8月5日~7日(日本時間5日~8日)、北米ラスベガスにて格闘ゲームの総合イベント「Evolution(EVO)2022」が開催されました。3年ぶりのオフライン開催です。
メイントーナメントには、『ストリートファイターV CE(SFV)』『GUILTY GEAR -ストライブ-』『鉄拳7』『モータルコンバット11:アルティメット』『ザ キング オブ ファイターズ XV(KOF XV)』『MELTY BLOOD:タイプルミナ』『ドラゴンボール ファイターズ』『グランブルーファンタジー ヴァーサス』『スカルガールズ:セカンドアンコール』の9タイトルが採用されました。
参加人数は『GUILTY GEAR -ストライブ-』が2,158人のエントリーと、全タイトル中最大。2番目に多い『SFV』が1,324人だったので、『GUILTY GEAR -ストライブ-』のグローバルでの人気の高さが伺えます。
『鉄拳7』は、チクリン選手、弦選手、ノビ選手など日本のトッププレイヤーに、Knee選手やランチュウ選手をはじめとする鉄拳修羅の国・韓国勢のほか、EVO Japan 2019で旋風を巻き起こしたArslan Ash選手のいる新興パキスタンと猛者ぞろいです。もちろん、北米や欧州の強豪も参加していて、世界大会ならではの豪華なメンバーが顔を合わせました。
そんな中、優勝したのはKnee選手。長らく『鉄拳』界の王者として君臨した選手ですが、EVOやTekken World Tourの「2大大会」では9年ぶりの戴冠です。2位はパキスタンのKhan選手。ルーザーズファイナルでは、Arslan Ash選手とのパキスタン選手同士の対戦に打ち勝ち、グランドファイナルへ進出しました。日本人選手最高位はPINYA選手の7位タイです。
大会終了後には、「Tekken World Tour 2022」のGRAND FINALSがオランダ アムステルダムで開催されることと、8月に行われるタイトルの大型アップデートの発表が行われました。
『SFV』は、ファイナリストの8名中の4名が日本人選手でした。しかも、1度も負けてないウィナーズサイドがウメハラ選手、ガチくん選手、ときど選手、カワノ選手とすべて日本人選手。ルーザーズは、Justakid選手、Oil King選手、Mister Crimson選手、iDom選手とすべて海外勢でした。海外勢最強と呼び声が高いPunk選手はトップ48のブラケットで敗退しています。
圧巻だったのは、ルーザーズサイドのiDom選手。Mister Crimson選手を倒したあと、ウィナーズから落ちてきたウメハラ選手、ときど選手、ガチくん選手を次々に撃破し、グランドファイナルへ進出します。
グランドファイナルは、ウィナーズサイドから進出したカワノ選手との対戦。日本人3選手を倒した勢いをそのままに、カワノ選手も撃破し、リセットを達成します。
ファイナリストのウィナーズにいた日本人選手全員を倒し、これはiDom選手の主人公ルート?と思いましたが、現実は甘くありませんでした。グランドファイナルリセット後は、フルセットフルラウンドまでもつれ込みましたが、カワノ選手が巻き返し、世界一の栄冠に輝きました。
カワノ選手は、昨年、カプコンカップやストリートファイターリーグの世界大会など数々の世界大会への挑戦権を得ながら、大会の中止が相次ぎ、世界一となる機会を損失していました。それだけに、今回の優勝の喜びも大きいでしょう。久々の海外での大会、海外勢の強豪との対戦について、カワノ選手は次のように話します。
「正直なところ海外勢との対戦の経験が浅くて、不安はかなりありました。特にiDomと当たるときは『CAPCOM CUPで優勝するような人だから、強気の選択をしてくるはず。だからそれよりさらに強気の選択を通す』と戦う前から決めていました。結果、かなりしんどい内容ではあったのですが、本当に0.001mmくらいの差で読み合い上回ることができたのかなと思います。みなさん応援ありがとうございました」(Hitbox/GOOD8SQUAD カワノ選手)
なお、大会終了後には『ストリートファイター6』の新情報を発表。前回のトレーラーの最後に登場したキンバリーと、『ストIV』から3作連続登場のジュリのトレーラーが流れました。
そのほかのタイトルの結果は以下の通りです。
『KOF XV』は、1~3位までが台湾勢という快挙。優勝したのはZJZ選手です。日本勢は5位タイのスコア選手と7位タイのmok選手という結果でした。
『ドラゴンボールファイターズ』は、フランス勢の勢いが止まらず、1位と3・4位をフランス人選手が獲得しました。優勝したのは、Wawa選手。日本人最高位は5位タイのフェンリっち選手です。
『グランブルーファンタジー ヴァーサス』は、日本人選手が上位を独占。5位までが日本人選手となりました。優勝したのは、gamera選手です。
『モータルコンバット11:アルティメット』は、チリ人選手であるScorpionprocs選手が優勝。3位にもチリ人のNicolas選手が入りました。北米で人気のタイトルで、ファイナリストの8名中4名は北米勢でした。
『MELTY BLOOD:タイプルミナ』は、ファイナリストがアメリカ勢と日本勢によって締められました。優勝したのは日本人のジン選手です。
『スカルガールズ:セカンドアンコール』は、アメリカ勢が上位独占状態でしたが、ファイナリスト唯一の日本人であるぺんぺん選手が3位入賞しています。
『GUILTY GEAR -ストライブ-』は、残念ながら日本人選手の活躍はみられず。ベスト8はアメリカを中心に、サウジアラビア、スウェーデン、カナダ、韓国と国際色豊かな結果となっています。
プレステのオフラインプレイに影響は?
今回のEVOはソニー・インタラクティブ・エンタテインメント(SIE)が運営に関わるようになったこともあり、使用ハードがPlayStation 4(PS4)でした。タイトルによってはPC版に比べて操作反応速度や画面表示速度の違いから、クロスプレイをする場合、PC版のほうが有利とされてきました。
また、それらの差からPS4版とPC版で違う対応の操作が必要です。両方プレイする場合、どちらの操作感も身につけなければならず、プレイヤーにとっては負担になるでしょう。
そのため、最初はマイナス面しかないように思われてきましたが、実際に大会を見てみると、PS4版ならではの戦い方やキャラクターピックなど、いつもの大会と違うシーンを観られて、これはこれでありなのではと思いました。参加者全員がPS4でプレイするため、クロスプレイのような有利不利もなく、同条件であることで不公平感もないと言えます。
ただし、PS4でのプレイが特殊な環境であることは否めません。プロテニスの4大タイトルで言えば、全仏オープンのクレーコートでの大会に近いのではないでしょうか。クレーコートは球速が出ない分、ラリーが続きやすく、長期戦になりがちです。ハードコートを主戦場とする選手にとってみれば、クレーコートは特殊な環境で、クレーコート専用の戦い方が必要になってきます。
そういった環境の違いをゲーム大会でも良しとするのであれば、ハードコートとクレーコートの違いのように、PS4版とPC版の違いも特徴となります。『SFV』を例にとってみれば、PS版はPC版に比べてヒット確認や差し替えしがしにくくなる分、前ステや突進技が通りやすくなり、その結果、PC版よりもアグレッシブな戦いが有効になっているようでした。
プレイヤーにとっては、PS4版とPC版、それぞれの戦い方を身につけないといけないので、負担が増えることは間違いないのですが、大会の差別化ができる利点は十分にあるでしょう。もしかしたらクレーコートに強いナダル選手のように、プレイステーションに強い選手が生まれるかもしれません。
それがEVOである必要があるかはわかりませんが、『SFV』のCAPCOM CUP、『鉄拳7』のTWT GRAND FINALSに匹敵するプレイステーション専用の国際大会の新設が落とし所のような気がします。ただ、そもそも環境の違う大会が必要かどうかと言われると、難しいところです。
2023年の3月31日~4月2日には東京ビッグサイトで「EVO JAPAN 2023」が開催されるとの発表もありました。EVO JAPANのプレイ環境がどうなるかはまだ見えませんが、しっかりと検討してほしいところです。