数多くの家電製品に触れていると、ときどき画期的な商品に出会うことがある。「こういうものが欲しかったんだよ」と叫び声が自然と出てきそうな家電。今回、紹介する商品もそうである。普段、家事はしないという人からすると"So what?(だから何?)" と良さがわかりにくい商品だ。しかし、主婦からすると、「そうそう、そこが不満だったのよ」などと、言ってしまいたくなるような、私の気持ちをわかってくれてありがとうな商品なんである。

叫び声が出てくる家電。絶叫家電とでもいおうか。かつては、エアコンのお掃除ロボットがぐうたら主婦の絶叫家電だった。あの面倒なフィルター掃除を自動でしてくれるのである。で、今回紹介させていただくのは、蒸気レスのIHジャー炊飯器「NJ-XS10J」である。ここ数年、高級炊飯器というと、おいしさを追求したものが多く出ていた。しかし、この炊飯器が目指したのはおいしさではない。お料理を頻繁になさる方はピンとくると思うが、炊飯器というものはご飯を炊いている間、蒸気を相当出すのである。この蒸気が曲者である。もわーっと壁に蒸気がふりかかるのだが、これが私は気に入らない。近所の主婦は炊飯器をラックに収納している。一番上にレンジを置き、中段に炊飯器を置くのである。しかし、水蒸気がこもるので、炊飯中はスライドを引いて手前に出してご飯を炊く。手前にスライドさせないで使うと、ラックの中が水滴でびしょびしょになってしまうのだ。とはいえ、炊飯器を手前に出したら、じゃまなのはいうまでもない。炊飯器から出る蒸気は邪魔者であった。でも、どうしようもないから諦めていたのだ。

料理はレシピ通りに作るべきか

ところで、料理をレシピ通りに作る人と、レシピは参考にするが、あくまで自分で分量をアレンジして作る人がいる。お菓子はレシピ通りにきっちり計測するのが原則だといわれている。が、肉じゃがやハンバーグ、コーンスープなどは量らずに適当に作る人は意外と多い。実のところ、ぐうたら主婦は前者である。きっちり量って、料理本の通りに作る主義なのだ。そのほうが絶対おいしい(と私は思っている)。だって、料理本を作った人は料理の専門家であって、朝から晩まで料理のことを考えて、料理作りを実践している(はずだ)。私が料理に割く時間は一日のうち高が知れている。そんな私が料理専門家の編み出した分量を変えても、その料理人の上を行くはずがない。私は料理人への敬意を含めてレシピはいじらない。

蒸気レスIH「NJ-XS10J」。宝石のようなルビーレッドと、ダイヤモンドシルバーの2色

もちろん、個人で料理を楽しみ、レシピをあれこれ工夫するのが趣味だという人もいるだろう。それはそれで、別に料理を出してお金をもらっているわけではないし、楽しみの範囲でとどめるのならかまわないと思う。でも、私はおいしさを重視したいので、レシピを見ながら料理するのだ。

見やすいディスプレイも魅力

そんな私がよくやる失敗は、炊飯器の上に料理本を置きっぱなしにしてしまうこと。キッチンが狭く、本の置き場がないのである。炊飯器の上に本を置く。気がつくと、炊飯器から蒸気が吹き出ていて、料理本がよれよれになっているのである。しかも、本で、蒸気の吹き出し口をふさいでしまう。すぐ気がつけばいいが、置きっ放しの時間が長いと故障の原因にもなるのではないだろうか。このNJ-XS10Jは、蒸気を出さないので、本をぬらすこともない。

おいしく炊けました!

手入れもラクラク

ラックタイプの炊飯器収納を利用している人も、NJ-XS10Jならわざわざスライドさせずにすむ。狭いキッチンのスペースを有効利用できるのだ。見た目はすっきりとしたスクウェアデザイン。キッチンにしまっておくのがもったいない。食べ盛りの子どもがいる家はテーブルにおいてもおかしくない。色はルビーレッドとダイヤモンドシルバー。ルビーレッドを使ってみたが、とても美しい色で使っていながらおしゃれな気分にさせてくれた。しかも、手入れがラクだ。普通の炊飯器は上側が丸く、蒸気穴などででこぼこしている。が、NJ-XS10Jの上面はフラット。汚れても布巾でひとふきすればきれいになる。

簡単に着脱できる水タンク

それにしても、今まで出放題だった水蒸気はいったいどこに行ってしまったのだろう。仕掛けは水タンクにある。水蒸気が外に漏れないのはこのタンクのおかげなんである。内釜の上側に、カートリッジがあるのだが、ここを通って蒸気は冷却され、水に戻される。水タンクの中に水蒸気が行き着くので、釜の外に出ないわけだ。

水蒸気と一緒にご飯のうまみが水に逃げてしまうのではと不安に思う人いるだろう。そこは、カートリッジがしっかりと働く。このカートリッジには、うまみをためておく機能がついている。水蒸気だけが水に戻り、うまみはお米に還元してくれるのだ。しかも、蒸気口がないから、吹きこぼれの心配がなく、大火力を心置きなく維持できる。これもおいしさの秘訣だという。炊き上がったご飯の味は申し分ない。

もちろん、究極のご飯の味を追求するなら、最高級品で味を前面に出しているもののほうがいいかもしれない。が、水蒸気が出ない便利さは何よりも大きい。収納に不便を感じていた人、従来品の水蒸気に対して許せなーいと思っていた人など、炊飯器の使い勝手に不満があった人は満足できる逸品だ。具体的な機能や価格などは次週お伝えする。

イラスト:YO-CO