編集部注: 本稿は、2012年5月25日にAndorid情報のWeb専門誌「AndroWire」に掲載した記事を再構成したものです。

アメリカに取材にいくと、どうしても車を使わないとダメなことがある。そういうわけで、レンタカーを借りるのだが、こんどは土地勘がぜんぜんないので、どうしてもナビなどの科学の力を借りることになる。ところが、レンタカー屋で貸してくれるアメリカのナビは、日本のものとは似ても似つかないもので、これで同じ「ナビ」とは思えぬ代物。さらに、「音声入力だから簡単だヨー」と言われても、アメリカ人じゃないので、全然認識してくれない。気を抜くととんでもないところに連れて行かれる。

しかも、おおざっぱな表示しかしてくれないので、ロサンゼルスの市内などにある、いきなり3方向分岐を真ん中行って、そのあと左の分岐みたいな複雑なところだとまず、間違いなく入れない。

ところが、最近は、アンドロイドがカーナビになってくれるので、ずいぶんと助かっている。通信さえできれば、ちゃんと目的地まで連れて行ってくれる。

アメリカの道路には、すべて名前がついている。冗談のようだが、ほんとうに名前がついている。しかし、そのために、全米に「マーケット」なる名前の通りがあり、名前が足りないのか、区別のあいまいな「なんとか・ストリート」、「なんとか・ブルーバード」、「なんとか・アベニュー」と道路を表す名前がある。

まず、一般道路では、アメリカのナビは、曲がるところの「道路の名前」を示す。「××ストリートを右」という感じである。日本のように交差点に名前はない。もっとも、日本の多くの交差点には名前がないのだが。よく考えると、交差点に名前を付けると組み合わせになるので膨大な数の「名前」が必要だ。ところが道路に名前をつけておけば、××ストリートと○○アベニューの交差点と表現できるわけだ。

アンドロイドをアメリカでナビとして使うと、このような感じで案内してくれる。ただ、フィート、マイル表示になる。日本人だと感覚がまったくない。「1000フィート先を左です」と言われても、いったいどれぐらい先なのかまったく想像も付かない。また、1/4を単位にした表現も普通だ。「3/4マイル先出口です」なんて言われちゃう。1マイルがよくわからないのに、その3/4っていったい何マイルなんだとさらに混乱する。

だが、看板などもマイル表示なので、へたにメートルで言われるよりはいいかもしれない。

日本でいう高速道路は、もう少し運転がラクだ。途中の分岐に注意すれば、合流と出口は必ず右側になるので、出口が近いと言われたら右側の車線に寄っていけばいいのである。

アンドロイドのナビゲーション機能

アンドロイドのナビゲーションにあまり文句はないが、注意しなければならないことがある。1つは、ナビゲーション時には必ず通信できる必要がある。Googleマップには事前に10マイル程度の範囲をキャッシュしておく機能があるが、これを使っても、ナビゲーションで経路検索を行う場合には通信ができなければならない。途中で一時的に通信が途絶するのはかまわないが、経路の再検索などには、通信機能が必要なようだ。

もう1つは、バッテリ寿命である。ナビゲーション中は、消費電力が多く、普通のスマートフォンだと2~3時間程度でバッテリが無くなってしまう。通信とGPSをフルに動かして、さらに地図表示などをするので、みるみる電池が減っていく。なので、シガーライターソケットから電力を取れるアダプタは必須といっていいだろう。どこだかわからないアメリカの土地で右も左もわからなくはなりたいないものだ。

で、シガーライターアダプタだが、なんでもいいわけではない。アンドロイドの消費電力を考えると、最大で1A程度の出力が可能なものを探す必要がある。安物のアダプタだと数100mA程度しか電流が取れず、充電が消費に追いつかないことがある。スマートフォンなどの場合、充電しながらの動作になるため、場合によっては、大きな電流が流れる。

バッテリが5.2Wh(3.7V、1400mAh)だとすると、1C充電と呼ばれる方法では、1.4Aをバッテリに供給するため、5V出力のシガーライターソケットの出力として1.04A程度は必要になる。なので、なるべく出力に余裕のあるシガーライターアダプタを探しておこう。

出力電力が小さいアダプタを使うと、バッテリの充電が間に合わず途中でバッテリが切れてしまう。できれば、きちんと定格として出力可能な電流やワット数が記載されているものを購入すべきだ。

また、機種により、GPS性能などにばらつきがあり、車のダッシュボードなど見晴らしのいい場所にあるにもかからわず、GPS信号をロストするような機種もある。日本のメーカーのものはまず間違いないようだが、海外メーカーのものはメーカーが同じでも機種によってばらつきがある。ただ、国内メーカーのものには、運転モードと呼ばれる、簡単に使える大きなボタンのメニュー機能が搭載されていない場合があり、ナビゲーション中に音楽を聴くなんてときにちょっと面倒になる。

国内のアンドロイドには搭載されていないことがあるのだが、アンドロイドには「ナビメニュー」(英語ではCar Home)と呼ばれる、ドライブ中にのみ使うメニューアプリがある。ナビ機能や電話、音楽などに簡単にアクセスでき、終了ボタンを押さないとモードが終わらないようになっている

もう1つ必要なのは、なんらかの形で車にスマートフォンなどを取り付ける「マウント」である。助手席にそのまま置くわけにもいかない。それに脇見はかなり危ない。

吸盤でフロントガラスにくっつけることができるアダプタが売られているので、それを使う。吸盤の先にフレキシブルパイプがあって、その先にスマートフォンを挟んで固定するようになったものだ。

ただし、その取り付け場所はどこでもいいというわけではない。

冷やせるところに取り付ける

この間は、アメリカで200マイル(約321キロメートル)ほどの距離を運転した。ナビ上は高速道路を使って3時間というところだが、のんびりといくと4~5時間かかる。

ニューオリンズからペンサコーラまでの約200マイル(320キロぐらい)を往復した

通信には、米国で購入したiPadをVerizonのLTE(または3G)接続し、それをインターネット共有で、Wi-Fi経由でNexus Sとつなげた。

ところが、その途中で、Nexus Sのバッテリが切れてしまったのである。シガーライターソケットから電源を供給しているにもかかわらずである。あとで原因を調べたところ、バッテリ温度が上昇したため、充電が止まったのが原因だった。

スマートフォンなどに内蔵されている多くのリチウムイオン電池は、過熱による事故を防ぐために、内部に温度センサーを持っている。そのために、端子部分が電池のプラスとマイナス以外に1つ、または2つ追加されていて、3端子、4端子になっている。たいていは、電池内部にサーミスターなどの温度センサーがあり、これを本体側でモニターしている。

アンドロイド側は、事故を防ぐために一定以上の温度になると、充電を停止するようになっている。このとき、ナビなど消費電力の大きなプログラムが動作中だと、急速にバッテリがなくなっていく。

過熱は、充電に伴うバッテリ自体の発熱でも起こるが、車で使うと、日光などで、きょう体が過熱されて、さらに温度が上がる。車で使うときには、スマートフォンの温度があまり上がらないようにしないと、バッテリが無くなってしまう可能性が出てくるのである。

それで、対策として、車のエアコンの冷気が吹き出す場所の近くにマウントアダプタを付け、冷気がスマートフォンに当たるようにする。車内なので、日光による照射はさけられず、スマートフォンといえば、黒っぽい色。となると、あとは風を当てて冷やすぐらいしか方法がない。まあ、趣味で、大きなヒートシンクとかつけてもいいが、手軽な方法としては、エアコンの冷気を使うぐらいしか方法はないと思う。

実際、200マイルのドライブ、行きは、途中でバッテリが尽きたが、帰りは冷風のためか、ナビのついでに音楽を流し続けてもバッテリが切れることはなかった。

ただし、収支的に見ると、シガーライターアダプタ経由で充電しても、わずかだが放電分が多く、ゆっくりと減っていく。一日に走行できるのは数時間程度と考えれば、その程度の時間は十分持つ。どうしても、心配なら、予備のバッテリを持っていくべきだろう。筆者は、予備のバッテリを持っていたので、バッテリがゼロになっても、なんとかナビを続けることができた。

ナビを使ったときのバッテリ状態の推移。グラフでGPSが動作している時間帯がナビを使った状態。一回減ったあと上昇し、なだらかに落ちていく

そういうのは、どうしても安心できないというのなら、海外で販売されているAndroidスマートフォンには、純正オプションでカーマウントキットが用意されているものもあるので、これを使うという方法もある。

また、気になる通信量だが、ナビを付けて数時間走り続けてもそれほど大量に通信を行うわけではないようだ。今回の9日間のアメリカ取材で、Google Mapsが行った通信の量は、約90メガバイト。多少の誤差があるにせよ、ギガバイトに達するほどではない。1日ぐらいなら、ドコモなどの海外定額を使ってなんとかしのげる量ではないかと思われる。また、地図に関しては、Wi-Fiのある環境で事前キャッシュしたり、経路検索を行っておくという方法が利用でき、これで多少は通信量を減らせるはずだ。

今回の9日間の米国取材で、Googleマップやナビゲーションで使ったデータの転送量は、90メガバイト程度だった。途中大きく上がっているのは、ホテルで地図の事前キャッシュを行ったから

少なくとも、アンドロイドのナビゲーション機能は、米国内で目的地に連れて行ってくれるだけの十分な機能を持っていて、レンタカー会社で貸してくれるナビゲーションよりもまともである。