々出版社であり、このサイバー攻撃により、書籍などの受注停止や生産量の減少、物流の遅延が起こっているそうだ。

実際Xでも書店関係者による「KADOKAWAの物流システムは本当に死んでいる」というようなつぶやきを見かけたし、「だが、謎の力により何故か本が届く」というつぶやきも見かけた。

どうやらここでもハリウッド勢が暗躍し、おそらく物理で何とか本を届けているのだろう。

幸い私はKADOKAWAからほとんど書籍を出しておらず、それらがサイバー攻撃の影響で売れていないかというと「普通に売れていないだけ」と言わざるを得ないので、直接関係はないと言えるが、KADOKAWAが主戦場の作家は大きな影響を受けているかもしれないし、いつ他の出版社が攻撃を受けるとも限らない。

もちろん攻撃対象は出版社だけではなく、いつ取引先や自分の会社がサイバー攻撃を受けてパニックに陥るかわからない時代になったということだ。

ちなみに、システムを1から作り直すしかなくなったらしいニコニコ動画に対しても、「本当に作り直すべきなのか」という意見が出ているようだ。

すでにニコニコ動画の有料会員数は全盛期の半分以下になっていたようで、衰退していたものにそこまでのコストをかけて復活する意味はあるのか、ということだ。

現在ニコニコ動画の復活を待ち望む声は少なくないのだが、なくなるかもしれないと言われてから急に惜しむ奴が現れるというのはよくある話だ。

復活を望むなら、復活後も応援すべきであり、もし応援で何とかなるジャンルなのであれば、なくなると言われる前に応援してあげてほしい。