KDDIとNPO法人離島経済新聞社が、広島県で初となる離島事業者を対象としたブランディング・商品PR講座「しまものラボ」を、広島県大崎上島町で11月30日から開始した。

地方創生の一環、離島地域を元気にする仕組みとしてKDDIが取り組む「しまものプロジェクト」は、2015年12月から7つの離島地域と38の事業者に「しまものラボ」として育成講座を提供しているが、今回は、8つめのエリアとして同島が選ばれた。

離島での感染リスクを防ぐべく、初のオンライン開催に

同島に限った話ではないが、若年層の島離れなどによる人口減少、島の魅力や価値、その活かし方がわからない悩み、売れる商品づくりを学ぶ機会がないなど、さまざまな課題を抱える離島地域だが、そこで事業を営む事業者を応援しようという試みだ。

特に今回は、コロナ禍において、しまものラボとしては初めてのオンラインでの講座提供となる。他の島で売れている商品の秘密や、売れる商品づくりのポイント、同島の強みを活かすポイントなどをテーマに5回の講座が提供される。これまでは、いわゆる講師が離島に出張しての出前講座だったわけだが、この状況下ではそういうわけにはいかないという判断なのだろう。

  • 【2017年・伊豆大島大島町にて】

  • 【2018年・長崎県壱岐市にて】

  • 【2019年・岡山県笠岡市にて】過去の「しまものラボ」発表会。各地で活躍するゆるキャラとの出会いも楽しかったのだが、今回はオンラインでの開催になった

コロナと戦う離島事業者支援が、離島内での感染リスクを防止するために、これまでマンツーマンに近いリアルな講習会スタイルで行われてきた講座を、タブレットなどを使って参加できるオンライン講座として提供することになった。受講料は無料だが、参加事業者は、講義中に講師が試食する商品サンプルを提供しなければならないといったルールもあって興味深い。現地に赴いて、リアルで事業者と対話ができなくても、より親身になって島の実状を知りたいと願う講師の熱意なのだろう。

離島の「離」のハードルをなくす

今回は、参加事業者を絞ってのオンライン会議で、これまで同様の少人数による講習会に近いスタイルだが、オンライン開催であれば、こうした講座を、もっと広い範囲で視聴してもらえるようにすることもできるはずだ。

もちろんライブのみならず、オンデマンド配信とグループウェアなどを使ったコミュニケーションで、遠く離れた離島同士でも、何不自由のない会話ができる。デジタルトランスフォーメーションが、さまざまなシーンで進められているが、その特質をうまく活かしてほしい。考えようによっては、世の中のデジタルトランスフォーメーションが進み、そこにうまく対応できれば、離島の「離」は仮想的に意味を失う。それは悪い話ではないのではないだろうか。

当然、KDDIでもその方向性の模索は始まっていて、将来的にはそうした形態でのラボ開催も視野に入っているという。そのことで、北の離島と南の離島の事業者が、互いの知見を交換したりすることができ、より拡張した効果が得られるようになるかもしれない。

コロナは日本を狭くする

新型コロナは2カ月で2年分のデジタルトランスフォーメーションを推進したといわれている。これからの2カ月もそうだろう。その先の2カ月もだ。同様に、KDDIらがSDGs(持続可能な開発目標)の達成のために支援しようとしている地方や離島といった地域も、その流れから逃れることはできないし、流れに乗れなければ、本当の“離れ島”になってしまう。

ある意味で、コロナは日本を狭くするといってもいい。都市部であってもお取り寄せなどの通信販売に軸足を移し、事業の継続に向けた業務改革に取り組む店舗は増えている。ある意味で、離島の事業者も、大都市の事業者も、同じ土俵で勝負しなければならない時代がやってくる。そのときに、どのような付加価値を離島として提供できるのか。そこは、これからさらに吟味していく必要があるだろう。

しまものラボのオンライン化により、そこで得られるであろう知見は、受講する離島の事業者のみならず、講座を提供する側にも有益なものになるはずだ。