• 最近入手した15.6インチのポータブルモニター(左)。13.3型ノートPC「LIFEBOOK UH」(右)と並べてみる

ステイホームが求められるようになって急速にその市場を拡大したのがポータブルモニターだ。

以前の世界では、会社の外にパソコンを持ち出すことが許される多くのビジネスマンは唯一無二のモバイルノートを会社からあてがわれて、すべての業務をその一台で済ませなければならなかった。学生諸君は自由にパソコンを選べるかもしれないが、家用と外出用に別のパソコンを調達するといったことはサイフの事情が許さないかもしれない。かくして、13~14型あたりのモバイルノートの画面が社会を覗く最大の窓となってしまっている。それはコロナ禍の今も同様だ。

だが、ZoomやTeamsといったオンラインミーティングに参加することが多くなり、会議中には他の資料の参照も必要なら、議事をメモするスペースも必要だ。そして、その会議中にもひっきりなしにメールが届き、スピーディに返信しなければならないかもしれない。

そういう仕事を在宅でこなす。あるいはテレワーク用の限られたスペースでこなすのはたいへんだ。

逆に、広い空間を確保できるユーザーは、大画面モニターなどを自分で手に入れ、在宅の方が効率よく作業ができると実感していることもあるが、そんな恵まれたケースは多くない。

スキルも必要となり、仮にスキルがあったとしても、効率もよくない。大画面のモニターを調達すればいいのはわかっているが、占有スペースの点でそれもままならない場合が少なくないのだ。在宅勤務が恒常的になるだなんて誰が想像しただろうか。

コスパも使い勝手も進化していた

そんな状況下で重宝するのがポータブルモニターだ。

ポータブルモニター、あるいはモバイルモニターは、この1年で選択肢がものすごく増えた。アマゾンなどのECサイトで物色しても数が多すぎてどれを選べばいいのかわからないくらいに種類がある。ただ、スペックを確認しても、その詳細がよくわからないものもある。玉石混淆かもしれないのだが、全部を試すわけにもいかず、目を皿のようにしてスペックを確認して選び、とにかく使ってみて確認するしかない。

今回は、最新製品として、AUZAI社の「ME16」という製品を入手してみた。15.6インチの狭額縁IPSパネルを持つモバイルモニターで、解像度は1,920×1,080ドット(フルHD)、本体4mmと薄く仕上げられ、重量も650gと薄軽を実現している製品だ。これなら持ち運びに苦労することはない。

液晶下部は狭額縁とはいえない幅を持つが、実際に机上で使うときは、このくらい画面が底上げされていた方が疲れが少ない。この記事を書いている時点での実売価格は税込で18,600円だ。

  • 「ME16」とノートPCはケーブル1本でつなげられる。モニターに接続されている2本目のケーブルは電源用で、ME16本体のほか、パソコン側にも電力を供給している

結論を先に書いておくと、この1年くらいの間でのこのカテゴリのモニター製品のコストパフォーマンス、そして使い勝手の驚異的な向上に驚いた。かつて感じていたポータブルモニターへの不満の多くが解消されている。

100均のスタンドでも支えられる軽さ

15.6型というのは気軽に持ち運べるかどうかのしきい値になるサイズだろう。それより大きいとカフェやテレワークスペースで使うのにちょっと抵抗が出てくるかもしれないし、それより小さいと単に2画面になっただけで拡張気分が劣る。

質については申し分ない。ただ、ほんの少し周辺部が暗いと感じるかもしれない。白一色の画像を表示させたときに感じるくらいの微妙なもので一般的なカラー映像を映し出す分には気になることはない。

表面は光沢処理されているため、天井の灯りなどの映り込みはある程度覚悟する必要がある。これは立てかける角度などで回避するしかないが、同梱のカバーでは2段階にしか角度を調整できない。

もっともカバーそのものの重量が450gもあるので、別途細かく角度を調整できるスタンドを調達したほうがいいかもしれない。650g(実機は601gしかなかった)という軽さなら100均で入手できるようなスマホやタブレット用のスタンドでも十分に役立つはずだ。

PC側への電力供給機能が便利

パソコンとの接続はUSB Type-CによるオルタネートモードのDisplayPort、またはHDMIだ。本体の右側側面にMini HDMIをひとつ、Type-C端子が2つ装備されている。また、左側面にはオンスクリーンメニューの操作における戻るボタンを兼用する電源ボタンと、メニューカーソル移動用のダイヤル、そしてイヤフォンジャックがある。この薄軽でステレオスピーカーを内蔵しているのもうれしい。

まず、2つあるType-C端子は両方とも機能は同じで、どちらにパソコンを接続しても映像を入力できる。ただし、Type-C同士を切り替えることはできず、先に入力された方の映像が映し出される。

パソコン本体に映像出力に対応したUSB Type-C端子がひとつしかない場合、それを映像出力に使ってしまうと、パソコンに電力を供給する方法がなくなるかもしれない。PowerDelivery(PD)対応のモバイルノートではけっこうありがちな困りごとだ。

そんなときは、モニタに用意されたもうひとつのType-C端子にPDで電力を供給すると、モニタは自分に必要な電力を差し引いた分をもうひとつのType-C端子、つまり、パソコンとの接続に使っている端子にパススルーする。そしてパソコンはその電力を充電のために使うことができるようになる。

パソコンのType-C端子はPDで大きな電力を供給するようにはなっていないことが多い。このモニターは十分な電力が使えない場合は輝度を落とすようになっているので、モニターに大きな電力を供給し、モニターからパソコンに余った電力を供給する数珠つなぎの方法での接続がもっともスマートだ。自宅にモニターを置きっぱなしの場合は、持ち帰ったノートパソコンをカバンから出して、ケーブルを一本接続するだけで充電と映像出力が同時にかなう。

必要なケーブルはすべて同梱

ただ、ここにちょっとしたバグが潜んでいるようだ。PDパススルーのとき、プラグを装着する順序によって、描画が極端に遅くなる場合がある。

この現象は、パソコンとの接続を最後にすると回避できるようだ。先にモニターに電力を供給し、モニター側にプラグを装着、最後にパソコンにという順番だ。他の製品でも経験している現象で、採用されているチップの不具合かもしれない。バグならバグとして早急に手当してほしいものだ。

Type-Cによる映像出力ができないパソコンでも、HDMI端子が装備されているのなら、それを使えばいい。その場合、電源については別途調達する必要がある。

そのときは、パソコンのUSB Type-A端子からモニターのType-C端子に電力を供給してもいいし、スマホ充電に使っているACアダプターをつないでもいい。HDMIなら、パソコンのみならずビデオレコーダーやゲーム機を楽しむためのパーソナルモニターとしても活用できる。パソコンと両方つないでおいて切り替えるのも簡単だ。

感心するのは、これらの多彩なバリエーションに使うためのケーブルがすべて同梱されていることだ。これなら、どんなパソコンに接続する場合でも、製品が手元に届いてすぐに使い始めることができる。もっともケーブルはもう少し短く、やわらかいものであってもよかったと思う。

表示倍率を調整してより快適にしよう

13.3インチのパソコンに15.6インチのモニターを接続する場合、Windowsなら、パソコンは175%、モニターは150%の表示倍率を設定しておくと、ほぼほぼ同じサイズで文字等を表示できて並べて使ったときの違和感が少なくなる。

パソコンに外部モニターを一台接続するだけで、社会を覗く窓が大きく拡大する。きっと、仕事にも勉強にも遊びにも役立つはずだ。そして、その気になれば、ノートパソコンといっしょにいつでもどこでも持ち運べる。家の中での移動も容易だし、片付けも簡単だ。

とにかく今抱えている問題をすぐに解決するための方法として、ポータブルモニタはコストパフォーマンスの高い選択肢だといえる。AUZAIのME16は現時点での必要十分な機能を備えた製品として出色の出来映えと評価したい。