では、自動運転車はどのようにして走行経路を判断するのでしょうか? この問いに対する答えには、認識・位置特定・経路計画・車両コマンドの4つの主要なステップが関わっています。

(1)自動運転車の認識技術

コンピュータービジョンは、自動運転車業界でしばしば「パーセプション(認識技術)」と呼ばれます。カメラは、車両がデジタルマップを作成し、環境を認識するために利用する主要なツールだからです。全ての自動運転車にはカメラが搭載されています。

例えば、テスラの車には周囲360度、最大250メートルの範囲を捉える8台のサラウンドカメラが搭載されています。これらのカメラは、車線検出、道路曲率の推定、トラフィックコーンや倒木などの物体検出、信号機の検出および分類などの重要なタスクの鍵を握っています。

  • 8台のカメラを搭載しているテスラの自動運転車

現在使用されているカメラは他の車両や物体との距離やそれらの高さ、速度の推定が苦手です。そこで、自動運転車はセンサーフュージョンを利用して障害物や他の車両を検出します。センサーフュージョンを利用することによって、自動運転車はカメラで捉えた物体の位置や速度を特定できるのです。

(2)自動運転車の位置特定技術

自動運転車は走行経路を判断する前に、位置特定技術とマッピング技術を利用して現在の位置を特定する必要があります。従来型のGPSやトゥルーレンジ・マルチラテレーション技術は平均して最大10メートルの誤差があるので、自動運転車のアルゴリズムに利用するには不正確すぎます。

そこで、自動運転車は独自の位置特定技術とアルゴリズムを用いて、10センチ未満の誤差で現在の位置を推定します。自動運転車の位置特定技術にはカメラ、レーダー、ライダー(LiDAR)センサーなどいくつかの種類があります。

レーダー(radio detection and ranging: 電波による検出と距離の測定)は、電波を照射して半径数メートル以内の物体を検出するシステムです。今日最も高度なレーダー技術は100メートル以上先の数センチメートルの物体を正確に検出できます。死角を見つけて衝突を避けるため、車には長年レーダーが搭載されています。レーダーは一般的に、静止している物体より動いている物体の方が正確に検出できるので、動いている物体の位置や速度を直接推定するために利用できます。また、レーダーは解像度が低いという欠点があるので、まったく逆の長所と短所を持つカメラと組み合わせてコンピュータービジョンに利用するのに適しています。

ライダー(light detection and ranging: 光による検出と距離の測定)は赤外線センサーを利用して物体までの距離を決定します。ライダー(LiDAR)機器は毎分最大150,000パルスの高速レーザーを照射し、物体に反射して戻ってくるまでの時間を測定します。そして、この情報を用いて物体までの距離や物体の大きさを計算します。

(3)自動運転車の経路計画および制御システム

経路計画の段階では、自動運転車は既に自身の位置とその環境について理解しています。次は、認識および位置特定段階で収集したデータを利用して、歩行者や他の車両などがどのように動くかを予測し、最も安全かつ最適なルートでA地点からB地点に行くための軌道を計算します。

(4)車両コマンド

最後のコマンド段階では、自動運転車がハンドルやアクセル、ブレーキなどを制御するためハードウェアにシグナルを送信し、計算された軌道に従います。

自動運転車の未来

自動運転車は遠くない将来、道路を走ることになるかもしれません。しかし、そうなる前に、私たちは社会として、まだ解決されていないいくつかの重要な問題に答えを出す必要があります。 それは、自動運転車が事故を起こしたら、所有者、運転手、保険会社、企業、メーカーのうち誰が責任を負うのかということです。この問題は、最近ニュースでも大きく取り上げられています。

さらにメーカーは、自動運転車のコストやプライバシー、そして特に安全性に関する顧客の懸念に対処する必要があります。自動運転車は100%安全ではないかもしれませんが、 AIの価値は現状と比較して考える必要があります。

最近の研究では、自動運転車は人間が運転するよりも安全だという結果が出ています。これは数学的に理にかなっていますが、私たちは今後、自動運転車の長所と短所、そして路上で自動運転車に不具合が生じた場合に必要なステップなどについて理解を深めていく必要があるでしょう。

著者プロフィール

チャーリー・ワルター


Lionbridge AIプロダクト&グロース担当バイスプレジデント

ベルリン出身。イエール大学卒業。
サンフランシスコでKPCB Product Fellow、Uber(Uber Advanced Technologies Group)のプロダクトマネージャーを経て2017年にGengoへ参画。Gengoは2018年12月にLionbridgeに株式取得されました。