近年、データサイエンティストの需要の高まりとともに、データサイエンティストを養成する教育機関が増えている。ただし、「スクールに通ったとして、本当にデータサイエンティストになれるの?」と疑問を持っている人もいるのではないだろうか。そこで今回は、スクールを受講した後に、データサイエンティストに転身したデータミックスの清水嵩文氏に話を聞いた。

  • データミックス 清水嵩文氏

「21世紀のセクシーな職業」に興味を惹かれ

清水氏は大学を卒業した後、生命保険会社の営業職に就くが、大好きだったスノーボードに専念するため、その会社を辞めてしまった。その後、Web広告代理店に営業職として務めるが、その傍ら、データミックスのデータサイエンティストスクールに通った。

データサイエンティストスクールに通おうと思った理由を聞いたところ、次のような答えが返ってきた。

「大学時代、『Harvard Business Review』がデータサイエンティストを『21世紀で最もセクシーな職業』と表現したことを知り、興味を持ちました。また、卒論を書くにあたり、Twitterを用いた分析を行ったのですが、その際、仮説を立て、それに基づきデータを収集し、分析を行い、考察を導くという過程にも面白さを感じました。こうしたことから、データサイエンティストになろうと思い立ちました」

スクールには7カ月通ったそうだが、やはり最初は大変だったそうだ。働きながら、ゼロから新たな勉強を始めることは簡単なことではないはずだ。スクールに通う前は「データ分析は万能なツール」というイメージを持っていた清水氏だが、勉強を進めるうちにそうではないことを知ったと話す。

スクールでは、前半はプログラミングなどのデータをインプットすることを中心に、後半はアウトプットとしてインテグレーションを学んだそうだ。後半のカリキュラムでは、自分で課題を選定し、データを収集し、分析を行う。清水氏は出身地の群馬県富岡市の観光振興をテーマに分析を行ったそうだ。

教わる側から教える側に

データミックスでは、スクールの卒業生に対し、データサイエンティストとしての転職活動をサポートしている。清水氏もエージェントに登録して転職活動を行ったが、最終的に、データミックスで働くことに決めた。入社後に、清水氏が担当したのはコンテンツや講師陣の管理だ。

コンテンツや講師の質を向上するため、受講生の集中度を可視化し、その結果から、受講生の集中度が高い講師の動画の横展開や、集中度が低いコンテンツは見直しなどの施策につなげようと取り組んだ。

清水氏は、「今の時代、どんな仕事においても、パフォーマンスを上げようと思ったら、データが必須だと思います。経験と勘だけでは、仕事は回りません。データからその背後にあるものを読み解くが大事です」と話す。

分析結果に責任を持つ

清水氏は、データサイエンティストとして大事にしていることが2つあるそうだ。その1つは「データの裏にある構造を詳しく見ること」だ。データを分析する際に仮説を立てるが、「そこには個人のセンスが出てきます」と清水氏。上司の方と議論すると、鋭い洞察が出てきて、脱帽することがあるそうだ。

もう1つは「アウトプットに対して責任を持つこと」だという。データサイエンティストになりたての頃、清水氏は分析結果について、うまく説明ができなかったそうだ。「その時、私はデータ活用にまで至っていませんでした。分析結果の数字自体に意味はありません。データ分析とは、業務を行っていく中で、よりよい解決策を見つけていくことなのです」と、清水氏は言う。

清水氏は、上司の「意思がないデータ分析はない。データを分析して何がしたいかが大事」という言葉に感銘を受け、常にそのことを心がけていると話した。

身近なところから始めよう

最後に、データサイエンティストを目指している人へのアドバイスを尋ねたところ、「身の回りのデータ活用から始めるといいですよ」という答えが返ってきた。

データサイエンティストというと、複雑なモデルを活用して高度な課題を解決するというイメージが先行しがちだが、「初心者が高度なデータ分析を求められることはありません」と、清水氏は言う。つまり、最初から気負う必要はないということだろう。

加えて、「データは使う前が大事です」とも、清水氏は話す。きちんとしたデータがないと、正確なデータ分析が行えない。分析の結果の意味を正しく導くために、コンサルティングなどの業務も行っていくとよいそうだ。

新型コロナウイルスの影響で、オフラインの受講が難しくなってはいるが、だからこそできることもある。データミックスでは、コロナ禍を機にオンラインの講座を設け、授業を続行している。オンラインの授業では、オフラインの授業とは異なるデータの取得が可能になるかもしれない。データサイエンティストの不足が社会問題となっている現在、データの力ですぐれたデータサイエンティストを世に送りだそうという清水氏のミッションはますます重要性を増していくに違いない。