今年のCOMPUTEXには驚いた。
まず、会期前日の6月4日、既報通りArmが高性能モバイル向けの最新プロセッサIPスイートとして、新しいマイクロアーキテクチャにより前年比で35%のパフォーマンス向上を実現したというCPU Cortex-A76などを発表した。ゲーム、AR、VR、AI、MLにおける処理性能の向上を実現するという。
これで発表されてからすでに2年近くが経過しているArmベースのWindows PCが、ようやく一般的になるのかなとも思った。発表されたArmのA76は、ムーアの法則を超えた35%ものパフォーマンス向上を果たし、バッテリー駆動も40%延びるなどAlways connected Windows PCの使い勝手に大きなインパクトを与えるというからだ。
びっくりしたのはArmの発表会がこれで終わったことだ。IoTの話などかけらもない。
モバイルPCを”再定義”でもスマホは出てこず
そしてその翌日の6月5日。Qualcommのプレスカンファレンスに出てみると、同社の30年間以上の歴史を振り返りつつ、Always Connected PC(ACPC)として、丸一日つながりっぱなしのPCでモバイルPCの再定義を今再びという大々的なアピールだ。これまたスマートフォンのスの字も出てこない。
同社はこの10年間1000種類のPCをインターネットにつないできた。そのうち100以上のPCはをLTEモデムでつないできたとアピールする。そんな中で、ユーザーデマンドとして、その83%が20時間以上のバッテリライフを望んでいるという。また、ギガLTEを60%が、リッチなPC体験を77%が望んでいるとQualcommでは考えているそうだ。
そして発表されたのがSnapdragon 850だ。ACPCの浸透に大きな貢献をすることになるという。さらにはサムスンもACPC市場に参入を表明、年内にSnapdragon 850搭載のWindows 10 ACPCを投入するという。
Qualcommの発表もテーマはPCだった。それだけだ。
PC一色だったチップベンダと、言及のないMicrosoft
ArmとQualcommの発表会がPC一色なのだ。もちろんCOMPUTEXというイベントの性格もあるのだが、それでも踊り場状態にあるとされるPCの市場を、彼らがこれだけ熱心にコミットしようとしているのはなぜか。スマホもあるし、IoTだって新しい市場を着実に築いている。逆に、Microsoftなどは、あまりWindows PCに言及しなかった。なのになぜという疑問もある。
PCの市場を握るプレイヤーが変わろうとしているのかどうか。もちろんインテルだって黙って見ているわけではないが、最近の動きを見ていると、エッジコンピューティングに対する取り組みにちょっと寂しい印象を感じたりもする。いったい何が舞台裏で起こっているのだろうか。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)