3月23・24日に、幕張メッセにて、「全国高校eスポーツ選手権」のオフライン決勝大会が開催された。同大会は、全国の高校生が『ロケットリーグ』と『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』で競い合う、いわばeスポーツのインターハイ。主催者は、選抜高校野球大会(センバツ)を手がける毎日新聞社だ。
最近ではテレビ東京と電通が高校生対象のeスポーツ大会『STAGE:0』の開催を発表したり、ルネサンス高校新宿代々木キャンパスがeスポーツコースを開設したりと、高校生とeスポーツとの接点が増えている。
なかでも、全国高校eスポーツ選手権は今回が初の試み。高校生が対象のeスポーツ大会としても初の開催だ。伝統的なメディアの新聞社が行うことでも話題になった。
通信高校では難しかった「部としての活動」を実現
今大会にエントリーしたのは、LoL部門が93チーム、ロケットリーグ部門が60チームだ。最終的に、ロケットリーグ部門は佐賀県の佐賀県立鹿島高校「OLPiXと愉快な仲間たち」が、LoL部門は東京都の学芸大附属国際「ISS GAMING」が優勝した。
予選はすべてオンラインの試合だったので、オフラインで、しかも大勢のオーディエンスの前で試合するのは決勝大会が初。物怖じしない生徒もいたが、場慣れしていない生徒も多く、緊張した面持ちで大会に参加している様子が見受けられた。
同大会の予選は12月で、本戦は3月。受験シーズンと重なるので、本選出場が決まったチームの3年生は受験勉強をしながら練習しただろう。また、過去に例のない試みということもあり、学校側への申請や参加表明など、慣れないことも多かったはずだ。高校生にとって、それらは決して簡単なことではない。それでも延べ150チーム以上が参加したことを考えれば、今回の取り組みがいかに高校生から受け入れられたかがわかる。
なかでも、注目したいのが、通信制高校の参加の多さだ。通信制高校には、通学制と通信制があり、通信制の場合、基本的に学校へ通うことはない。『LoL』の決勝大会に進出したN高校は心斎橋キャンパスからの登録だったが、大阪近辺に住んでいる生徒ばかりではなく、全国からオンラインで授業を受けている生徒もいる。
したがって、高校に通っていても、同級生と出会うことは少なく、1つの場所に集まって行う部活も基本的にできない。特に運動系はそうだろう。しかし、eスポーツであれば、基本オンラインで集まり、一緒にプレイすることができる。
つまり、通信制高校では諦めることの多い部活動を、eスポーツが実現させてくれたと言ってもいいだろう。そして、部活をする以上、ほかの高校と競い合うという大会は大きなモチベーションになるものだ。
今回の大会はeスポーツ部の発足にも寄与
今回参加したチームは、パソコン部など、普段はほかの活動をしている部であったり、大会のために急遽集まった有志であったり、同好会的なものであったりと、正式な「eスポーツ部」でないケースも多い。
『LoL』の決勝大会に進出した岡山共生高校はeスポーツ部としての参加だったが、大会が開催されるまでは「同好会扱い」で、大会出場に際して、学校側へ交渉した結果、部として認めてもらったのだという。
最近、公費でゲームやパソコンを購入したり、部活でゲームをしたりすることに嫌悪感を抱く教師がいるというニュースを耳にする。しかし、高校生がこれだけ自主的に行動し、そして通信制の場合は諦めることの多かった部活に参加できる喜びがあるのであれば、後押ししたいと思うものではないだろうか。
全国高校eスポーツ選手権は次回の開催も発表されている。学校でeスポーツ部を発足させるハードルが高い学校もあるかもしれないが、今年のがんばりを見せた参加校のおかげで、そのハードルは多少なりとも低くなっていくはずだ。
最初に述べたが、全国高校生eスポーツ選手権は毎日新聞社が主催の大会。つまり、センバツや全国高校ラグビー、全国高校駅伝競走大会、全日本学生音楽コンクールなど、高校生のためのスポーツ、文化事業を支えるイベントであるということは変わりないはずなのだ。