「Android 5.0」が正式に発表されましたが、それに伴い、Nexus 5および7(2013Wi-Fi版)用の「Android "L" Technical Preview」がアップデートされました。同時にAndroid 5.0対応のSDKも公開されています。また、Android Wareもアップデートがありました。
Nexus 5用のAndroid 5.0プレビューは、ビルド番号がLPX13Dとなっています。Android "L"プレビューではLPV79となっていました。以前解説したように、ビルド番号の先頭はAndroidのバージョン(LはAndroid 5 Lolipop)で次の「P」はブランチを表しますが、「P」はおそらく「プレビュー」の意味だと思われます。3文字目は次の2つの数字と合わせてビルドが行われた日を示します。Xは10月1日を意味しており、10月13日に作られた4番目のビルドということになります。同様に最初のプレビューであるLPV79は、6月19日に"L"のブランチPとして最初に作られた(最後にアルファベットがついていない)ものという意味になります。
このAndroid 5.0テクニカルプレビュー(長いので以下プレビュー2としておきます)とAndroid "L"テクニカルプレビュー(こちらはプレビュー1とします)の違いですが、まず、Smart Lockが実装されたことが挙げられます。Smart Lockは、従来のパターンやPINといったセキュリティロックの機能を、スマートウォッチなどのBluetoothデバイスで一時的にオフにする機能です。この機能が有効になると、登録したBluetoothデバイスと接続できる状態のときには、ロック画面が表示されず、すぐにアンロック状態になります。
登録できるのは、Bluetoothデバイス、NFCタグ、そして自分の顔です。自分の顔を使うのは、フェイスロックと同じですが、プレビュー2では、従来のフェイスロック機能はなくなり、ロック解除は、「スワイプ」、「パターン」、「PIN」、「パスワード」のみになっています。
Smart Lockは、デバイスに上記のロックのどれかをかけたのち、信頼できるデバイスなどを登録します。
NFCタグは、シール状のものが売られているため、これを車載フォルダなどにつけておくと、取り付けによって自動的にロックがかからないようになり、運転中の操作がラクになります。NFCタグの場合には、アンロック時に読み取り可能になっていればいいようです。また、利用中ずっと読み取り可能な状態にしておいても、問題はないようです。
Bluetoothデバイスは、Android Wareを登録したスマートフォンのほか、BluetoothのステレオヘッドホンなどでもSmart Lockが有効になったので、どんなデバイスでもよさそうです。ただし、アンロックする時点でデバイスとは接続状態になっていないとダメです。
また、複数のデバイスを登録することもできるので、たとえば、自宅ならPC、外出中はヘッドホン、車ならハンズフリーといった使い方も可能になるでしょう。
なお、顔を登録することで、同様のことが可能になります。認識は一瞬で行われるため、以前のフェイスロックのように待たされたり、瞬きを強要されることもありません。ただし、注意書きによれば「似た人でもアンロック」する可能性があるとか。どの程度までが許容範囲なのかは不明ですが、ある程度の精度があるなら、実用になる認識時間といえます。
Smart Lockは、デバイス(信頼できる端末)か自分の顔(トラステッドフェイス)を登録してロックを自動解除する |
Smart Lockに登録可能なハードウェアは、BluetoothデバイスまたはNFCタグ |
また、初期設定で行うグーグルアカウントの設定では、他のアンドロイドマシンとNFCでアカウント情報を転送する「タップ&ゴー」が搭載されました。これを使うと、それまで使っていたアカウント設定をそのまま新しいアンドロイド搭載機に設定でき、以前のようにいちいちGメールアドレスやパスワードを打ち込む必要がなくなりました。アプリなどは、以前と同様に初期化が終わった後にアカウント情報を元にダウンロードが行われますが、少なくとも、アカウント名などの入力をしなくて済むために初期設定が簡素化され、短時間で設定操作を完了できるようになっています。
細かい点としては、設定項目が一部組み替えられているようです。たとえば、モバイルデータ通信のオンオフは、従来は、「設定」 ⇒ 「その他」 ⇒ 「モバイルネットワーク」にありましたが、プレビュー2では、ここに「データ通信を有効にする」という設定項目がなくなっています。しかし、「設定」 ⇒ 「データ使用量」のところにあった「モバイルデータ」のオンオフ機能は残っています。もともと、2カ所に同じ設定項目があったわけですが、歴史的には、モバイルネットワークで設定していた項目が、後から追加された「データ使用量」にも置かれていたわけです。このデータ使用量は、モバイルデータの上限の管理などにも使われる場所であり、こちらでオンオフするほうが適切だということなのでしょうか。
Android Wareもアップデート
Android WareもAndroid 5.0のリリース直前のこのタイミングでアップデートされました。今アップデートが行われるのは、1つには、11月始めに製品とともに出荷されるAndroid 5.0との組み合わせによる問題に対応するためでしょう。
Googleのブログなどによると、Android Wareは、Android 5.0 Lolipopがベースになる予定なので、このあとさらにアップデートされる可能性があります。直前にAndroid 5.0に合わせてアップデートされたのは、スマートフォン用のAndroid 5.0と同時にAndroid Wareも5.0になるのではなく、少し時間がかかることが予定されているからではないかと思われます。つまり、まずは、スマートフォン、タブレット用のAndroid 5.0を完成させ、その上で、Android Wareの最終開発にとりかかる予定で、そのリリースはすぐにはできないという想定なのでしょう。
こちらは、それほど大きく変化していませんが、設定に「Bluetooth端末」という項目が増え、Android Ware側から接続先になるスマートフォンを選択できるようになっています。ただ、手元にあったNexus 5(プレビュー2)とNexus 4(Kitkat 4.4.4)で順次接続登録して試してみましたが、片方のBluetoothをオフにして接続できないようにしても、2つめのデバイスにはちゃんと接続してくれませんでした。接続を切り替えるためには、Android Ware側のリセットが必要でした。これだと、あまり実用性はなさそうな感じです。
たとえば、自宅などで充電中のスマートフォンからのBluetooth電波が到達できない場所に、アンドロイドのタブレットなどを置いて、接続先を切り替えて使うという使い方ができないからです。切り替えられるものの、毎回リセットが必要では、かなり面倒です。
スマートウオッチ側から簡単に切り替えができるなら、台所や居間はタブレット、自分の部屋や外出先ではスマートフォンといった使い分けができます。Bluetooth 4.0の電波は、見通し15メートルほどが範囲とされていますが、自宅などでは間に壁があると接続できなくなることがあります。そういう場所で、別のアンドロイドマシンと接続できるなら、それなりの使い方ができるでしょう。
筆者は、手が濡れているなどで、スマートフォンやタブレットを素手で直接操作しにくいことがある台所などでスマートウォッチを使っています。食材や調理法の検索、カップ麺やレトルト食品、ゆで卵などの調理時間を知らせるタイマー、台所でのメールやメッセージのチェックなどです。スマートウォッチは、音声で操作ができ、さらに基本的には防水なので、自宅の水回りなど手が濡れるような場所での使い勝手には、かなり便利なものがあります。音声で操作できたり、濡れた手でも操作できるのは、かなり便利です。このとき、スマートウォッチからの操作で画面が開くタブレットなどがそばにあれば、もっと便利に使えるし、電波が届かなくなることもありません。なので、普段はスマートフォンと組み合わせていても、自宅では、別のタブレットと組み合わせて使いたいのですが……。
というわけで、ちょっと残念なAndroid Wareのアップデートでしたが、ちゃんとした評価はAndroid 5.0ベースの「正式版」のリリースを待つことにしましょう。
本連載は、2014年10月27日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。