フィリピンといえば、どのような印象をお持ちでしょうか?フィリピンは全人口の10%が海外に出稼ぎに出ている国ということもあり、日本にも働きに来ている人がいる国という印象を持っている人も多いのではないでしょうか。現在、日本で中長期滞在しているフィリピン人は27万人を超えています 。日本に滞在している外国人ランキングでは4位だそうです。

これだけ多くのフィリピン人が滞在しているのは日本が住みやすい国であり、働きやすい国であるというのもあるかもしれませんが、私は国民性としての共通項があるからだと思います。例えば、フィリピンの自然災害の多さが挙げられます。フィリピンは日本と同じように台風、地震等が多い国として知られています。つまり、フィリピンは災害が多いのでその国民にも日本と同じように乗り越える力があると思います。

そして、フィリピンには「utang na loob(ウータン ナ ロブ)」という言葉があり、報恩感謝を大切にする義理人情に厚い国民性があります。「bayanihan (バヤニハン)」という助け合うことを大切にする言葉もあります。災害に耐え、乗り越える力があり、義理人情に厚く、助け合いの精神がある国なのです。この言葉を聞いただけでもフィリピンの人たちと仲良くやっていけそうな気がしますよね。

今回は、外国人エンジニア派遣に力を入れており、世界中にネットワークを持つヒューマンリソシアの協力を得て、 フィリピンとのビジネスを展開しているreaple 代表取締役の佐々木隆宏氏に、フィリピンのIT事情についてうかがったので、紹介しましょう。

聞き手: 佐々木さん、早速ですが簡単に自己紹介をお願いいたします。

reaple 代表取締役 佐々木隆宏氏

reaple 代表取締役 佐々木隆宏氏

佐々木氏: 私はJICA-国際協力機構に35年勤務し、東南アジアには10年以上駐在しました。その間、フィリピン事務所長、ミャンマー事務所長、在ベトナム日本大使館書記官を務めました。2019年3月にreapleを創業し、代表取締役に就任しています。現在はフィリピンを中心に、海外IT人材の紹介事業、留学生の職業紹介事業、オフショア事業支援を行っています。コロナ禍により人の移動は止まってしまいましたが、フィリピン第3の都市のダバオで、現地のパートナー会社(Next BPO Solutions)と組んで、個々のお客様専任エンジニアによるアウトソーシング(DSO:Dedicated Staff Outsourcing)サービスを始めました。

私どもは、お客様が希望する要件に基づいて、エンジニアを公募し、お客様とともに厳選な選考の下、最高のチームの構築を行います。分野は、カスタマーサービス、テクニカルサポート、ITエンジニアリング、デジタルマーケティング、ウェブデザイン/開発、ソフトウェアプログラミング、システム開発などさまざまです。

聞き手: 素晴らしいご経歴ですね。まさにこのコーナーにふさわしい方とお見受けしました。この連載コラムのコーナーでは毎回、現地のITエンジニアの給与についてお聞きしているのですが、フィリピンのITエンジニアの給与について教えていただけますでしょうか?

佐々木氏: 2018年フィリピン統計局の調査によれば、フィリピン人の平均年収は31万ペソ(約68万円)で、月収にすれば、2万6000ペソになります。IT関連学部を卒業したエンジニアは、エントリーレベルでも他の大卒に比べrw25%から30%高いといわれており、新卒者でも、平均月収より少し足りない程度の給与で採用されます。また、スキルと経験にもよりますが、5年の経験者で、平均月収2倍に、6年から10年で平均月収の3倍から4倍になる等、高い収入を得ることが可能です。

  • 佐々木氏とフィリピンのエンジニアたち

    佐々木氏とフィリピンのエンジニアたち

聞き手: 他の国でもそうですが、ITエンジニアとして経験を積まれると、給与が上がる方が多いです。給与が高いと仕事しても人気が出ると思うのですが、給与以外にITエンジニアが人気な理由を教えていただけますでしょうか。

佐々木氏: 2019年の民間調査において、フィリピンで新しく伸びる職業として、データサイエンティスト、アプリ開発者、バックエンドデベロッパー、フルスタックエンジニア、セールスエンジニアの5つが挙がりました。これらの職業には、全てデジタルの技術と知識が必要で、プログラミングのノウハウは必須です。これまで、フィリピンではコールセンターなどのBPOビジネスが人気でしたが、これからは単なるオペレーターではなく、安定的で高収入を得られるプログラマーやデータサイエンティストが人気の職業の1つです。

聞き手: 日本と同じような状況ですね。もう日本と東南アジアの国との差はあまりないのかもしれませんね。ちなみに今人気のプログラミング言語はなんでしょうか?また、人気の理由を教えてください。

佐々木氏: フィリピンにおける、IT系企業の8割以上はオフショア事業を手掛けていると言われています。したがって、就職につながる人気のプログラミング言語は、海外のお客様次第というのが現状ではないでしょうか。

例えば、アメリカ西海岸でPythonが人気だったとしても、フィリピンのエンジニアに委託する仕事は、過去のシステムの維持管理業務として、10年前に人気であったJava 、PHPなどを使うことも多いようです。エンジニアとして人気のある言語は、Python、JavaScript、Java、Ruby、C、C#、C++、PHP、VB.Netでしょう。これらは、大学で教えられている一般的な言語です。また、これらの言語は、ほとんどの場合、国内外のビジネスで使用されています。

聞き手: ちなみにですが、フィリピンではIT企業で起業されている人は多いですか?どのような人が成功されると思いますか?

佐々木氏: フィリピンでは、フリーランスのように、小規模で起業されている人が多いです。英語力があるため、UpworkやFreelancerなどのフリーランサーのオンラインプラットフォームに登録し、国外からも直接仕事を受託しています。とりわけ成功している起業家は技術と知識があり、お客様の信頼を勝ちとり業績を伸ばしています。

ある調査で、フィリピン人は1日当たりのスマートフォンの使用時間が世界一でしたが、Eコマースの拡充は期待されています。このコロナ禍でこれまで以上にこの分野での起業機会が広がるのではしょうか。ビジネス、教育、小売りの分野でも、オンラインで行うことが当たり前になってきており、エンジニアへの需要は増すばかりですし、日本で成功した事例を適用するようなビジネスも成り立つかもしれません。

聞き手: そうなんですね。日本人プログラマーがフィリピンで成功する可能性はありますでしょうか?また、どのような人が成功しやすいでしょうか?

佐々木氏: 日本語と英語ができるエンジニアは需要があります。日本企業との間でコンサルタントが可能で、日比双方を的確につなぐブリッジエンジニアが必要です。ブリッジを行う日本のエンジニアが、日本のお客様を持ってこられると強みになりますし、立ち上がりはうまくいくと思います。他方、スケールするには、現地エンジニアの日本語がネックになりますので、いかに現地での日本語教育を組み合わせるか重要です。フィリピン人は外国人をとても良く観察しているので、現地の文化や慣習を尊重する姿勢を大切にしてください。

聞き手: 参考になるお話をありがとうございました。とても分かりやすい話でした。国民性だけでなく、IT業界の事情も似ているため、フィリピンのエンジニアの方とよいタッグが組めるように感じました。興味がある方は一度フィリピンを訪れてみてはいかがでしょうか?それでは今日はこの辺で。

著者プロフィール

吉政忠志


業界を代表するトップベンチャー企業でマーケティング責任者を歴任。30代前半で同年代国内トップクラスの年収を獲得し、伝説的な給与所得者と呼ばれるようになる。現在は、吉政創成株式会社 代表取締役、プライム・ストラテジー株式会社 取締役、一般社団法人PHP技術者認定機構 代表理事、一般社団法人Rails技術者認定試験運営委員会、BOSS-CON JAPAN 理事長、一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会 代表理事を兼任。