どの家庭にも1本はあるカッターナイフ。安くて、使いやすくて、便利ですな。そのせいか時々話題になります。最近目にしたのは「会社で使用禁止」という話です。実際「カッターナイフ 使用禁止」で検索すると、まあ禁止というか自由に使えないという事例が出てきます。禁止はカッターナイフだけではないのですが、代表として登場です。

また、カッターナイフを所持しているから銃刀法違反!! で逮捕されたという話もありましたな。これまた、えーってな話ですな。

いずれ本当に身近な道具、カッターナイフについてまとめてみましたよ。

カッターナイフ。刃先を捨て、切れ味を維持するスグレものですな。日本で発明されたのは、割と知られているかな? 1956年に大阪の岡田良男氏が「ガラスの破片でカットし、使えなくなったら割って新鮮な切っ先で切る靴職人」「板チョコがぽきんとキレイに割れる」ことから着想して発明したそうです。現在も岡田氏が創業したオルファと、岡田氏と共に特許出願して最初にカッターナイフの商品化を行ったエヌティーが大きなシェアを持っています。国によってはジャパニーズ・ナイフと呼ぶそうですね。

カッターナイフは、刃物です。Wikipedia先生によると、刃物というのは鋭く硬いエッジ=刃で、切ったり削ったりする道具一般を指して呼ぶんだそうです。その刃は、使うと鈍ったり刃こぼれしたりで鋭さが失われ、切れにくくなってしまいます。が、砥石などで研ぎ直すことで、刃はリフレッシュし、元の切れ味を取り戻します。包丁ぐらいなら私もたまに研ぎますけれど、実際気持ちいいくらいよく切れるようになりますね。

ただ、この研ぐというのはなかなかコツが必要で、かつ面倒な作業でございます。で、研がない方法が石器時代に既に使われていました。少なくとも5000年以上前に人類は割るとシャープな角ができる特別な石=実は火山ガラスで黒曜石と言われる、を入手し、適当に割って刃先をリフレッシュさせながら使っていました。切れなくなったらまた割るわけです。この古代の刃物の材料、黒曜石は日本でも縄文時代には使われていたのがわかっています。先日紹介した、先史時代状態から科学文明復活させるお話、Dr.STONEでも、金属が入手できない時には明らかに黒曜石が使われていますな。ちなみに黒曜石は火山の周辺に水面があるところで産出するので、世界的にも産地は偏っています。日本では北海道遠軽、八ヶ岳山麓、伊豆・箱根、九州の一部が産地です。黒曜石はいわば、古代のカッターナイフなのですが、その便利な道具の交易のために、石器時代の人々は長距離の旅をしたらしいんですな。

さて、黒曜石を使う石器時代から、5000年前の青銅や鉄など金属が使える時代になり、金属は形を自在に変える加工が可能なことから、刃物は一気に進化します。多種多様な金属製の刃物が武器にも使われましたが。日常では、切る、削るという加工には欠かせないものでございます。ケーキやチーズを切るのにも使いますし、ダイヤモンドも使って、ガラスなどの硬い材料に傷をつけ、キレイに折り切るにも使われました。最近はダイヤモンドを使わないガラス切りが一般的なんだそうですね。

もちろん、科学研究にも刃物は必要です。実験道具チューブやパイプの加工はもちろん、サンプルを適当に切り分けるのにも使われます。私も学生時代に顕微鏡で石を観察するために、岩石カッターを使ったことがありますが、あれはかなりおっかなびっくりでした。でも、石も切れるんだと当たり前のことに感心はいたしましたなー。

ところで、カッターナイフです。最大の特徴は長大な刃を繰り出し、先端を少しずつ折ることで「研ぐことなく」フレッシュな刃を維持する点ですな。いうならば金属器の研ぐ刃物に、石器時代の割ってリフレッシュを掛け合わせたものです。

紙を切るものから、段ボール、さらにはタイルや金属を切るのにも、専用のカッターナイフが使われます。元々は、紙を切ることが多い印刷の現場の必要から誕生したんだそうです。カッターナイフ以前は、剃刀の刃を使って、使い終わったら、その辺に捨てていたのだそうです。研ぐでも割るでもない、使い捨てですな。カッターナイフはこの辺りを解決するということで発明されたということでございます。なお、カッターナイフの刃は基本鋼鉄製品ですが、最近はセラミック刃のものもあります。

そして、今では様々な国でも作られているカッターナイフですが、発明以来、安くて手軽な点が維持されています。替刃など50本で千円とか投げ売りもいいところです。もうちょっと高くてもバチは当たらないように思うのですがね。ステープラーの針より下手すりゃ安いんじゃないの? という値段です。ついでに、もしかしてーと思って「高級カッター」を検索したのですが、オルファさんもエヌティーさんもコクヨさんもそんなに高価なものは作ってないんですな。10万円のカッターとかあっても面白いと思うんですけどね。なお、こちらにいろいろなカッターが紹介されています。本当にいろいろあっておもしろいですよー。

ところで冒頭の話です。カッターナイフ禁止というのは、怪我をする人が出やすく、安全第一な職場が嫌うということらしいんですね。ただ、元々は面倒なカミソリを手軽で安くて安全な形にしたのがカッターナイフなわけです。ちょっとしたことをするのに、わざわざ便利な道具を規制するのはどうよ? という声もSNSでは持ち上がっていますね。学校でも使わないという指導をしているところもあわせて、多少怪我しながらでも使えるようんすべきだ、自転車と同じという論調も見受けられます。

ただ、実際カッターナイフは、結構面倒なケガや、銃刀法にも問われるような長い刃を持っているのが問題なわけです。自分も他人も傷つける。割と簡単に、しかも使うのに免許はいらないわけでございます。

この辺りは、そろそろ技術で解決すべきなんじゃないかなと思ったりもします。実際、各社、子供が使っても安全なオルファのキッターをはじめ、刃の露出部を小さくしたカッターナイフなどもいろいろ登場していますし、そもそも「ちょいと切る」のが目的です。これは将来はカッターナイフ以外で達成 -例えばレーザーなどで- されるかもしれませんな。それを発明するのは、また日本人なのでしょうか。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。