• コロナ禍で担当編集の自宅に導入されたデルの27インチディスプレイ(S2721D)。2,560×1,440ドット解像度のもので、このアスペクト比は16:9となる

デルが企業向パソコンの新製品を発表、ビジネスノートパソコンのLatitudeシリーズ、モバイルワークステーションのPrecisionシリーズなどを刷新、順次発売開始するという。

ノートパソコンの需要は引っ張りだこに近い状態で、各社ともに在庫の確保がたいへんなようだ。今回の新製品で興味深いのが、XPSシリーズなどのコンシューマー向けパソコンでは16:10の画面縦横比を積極的に採用していた同社が、企業向けでは従来通り、16:9を維持する方針であることが明らかになったことだ。

同社は、当面は16:9のままにすることの理由として、パネルの調達コストや企業側の要望などを主なものとして挙げる。パナソニックも、レッツノートのLVシリーズで16:9の画面を採用している。

ずっと16:10を推進してきたパナソニックだが、実際に導入企業にヒアリングしてみると、16:9であることにユーザーは気がつかないという事実が判明したそうだ。ニーズは16:9だということだが、これは与える側の論理だという可能性もある。

ともあれ、企業向けのモバイル製品についても、いよいよインテルの第11世代Core搭載が始まった。各社ともにこれから企業向け製品についてのラインアップ刷新がスタートすることになる。また、インテルが提唱するモダンプラットフォームとしてのEVO対応も嬉しいニュースだ。

在宅勤務で「より大きな画面」がトレンドに

昨2020年はステイホームが求められ、在宅勤務を強いられることが多かったが、そのトレンドの中、企業向けのノートパソコンは、デルの新製品を見るまでもなく、これまでよりも大きな画面のものが提案されることが多くなっているようだ。

具体的には15.6インチ画面を持つノートの復権だ。一時期は、モビリティのために13.3インチが主流になっていたが、それが14に移行しつつある。JEITAの調査結果を見ても14型以下のモバイルノートは2020年に爆発的に伸びた。

デルのラインナップでいえば、それらを基本として抑えつつも、同様に15.6インチにも力を入れている

  • デルが1月28日に発表したビジネス向けノートPC「New Latitude 7000シリーズ」。13.3型、14型のほか、新たに15.6型が加わった

携帯性と作業領域の難しいバランス

少しでも大きな画面があったほうが広いデスクトップを確保できる。ただ、企業が従業員にパソコンを貸与する場合は、一台のノートパソコンにオールマイティを求めてしまう。用途別に複数台というのはコスト的にも難しい。

だからこそオールマイティとして、14型未満のモバイルノートのニーズが高まったわけだ。かつて、ノートパソコン持ち出し禁止の企業が多かった時代、あてがわれているパソコンはデスクトップか15.6型ノートが主流だった。解像度はFHDより低いHD解像度だったかもしれないが、少なくとも大きな画面で作業ができていた。

ZoomやTeamsで一度でもオンライン会議などを経験すればわかるが、14型以下の画面で会議をこなすのはかなりたいへんだ。相手の顔は見なければならないし、プレゼンテーションスライドもしっかりと読む必要がある。だから、各種のオンライン会議ツールは、ほとんどの場合フルスクリーンで使われる。

だが、会議の参加者は、画面を会議という場に占有されてしまい、自分のために目の前のパソコンを使うことが難しくなる。たとえば会議中に気になったことをメモしたりするには、少なくともエディタやワープロアプリが必要だ。

会議で過去のデータを問い合わせられたら、その場でしかるべきフォルダーを開いてファイルを探し、Excelのファイルを開いて確認した上で、それを会議で共有して見せなければならないかもしれない。もしかしたら、過去のメールに関連データが記載されている可能性もある。その場合はOutlookを開いてメールを検索する。

生活のなかの仕事とうまく付き合う

Windowsの機能を駆使すれば、一台のパソコンの小さなモニターだけでもこうしたことは不可能ではないが、それだけのスキルがあるユーザーがどれほどいるかは疑問だ。わかっていてもめんどうくさい。当然、効率も悪い。だからこそ、画面サイズの大型化が今、切実に求められているのだろう。

在宅勤務を経験し、業務の効率が落ちたというユーザー層が少なからずいる。もともと仕事の環境として設計されたわけではない居宅での作業は、家族はもちろん、組織側からのしっかりとしたサポートが得られない限り難しい。今後、世の中がどのように新しい当たり前に向かうのかを想像するのは難しいのだが、多くの住宅ベンダーは住まいの設計そのものの見直しを始めているに違いない。住宅リフォームの市場もきっと同様だ。

効率のいい作業をするにはそれなりの設備、装備が必要だ。それがわかっていても、そのスペースが確保できなかったり、できたとしても仕事が終われば片付けなければならなかったりと、パソコンそのもの以外の要因も効率低下に少なからず影響しているだろう。

ノートパソコンの画面を少しでも大きくすることは、ささいなことかもしれないが、そのひとつの解でもある。