ダイハツ工業「コペン」にトヨタ自動車がモータースポーツ活動で培った知見を注入した新型モデル「コペン GR SPORT」。MT(マニュアルトランスミッション)仕様に試乗した安東弘樹さんも、その楽しい走りに好感触を得た様子だった。今回は、このクルマの開発陣と安東さんの対話の模様をお伝えしたい。

  • 安東弘樹さんと「コペン GR SPORT」

    安東弘樹、「コペン GR SPORT」開発陣と語る!

最初のクルマ選びは重要

安東さん(以下、安):なにはともあれ、MTって楽しいですね!

トヨタの南さん(以下、南):喜んでいただけたようで嬉しいです。

:それに、あのサイズ感と音もいいし、トルクは100Nmに届かないくらいですけど、パワーは十分ですね。これぞクルマというか、MT車はハードルが高いかもしれないんですけど、生まれて初めて買うクルマがこれだったら、絶対にクルマから離れないだろうなと思いました。

:しなやかな方向の味を出すようにしたんですが、感じていただけたようでよかったです。スポーツカーにもいろいろな方向性がありますが、ホンダ「S660」のようにハードな方向ではなく、しなやかに、気持ちよく走るクルマを目指しました。

  • コペン GR SPORT

    ダイハツとトヨタが共同で企画した「コペン GR SPORT」。設計・製造はダイハツが担当し、トヨタは走りの味付けや意匠などで知見を提供した

:欲をいうと、GR SPORTくらいのモデルが、全てのクルマのベースであって欲しいですね。それは、日本のクルマ全てにいえることなんですけど、欧州のメーカーは、特別なグレードじゃなくても、同程度に作り込んでいると感じてしまいます。

最初に楽しいクルマに乗るかどうかで、その人の「クルマ観」って変わると思うんです。その点、コペン GR SPORTは、運転していて思わず笑みがこぼれてくるようなクルマでした。おじさん2人で、屋根を開けて走ってきたんですけどね(笑)。

それと、MT車はやっぱり楽しい。よく、MTはガンガン速く走るのが楽しいと勘違いされるんですけど、スピード域が高くない一般的な道路でも、渋滞していても、MTは楽しいんです。

:先ほど、試乗に出掛けられる様子を見ていたんですけど、MTじゃないクルマのような走り出しといいますか、よほど運転がお好きなんだろうなとお見受けしました。

:恐れ入ります(笑)。同乗者がいる時は、いかに不快にさせないかを考えてシフトを操作しますし、1人で乗る時は、多少はガツンと入れたり。MTって、それができるじゃないですか。CVTだと一切、加減ができないんですよね。

あとは足回りも、「C-HR」のGR SPORT」よりよかったくらいです! 段差を乗り越えた後のおさまりがいいといいますか、むしろ、やわらかさすら感じるくらいで。剛性の高さも分かりますね。

ダイハツの松山さん(以下、松):クルマの剛性に合うバネを選んで、それに適したアブソーバーを付けました。あとは電動パワステも、足とボディの動き方に合わせてチューニングしたんです。

:それは、もう、ありがとうございます!

  • 「コペン GR SPORT」の開発陣

    左からダイハツ 車両性能開発部 西田駿さん、ダイハツ 車両開発本部 松山幸弘さん、トヨタ GAZOO Racing Company 南輝之さん、同・松澤佳代さん

:私が初めて買ったのはホンダの「シティ ターボⅡ」というクルマでした。強化クラッチ付きの中古を48万円、48回ローンで買ったんです。それが原体験なので、とにかく運転が好きになったんです。1~2トンのカタマリを、自分で自在に操ることのカタルシスを、免許を取ってすぐに感じることができました。

コペン GR SPORTのようなクルマを若い人が新車で買うのは難しいかもしれませんが、中古でもいいので、買って欲しいですね。いきなり250万円近くのクルマは、さすがに無理だと思います。私も48万円が限界だったので。それでも私はクルマが欲しいと思ったので、アルバイト漬けになりながら、学費も自分で払いつつ、シティ ターボⅡを買いました。アクセル開度に合わせて加速して、減速するという、本当にリニアなクルマでした。

だから、初めてCVTのクルマに乗った時は、「どうすりゃいいの」「どうやって加減速するの」と感じたんです。加減速が自分の思い通りにならない気持ち悪さは、初めてクルマを運転する人でも、本能で感じ取るのではないでしょうか。だから、運転が嫌いになってしまう。

日本のドライバーの中には、いいモノを知る前に、クルマを嫌いになってしまう人が多いというのが私の持論です。欧州だと、初めてのクルマが「ミニ」のMTの中古だったりすると思うんですけど、こちらではCVTの軽自動車から入ったりしますよね。ミニは根本的に剛性もすごいじゃないですか。それが最初のクルマなのか、CVTの軽が最初なのか。その2台は、峠に走りに行かなくても本能的に分かるくらいに違います。

:多分、私は安東さんと同世代なので、シティ ターボⅡのことも分かります。今って、私の息子なんかも全くクルマに興味がないみたいですし、親が乗っているクルマに、ただ乗っているという感じですね。若い世代のクルマ離れって、やはり感じられますか?

:それはCVTのせいです。それは私、自信があります(笑)。

:じゃあCVT、やめますか?(笑)

  • 安東弘樹さん

    CVTについて持論を展開する安東さん

MT車の楽しさを知らない人は損している?

:コペンというクルマでダイハツは、もともと、クルマを操ることの楽しさを追求してきました。ただ、ダイハツのスタンスとしては、もちろん、運転して楽しいということも大事なんですけど、やはり、実際の日本では、移動手段としてのクルマを作るという仕事もあります。それは両輪で、両方とも欲しいんです。

ただ、CVTのクルマが少し、移動手段の方にシフトし過ぎていたのかなとも思うんです。そこで今回は、運転して楽しいクルマをもう一度、しっかりと作りました。両方を見てもらえれば嬉しいですね。

最初はMTでクルマの楽しさを覚えてもらって、年齢を重ねた後、移動手段としてのCVTへ。そういう世界があるんだろうと思います。

:ただ、CVTが存在するがゆえに、皆さん、最初からそこに行っちゃうんですよね。「MTは運転が難しい」と思われている節もあります。何しろ、MTの免許を取らなくなってきてますからね。だから、実用的なCVTから入るしかない。私たちの時代って、CVTのクルマって滅多になかったんで、とりあえずはMTから入る必要がありました。幸か不幸かといえば、私は幸だと思っています。

今は不景気ですし、親世代が運転しているクルマって、どちらかというと、実用的なものが多いと思うんですよ。そうすると、若い人は免許を取った後、家にあるCVTのクルマを運転することになると思うんですね。

欧州では、CVTってほとんど受け入れられていませんよね? それは、彼らの感性に合わないからではないでしょうか。運転を「労働」と考えるのか、「快楽」と捉えるかの違いが、決定的に出ていると思うんです。CVTを悪者にするつもりはないんですけど。

会社の上司から、こういわれたことがあるんですよ。「運転手っていう職業があるくらいだから、運転なんて労働だろ。それが楽しいなんて、どうかしてるよ」って。それを聞いて私は、「かわいそうだなー」って思いました。私はお酒が飲めないので、そのことを「人生の楽しみの半分は損してる」っていわれることが多いんですけど、「あなたはMT車を運転する楽しさを知らないんだから、5分の4は損してるぞ!」って本気で思います(笑)。

:ふっふっふ(笑)。

:先ほども、頭の中で「楽しー!」っていいながら試乗してきたんですけど、こんな快感を、ほとんどの日本人が味わっていない。絶対にお酒より、MTの運転の方が楽しいと思っているんです。最近は50代の人でも、運転の楽しさを知らなくなっているみたいで、それが悲しい。だからこそ、御社とかGRとかの役割は、ますます大きくなっていくのかなと思うんです。

  • コペン GR SPORT

    爽快なドライブを楽しませてくれた「コペン GR SPORT」

:安東さんと同じ思いを持って、やっていきたいですね。会社的には、スポーツカーは利益にもならないんですけど(笑)。トヨタでも過去に、スポーツカーがなくなっていってしまった経緯がありますが、10年くらい前に「スポーツ車両統括部」として少人数で集まって、社内では誰も振り向かないようなところからスタートしまして、ようやく、ここまできました。一生懸命、がんばってますので。

:頑張ってください!

それにしても、本当に、足回りがいいだけでも、運転の楽しさって大きく変わってきますよね。

:ダイハツは「DNGA」というクルマ作りを打ち出して、「タント」が第1弾だったんです。あのクルマもCVTなんですけど、「運転の楽しさも必要でしょう」というのが、今のダイハツの考え方です。今回のタントも、ステアリングを切った分は、きっちり曲がるというところを作り込みました。

MTが楽しいのは間違いありません。仰るとおりです。でも、初めて父親のクルマを運転する時に、それがCVTであったとしても、ハンドルを切った感じで「運転するのって、楽しいね」と思ってもらいたい。そこから、「もっと面白いクルマはあるかな?」と考えてもらう。そんな入り方をしてもらえると嬉しいですね。楽しいと思えるクルマから入れるかどうかは大事です。ハンドルを切るだけでも楽しいというクルマを、ダイハツとしては作っていかなければ。

  • ダイハツ「タント」

    「DNGA」第1弾となったダイハツ「タント」

:なぜ欧州では最初からCVTが受け入れられないんでしょう。同じ人間なのに、なぜ日本人はCVTを「楽だ」と感じて、欧州の人は「イヤだ」と思うのか。道路状況もあるとは思うんですけど、感性の違いなのかなんなのか、本当に不思議です。向こうは長距離移動が多いからですかね?

:そういうことも、あるのかもしれませんね。街中で、時速20~30キロのストップアンドゴーを繰り返すことが多い日本では、やはり、右足だけで前に進めることが、楽だと思うのかもしれません。日本は400mに1つくらい信号があって、毎回、赤信号で止まる場合もありますし。

:ただ、私はMTが苦痛だという感覚が、どうしても分からないんですよ。楽しいとしか感じないので。本当に、心の底から分からない。意味が分からない。

:気持ちは分かります。クルマを趣味性で捉えているか、移動手段として捉えているかの違いは大きいと思います。私もどちらかというと、趣味性だと思っているので。

:徹夜で働いて、くたくたの時でも、MTの方が疲れないんですよ。なぜなら、思い通りに動くので、ストレスがない。そういう時って、スポーツドライブをしているわけでも、趣味のドライブをしているわけでもないんですけど、徹夜でだるくても、MTの方が楽なんです。

:「思った所に行きたい」という人と、「思い通りにクルマを動かしたい」という人の差も、あるのかなと思います。前者は、結局のところ行ければいいわけですが、後者の場合、思っていた所に行けたとしても、思い通りに動かないと気持ちよくない。そういう意味でも、初めて乗るクルマは大事ですし、例えばハンドリングだけでも、楽しいと思ってもらえることが重要だと今日はつくづく感じました。

:ところで、CVTではなく、ツインクラッチのクルマを作るのって、そんなに大変なんですか? やはり、コストの問題なんですかね?

:確かに、コストが優先されてしまうことはありますね。

:フォルクスワーゲンなんかは、欧州ではリーズナブル寄りのクルマじゃないですか。それでもDSG(同社のデュアルクラッチトランスミッション)を積んでいて、いくら乗っても、びくともしない。

私は日本人として、日本のクルマに乗りたいと思っているんです。ステータスシンボルとしてのクルマには、興味がありません。だけど現状、多少は高価でも、輸入車に乗らざるを得ないというところがあります。

  • コペン GR SPORT

    「コペン GR SPORT」は初めてのクルマに選んでもらえるのか

:この間も大分までクルマで行ってきたんですけど、新幹線って、あまり好きじゃないんです。こういう仕事をしているからではなくて、それは学生時代からなんですけど、知らない人が隣に乗るじゃないですか。

それに、大きな荷物を持って乗ると、それを人の迷惑にならないように荷物棚に上げなきゃならないし。窓側に座っていたらトイレに行く時ですら気を使い、更に、新幹線を降りたら大きな荷物を持って在来線に乗り換えて、例えば私の自宅の場合、そこからバスに乗り、バス停からも歩きます。本当に会社員時代の出張は、辛かったのですが、今は、仕事が地方でもほとんど自分で運転して出張先に向かえますから、私にとっては、まさに天国です。それでも、日本では新幹線の方が楽という人が多いので、その感覚も分からない。

:それは分かります。出張に行くのも、私はクルマで行くのが当たり前だと思っているんですけど、社内では「なんでクルマで行くの?」といわれます。自動車会社なのに(笑)。せっかくの機会なんだから、クルマで行きたいと思うんですけどね。

:そうなんですよね! それと、電車ってドアトゥドアではないので、純粋に面倒くさくないですか? クルマで行く場合、運転という「快楽」まで付いてくるわけですからね。時間の都合で、どうしてもっていう場合は飛行機を使うこともあるんですけど、もし日本にもアウトバーンがあったら、時間の制約も減るでしょうね!

  • 「コペン GR SPORT」を運転する安東弘樹さん

    速度無制限区間のあるドイツの高速道路「アウトバーン」が日本にもあればと夢想する多忙なクルママニア・安東弘樹

:自動運転が普及すると、乗り心地とか足回りといったような部分は、さらに大事なるかもしれませんね。加速の仕方が人間の感性に合うかどうかとか。

:人間の加速のフィーリングを再現できるかは大事ですね。気持ち悪いと乗っていられない。

:ACC(アダプティブクルーズコントロール)は基本的に使わないんですけど、たまに使うと目の前のクルマしか検知していないので、例えば高速道路で渋滞が始まった時など、減速を始める時間が私の感覚だと遅くて、「まだ減速しないの?」という感じで、不安になることがあります。結果、結構な急制動になる時もあるので、まだ不満なレベルですね。まだ5台、10台前のクルマを見て減速するというような制御にはなっていないので。

いつまで自分でクルマを運転することを楽しめるか、今は分からないですけど、自動運転の時代になったら、シェア用の安いクルマと趣味性の高いクルマのどちらかしか残らなくなりそうですね。フェラーリやランボルギーニは、永遠に趣味性の高いクルマを出し続けるはず。

:そういう時代になったときに、GRはいかにして、クルマの楽しみを伝え続けられるのか。ファンの方に喜んでいただけるのか。そのあたりはずっと、模索してます。

ベージュのシートに取り替えたい? 安東さんの野望

:コペン GR SPORTも乗り心地がよかった。コストを掛ければ掛けるほど、クルマの足というのはよくなるんだということを痛感しました。楽しかったです、本当に。乗って帰りたいくらい。

:じゃあ、誓約書を書いて頂いて(笑)。

:考えます(笑)。

話をそらすわけではないのですが、GRはデザインもカッコいいですね。コペンにはいろいろなタイプがありますが、この顔(フロントマスク)はGR SPORTだけですか? 精悍でいいと思います。

  • コペン GR SPORT

    精悍な「コペン GR SPORT」のフロントマスク

:あと、日本メーカーはスポーツグレードのクルマの内装を黒にしがちですが、色は選べるようにしてもらいたいですね。BMWは「M」モデルでもベージュの内装が選べたりしますし、私が乗っている「911 カレラ 4S」(ポルシェ)はワインレッドの外装で、中はベージュにしています。黒は圧迫感があるので、内装は基本的に、明るい色を選ぶようにしているんですよ。これまで、43台のクルマを乗り継ぎましたけど、多分、内装が黒だったのは3台くらいです。

:43台ですか……!

:シートの表皮を変えるのにどのくらいのコストが掛かるのか分からないんですけど、選べれば嬉しいです。

:GRの世界観は、どうしても黒を基調にやっているものですから、ブランドの統一感を考えると、黒ということになってします。やっている本人としては、もう少し選べてもいいような気もするんですけどね。自分が乗っているクルマもタンレザーみたいな色ですし。

:特に、コペンのように表から中がよく見えるクルマだと、内装がベージュなどの明るい色だと、すごくカッコいいと思うんですよ。

:ご要望は、よく分かります。

  • コペン GR SPORT

    「コペン GR SPORT」の内装は黒基調

:あとは、シートリフターが欲しいなと思いますね。シートの高さを調整したいんです。あるドイツメーカーは、身長150cm~190cmの人が、完璧なドライビングポジションを取れなければ、そのクルマにOKを出さないと聞いたことがあるんですが、そのあたりはすごいなーと思います。

GR SPORTではなく、既存のコペンにはベージュのシートがあるみたいですね(内装は黒、ベージュ、赤の3種類)。あれを自分で移設しようと思ったらできるんでしょうか?

:それは、できます。同じ骨格なので。

:あのベージュのシートを一般の人が買おうと思ったら、買えるんですか?

:買えます。逆に、GR SPORTのレカロシートも単独で買えます。

:じゃあ、ベージュのシートを買って、GR SPORTの方に取り付けて……。野望がふくらみますね!

:ただ、そうすると、もともとの黒いシートがもったいないような……。

:それは、オークションサイトで売ります(笑)。

:レカロだから、たぶん売れるでしょうね(笑)。

:それか、下取りに出す時のために、取って置いておいてもいいし。

あとは、日本の経済状況がもっとよくなってくれればいいなと思いますね。コペン GR SPORTが約250万円。たぶん、若い人は買えないだろうなー。私はクルマ以外には一切、お金をかけないので、そういう意味では、クルマに対しては糸目をつけないんですけど。

アナウンサーなのに、スーツは3着くらいしか持ってないですからね。しかも基本的には、量販紳士服店でしかスーツを買いません。ちなみに、そのスーツで先日、「神戸ファッションウィーク」の司会をやってきたんですけど(笑)。BMWのオープンカーに乗って登場して、颯爽と降りなければならなくて、さすがにちょっと気後れしましたね(笑)。

事前に知らされていなかったのですが、女優の桐谷美鈴さんや有名モデルの方、それに、お洒落で有名な元Jリーガーの北澤豪さんたちと一緒にレッドカーペットを歩くことになって、さすがにその時は「やっちまった!」とは思ったんですが、最後は開き直りました(笑)。それくらい無頓着といいますか、お金は全部、クルマに使うんです。

ただ、コペン GR SPORTは、中古になっても価値があるといいますか、GRで作った足だとかコペンというクルマのポテンシャルは、5~6年オチになっても、へたることがなさそうです。だから、最初は中古でもいいので、こういうクルマに乗ってもらいたいですね。MT免許がなければ、コペン GR SPORTのCVTでもいいです。2人乗りではありますけど、「20代の時、そんなに荷物って積む?」とも思いますから。

  • コペン GR SPORT

    「コペン GR SPORT」の価格は「7速スーパーアクティブシフト付CVT+パドルシフト」仕様が238万円、「5速マニュアル」仕様が243万5,000円

:今回の東京モーターショーでは、若い人がたくさん、ダイハツのクルマに触れに来てくださったんですけど、その時も、「運転して楽しいと思えるクルマを出していかなあかんな」と思いました。ただ、このレベルのクルマを「もう少し安く出せんか」といわれると、ちょっとしんどい(笑)。

:いろいろなモーターショーを見ていると、クルマって、運転して楽しいものというよりも、見て「かっけー!」と思うものに変わりつつあるような気がします。

ここ2~3年、日本で流れるクルマのCMって、停まっているものが多いんですよ。走っているCMとどちらが多いか、数えてみたことがあるんです。もちろん、ファミリーカーのCMが多いという側面もあるとは思うんですけど、クルマって、命を預けるものなんだぞと。日本のユーザーは、そこを忘れていないかと。

クルマについて伝えるべきことは、乗り降りのしやすさとかだけではないと思うんです。もちろん、そういうクルマがあってもいいとは思いますし、私も子供が小さい頃、フォルクスワーゲンの「シャラン」(ミニバン)を買って、電動スライドドアがとても便利だということを痛感しました。だけど、「運転って楽しいぞ」ということを、もう1度、味わってみてもらいたいです。ちなみに、シャランは運転しても楽しいクルマでした。

:若い方には、そこに行き着いてもらいたいと思います。その前に、「運転ってしんどい」と思われないように、操縦性安定性、特にハンドルを握って運転して、気持ちがいいかどうかというところには、こだわっていきたい。そのあたりをもう少し見続けていただいて、「ちょっとは頑張ってるなダイハツ、CVTやけど」と思ってもらえれば嬉しいです(笑)。

:すみません(笑)。ありがとうございました!

著者情報:安東弘樹(アンドウ・ヒロキ)

1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。