広告会社の日宣が、神田明神とタイアップし、7月7日の七夕祭で愛情診断システム「LOVEチェッカー」を提供するという。

「LOVEチェッカー」は、エンターテイメント向けのコンテンツで、画像認証技術を活用し、カップルの顔の距離を計測する事で愛情度を診断するという。診断結果は画像として診断されたカップル自身のスマホに取り込む事ができる。

  • 「LOVEチェッカー」は、画像認証技術を使い、カップルの顔の近さを計測することで愛情度を診断する

AIが導く「LOVEチェッカー」

「LOVEチェッカー」の提供に先立ち、同社の新製品発表展示会「N/tec2018」が日宣東京本社で開催され、接客のできる日宣オリジナルAIスマートスピーカー「kAIwa」や、画像認証機能とAIキャラクターによる店頭集客サイネージ「キャクキャッチャー」などとともにお披露目された。

前者はGoogleのAPIを使ったデジタルアシスタントで、いわば私家版Google Homeといえるべきもの。あらかじめ想定したシナリオにしたがって、Alexaのスキル的な要素を実現し、接客を行うものだ。ハードウェアとしてはラズベリーパイが使われている。また、後者はタッチスクリーンサイネージで買い物客を呼び込み、商品と購入済みレシートの組み合わせを買い物客にスマホ経由で登録してポイントをゲットしてもらうシナリオを実現する。

「LOVEチェッカー」は、一般的なPCで実現されるウェブアプリで、大型サイネージディスプレイにその映像を映し出す。それにカメラを組み合わせた、ハードウェアとしては簡単なものだ。カップルは所定の位置に立ち、できるだけ顔同士を近づけてチェッカーに写真を撮らせる。すると、AIがその接近度をチェックし、LOVE度を提示するとともに、その写真を保管したサーバーURLのQRコードを表示、カップルはそれをスマホで読み取って写真データをダウンロードする。

  • 二人の顔の近さをAIが診断、LOVE度を導き出す

AIが判断するのは顔同士の距離だ。いわゆる画像認識による。多くのカップルは顔を密接させるので、おそらくはほとんどが85%以上のLOVE度をクリアするにちがいないと同社では予測している。

これをAIと呼んでいいのかという疑問もあるが、エンタテイメントのためのシステムとしてこういうのもありだと同社では考えているそうだ。そのくらい今の世の中はAIがトレンドで、どんなことでもAIといってしまえば説明がつくような状況になってしまっている。

AIはうさんくさい

3日間にわたって開催された展示会イベントでは、日替わりで各界の識者が登場して講演を行った。初日の講師はマーケティング業界で広く知られるLinkedIn日本代表の村上臣氏だった。その話の内容が興味深かった。

村上氏は、スピーチの中でAIのうさんくささを指摘する。AIを強く打ち出したイベントのセミナーでAIが否定されるというのは興味深い。同氏は人生100年時代が確実にやってくるのはわかっていても、自分が生きている間に機械、つまるところは計算機が知能を持つ日はやってこないと断言する。われわれがAIと認識させられているのはAIというよりもディープラーニングのテクノロジーだというのだ。

直感とアイディアは人間のもの

内燃機関としてのエンジンが工業革命を起こし、石油資源を持つものが長者となったのは昔の話。いまは電気とデータを制するものが勝つ。長者番付もハードウェア企業ではなくソフトウェア企業が並ぶようになった。膨大な量のデータを持ち、それを分析することができ、そこから明確な答えを出せるようなマシンラーニングができるものが勝つ。

それは、過去の経験をもとに、それを背景にした直感で判断することを生業としている職業は、もしかしたら優れたディープラーニングに負け、失われてしまう可能性もあるということを意味する。特に計算機が得意なラーニングによるパターンマッチングはその傾向に拍車をかける。

そんな時代に、人間としてのわれわれはいったい何をよりどころにすればいいのだろうか。残念ながら村上氏の話の中には、それに対する明確な答えはなかった。

個人的には”根拠のない直感”が問われる時代になるのではないかと思っている。機械には無責任な推論ができない。機械にとってのデータは根拠そのものであり、必ずそれを元に答えを出すからだ。人間には分析不可能な量のデータをなめて結論を出す。それがディープラーニングだ。人間ならデータの裏付けはなくても、きっとこうなるという想像はできる。そして過去とはまったく縁のない真新しいアイディア。それを生み出せるかどうか。今、人間の知能が問われている。

(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)