ついに登場したAndroid上で動作するIDE

スマートフォンやタブレットは、これまでコンテンツを消費するためのデバイスという位置付けであったが、近年これらの端末の高性能化は著しく、中にはキーボードドックを備えノートPCのように利用することも可能なものも登場してきている。となれば次はこれらのデバイスを、コンテンツを作成するために利用したいと考えるのが自然な流れだろう。特にプログラマであればAndroid上で開発ができたら…と考えたことが一度はあるのではないだろうか?

今回紹介するAIDEは、なんとAndroid上でJavaを使用したAndroidアプリケーションの開発を行うことができるという驚きのIDEだ。コード補完やインクリメンタルビルド、リファクタリング機能まで備えているうえ、Eclipseとプロジェクトの互換性もあるという本格的なものだ。

AIDEを試してみよう

それでは実際にAIDEを試してみよう。AIDEは、JavaとXMLのシンタックスハイライトに対応したエディタ部分とファイルマネージャ部分の2つのペインに分かれており、ファイルマネージャ部分はソースコードの編集時には自動的に非表示になり、画面のスペースを有効活用できるよう配慮されている(もちろん手動で表示/非表示を切り替えることも可能)。ファイルマネージャでは、ファイルやディレクトリの作成、リネーム、削除といった操作を行うことができる。

図1 : AIDEを起動したところ

ソースコードの編集中は必要に応じてコードの補完候補が表示されるほか、ソースコードのコンパイルエラーがリアルタイムに検出され、エラー内容が一覧で表示される。エラーの一覧からはエラー箇所にジャンプすることや、クイックフィックスでエラーの自動修正が可能だ。また、端末のスペックにもよるだろうが、コード補完やエラーチェックは思ったよりもスムーズに表示される印象で、全体的な動作も軽快だ。

図2 : コード補完

図3 : コンパイルエラーの検出

エディタ上ではピンチ操作で拡大・縮小が可能なほか、クラス名やメソッド名、変数名などをタップすることで定義されている箇所にジャンプできるほか、クラスやファイルの検索、さらにはリファクタリングや選択範囲のフォーマット、コメントアウト、インポート文の自動編成、セッターやゲッターのコード生成などEclipseでお馴染みの操作を行うことができる。

図4 : クラスの検索

図5 : リファクタリングなども可能

日本語入力を正しく扱うことができないものの、各種機能にはキーボードショートカットが設定されており(キーボードショートカットはカスタマイズすることもできる)、ハードウェアキーボードを備えた端末であれば快適にソースコードを編集できるのではないだろうか。

図6 : キーボードショートカットの設定

作成したアプリケーションは、もちろん実行することもできる。アプリケーションを実行すると作成中のプロジェクトがビルドされ、Android端末にインストールされて実行される。ビルドしたapkパッケージは、binディレクトリの配下に生成されている。

図7 : アプリケーションのビルド

まとめ

AIDEには、Androidアプリケーションを開発するために必要な機能が一通り揃っているといっていいだろう。Android上で動作するIDEということでチープなものを想像していたが、実際に試してみると、ソフトウェアキーボードによる操作性の問題はあるものの、予想を遥かに超える完成度に驚かされたというのが本音だ。むしろJavaのコーディング支援機能やナビゲーション機能に関しては、PC上で動作するIDEに匹敵するといっても過言ではない。現状ではデバッグができないものの、Android上でそこまでやる必要があるかというと疑問の残るところで、むしろ課題は操作性なのではないかと感じた。

筆者はスマートフォンやタブレット端末からも利用可能な開発環境は遅かれ早かれ登場すると考えていたが、その本命はWebベースのサービスになるのではないかと考えていた。それだけにAIDEの登場には大きな衝撃を受けた。

現時点で実用的なAndroidアプリケーション開発環境として利用可能かというと厳しい部分があるのは否めないが、Android端末が開発環境としても利用できるようになるかもしれないという可能性を充分に感じさせてくれるプロダクトであることには間違いない。Android端末をお持ちの開発者の方には是非試してみて欲しい。