AOSデータでは、Webセミナーなどを積極的に開催している。そこでは、各界の専門家による最新の情報が提供される。これまでは、オフラインで開催されてきたが、コロナの影響でWebによるオンライン形式で、開催されることがほとんどとなった。逆に、オフラインでは当日、都合がつかない方でも、オンラインで好きなタイミングで視聴できるという点はありがたいことかもしれない。

本連載ではここまで、実際の現場の事例などを中心に紹介してきたが、この後からはひとまず、この一連のWebセミナーから有益と思われる話題に触れていきたいと思う。

また、フォレンジックに関するサービスは、2010年8月より同じAOSグループのAOSデータ社に移管された。この点は適宜、読み変えていただけると幸いである。

コロナが変える企業のリスク対策

まず紹介したいのは、企業内フォレンジックオンラインセミナー「企業内フォレンジック コロナによる不正リスク対策」から、リーガルテック社・社長の佐々木隆仁氏による「第二部 AOS Forensicsルーム リスク対策」である。

動画: AOS Forensicsルーム リスク対策

2020年春以来、コロナウイルスの蔓延により、長期にわたるテレワークにみられるように仕事のやり方が変わってきた。従来は会社で仕事をすることが普通であったのが、テレワークなど自宅で仕事をすることが当たり前になってきた。当然、これまでにないリスク対策が求められる、と佐々木氏は警告する。

具体的に見ていこう。まず、想定されるリスクであるが、以下が想定される。

  • 情報漏洩
  • サイバー攻撃対策
  • 不正会計
  • 労働訴訟問題

佐々木氏は次のように指摘する。

テレワークにより、自宅でも会社の機密性の高い種類などを扱うようになる。自宅のPCで、会社レベルのセキュリティは維持できるか。働き方の変化とともに、リスクマネージメントのあり方も変化している。

また、サイバー攻撃はコロナ以前から顕在化している。Web会議などを、攻撃者が攻撃対象とすることも発生している。さらに対策が求められる分野といえるだろう。

不正会計であるが、多くの会社がコロナの影響で業績を落としている。すると、会社の業績悪化で不正に手を染めることも増えると予想する。

上に関連するが、業績が悪化すれば、人員の配置転換や解雇などが行われる。その際に適切に対応を行えば問題ないが、対応いかんによっては訴訟に発展しかねない。

多くの会社では、従来的なリスクマネージメント策定をしている。しかし、ひとたびトラブルが発生すれば、非常に大きなダメージを受ける。それがコロナによって、増大されている。こういった新しいリスクが発生していると佐々木氏は語る。そして、そういったトラブルに対し、会社ではすみやかに社内調査を行い証拠データを保全する必要がある。一方でテレワークの普及により、デジタルデータでのやりとりは増大する。

AOS Forensicsルーム:企業が自力でリスク対策

では、どういった対策が求められるのか。佐々木氏は、AOSデータで、長年、フォレンジックに関わる事業を通じて、トラブルに対応する場面に立ち会ってきた。そこから、得たのは「企業が自力で対応できる能力」が必要と力説する。

この「自力」とは何であるか。企業で不祥事が発生した場合、AOSデータなど外部の組織に依頼することがほとんどであった。さらには、記者会見や第三者委員会の設置など、多くの労力をかける必要があった。しかし、これらを含め円滑に対応できている会社は多くない。それどころか、そういったトラブルに遭遇すると対応のまずさから、傷口を広げてしまうようなこともめずらしくない。

そこで、佐々木氏が提案するのが、同社のAOS Forensicsルームである。会社が会社内において、自力で証拠調査を行えることを目的としている。AOS Forensicsルームがあれば会社の調査官が、証拠捜査を行うことが可能となる。

  • AOS Forensicsルーム

    図1 AOS Forensicsルーム

AOS Forensicsルームのメリットであるが、佐々木氏は以下の3点をあげる。

  • 予防法務としてのメリット
  • 早期発見のメリット
  • 事後対策としてのメリット

詳しいことは、上の動画を見ていただきたいのであるが、早期発見のメリットについて紹介したい。

トラブルが発生すると、会社は多額の賠償金などを支払うことになる。そこで、対策として不正の通報窓口や内部通報制度の導入を行っている。それ以外にも抜き打ちの内部監査や匿名の社内アンケートなどがある。しかし、そこから調査すべき案件があったとして、どうやって調べるかである。多くが、簡単な聞き取り調査で済ませてしまうことが多い。さらに、調査においても「言った言わない」のレベルにとどまり、正確な事実の究明に至らないことが少なくない。ここで重要になるのが、客観的なデジタルデータである。早期に発見を行うには、会社内でみずからフォレンジック調査が可能かどうかが重要となると佐々木氏は指摘する。

AOS Forensicsルームについて

AOS Forensicsルームは、フォレンジック調査ソフトやハードウェアで構成されたシステムとして提供される。多くの方が「実際の調査を行うにはどうすれば?」と思われるであろう。そこでAOSデータでは、

  • フォレンジックルーム設置支援
  • フォレンジックトレーニング
  • コンサルティング

なども提供する。フォレンジック調査のノウハウともいえる部分であるが、こういった調査を行う会社にとっては、これらを公開することで、ビジネス機会の喪失につながると危惧する向きもある。それが理由となり、会社において自力でフォレンジック調査を行う土壌が形成されなかった。

しかし、AOSデータでは、今後も発生するであろうコロナによる問題に単独で対応することは明らかに無理があると判断した。最初から外部の調査会社に依頼するのではなく、会社みずからが、調査能力を備えていくことが重要になると考え、あえてそのノウハウを公開することとしたと佐々木氏は語っている。

もちろん、一定のコストは必要となる。しかし、問題が発生し、その対応となると損害賠償も含めれば、巨額の費用が必要となる。転ばぬ先の杖ではないが、その必要性は検討する価値があると思う。

もし、興味を持たれたのであれば、上のリンクより、動画を参照してほしい。20分程度なので、ちょっとした時間の合間にも視聴可能であろう。また、同セミナーの第一部では「新型コロナウイルス感染症が不正リスクに与える影響とその対応」というタイトルで、リーガレックスの立川正人氏が講演を行っている。こちらも動画があるので、参考にしていただきたい。