今回も前回に続いて、吊るしものを実際に主翼、あるいは胴体の下面に吊るして固定するとともに、必要に応じて切り離すためのメカニズムの続きである。単純そうに見えて、実はなかなか複雑な仕組みだ。

兵装架に兵装架を吊るす

前回に解説した内容では、ひとつの兵装架に付いている鉤は1組だけだから、そこに取り付けられる吊るしものはひとつだけである。しかし、ステーションの許容重量と比べて吊るしものが軽い場合は、能力の無駄遣いになってしまう。なるべく多くの兵装を携行したいという場合、ひとつのステーションに複数の兵装を吊るせるほうが都合がいい。

そこで、兵装架に兵装架を吊るす手を使う。追加で吊るすほうの兵装架には複数の兵装架が組み込まれていて、ひとつのステーションに複数の兵装を取り付けることができる。2個、3個、4個、6個といった組み合わせがある。

例えば、以下の図に示したBRU-33/Aは、2個の兵装架を左右に並べる形で内蔵している。これをパイロンに組み込まれた兵装架に吊るすことで、ひとつのパイロンに2個の爆弾を吊るせるようになる。上部に「Suspension Lugs」と書かれた輪っかが2個付いているが、これはBRU-33/Aをパイロン内部の兵装架に固定するための部品だ。

  • BRU-33/A兵装架の外見を示した写真。これには横並びで2個の兵装架が組み込まれている 引用:米国海軍マニュアル

    BRU-33/A兵装架の外見を示した写真。これには横並びで2個の兵装架が組み込まれている 引用:米国海軍マニュアル

つまり、一言でいえば「親亀子亀方式」である。余計な重量と空気抵抗につながるので無駄に見えるが、さまざまな兵装を搭載できるように柔軟性を持たせると、こういう話になる。

面白いのは、GBU-39/B SDB(Small Diameter Bomb)という小型の誘導爆弾。これを縦横2列、合計4発搭載するBRU-61/Aという専用兵装架がある。まず、地上でBRU-61/Aに4発のSDBを組み付けておけば、後はその兵装架を翼下兵装パイロンに取り付けるだけ。その場で1発ずつ搭載するよりも迅速に搭載できる。機体が任務から帰ってきたら、カラになったBRU-61/Aを外す。このBRU-61/Aの写真は、前回に掲載している。

ロータリー発射機

先に取り上げたBRU-33/A兵装架は、兵装を下面に並べて吊るす仕組みになっていた。すべてがこういう形態というわけではなく、アメリカの爆撃機はロータリー・ランチャー、つまり回転式の兵装架を爆弾倉の内部に取り付ける方法を使っている。

回転軸の周囲を取り巻くように8個の兵装架を組み込んであり、そのうち真下にある兵装架から投下する仕組み。投下が済んだら兵装架を回転させて、隣(とは限らないかも知れない)の兵装を真下に持ってきて、次はそれを投下する。

スペース効率はあまり良くないが、大型の誘導爆弾や巡航ミサイルをひとつずつ順番に投下、あるいは発射する時に、ロータリー・ランチャーを使用している。

  • B-1Bの機内兵器倉に取り付けたロータリー・ランチャーを、真下から見上げたところ。回転軸の周囲に複数の兵装架が取り付いている様子が分かる 撮影:井上孝司

    B-1Bの機内兵器倉に取り付けたロータリー・ランチャーを、真下から見上げたところ。回転軸の周囲に複数の兵装架が取り付いている様子が分かる

吊るしものを放り出す

水平直線飛行をしている時なら、鉤を外せば、ドロップ・ローンチ式の吊るしものは重力に従って自由落下する。しかし実際にはそんな場面ばかりとは限らず、上昇・旋回・下降しながら投下する場面もある。どんな場面でも確実に切り離されてくれないと困る。

そこで兵装架には、兵装を押し出して、確実に切り離せるようにする仕組みが組み込まれている。兵装架に火工品(要するに火薬)を組み込んでおいて、それを起爆させた時に発生した燃焼ガスでピストンを押す仕組みだ。火工品を用いる方法は実績があって確実だが物騒なので、最近は火工品の代わりに空気圧を使用するものが増えている。

  • 上図では、爆弾架の後方に火工品を組み込んである。それを起爆すると発生する燃焼ガスが、兵装架の中央付近に設けてあるシリンダに送り込まれてピストンを押し出す。それに合わせてフックを回転させて固定を解くと、兵装が放り出される。もちろん、火工品の起爆とフックの作動は連動する 引用:米国海軍マニュアル

    上図では、爆弾架の後方に火工品を組み込んである。それを起爆すると発生する燃焼ガスが、兵装架の中央付近に設けてあるシリンダに送り込まれてピストンを押し出す。それに合わせてフックを回転させて固定を解くと、兵装が放り出される。もちろん、火工品の起爆とフックの作動は連動する 引用:米国海軍マニュアル

ミサイル発射機をぶら下げる

爆弾は落下するだけだから、輪っかと鉤で固定すれば済む。しかし、ミサイルの中には爆弾と同様に落下させるものだけでなく、レールを使って滑り出させるものもある。前者を「ドロップ・ローンチ」、後者を「レール・ローンチ」という。

レール・ローンチの場合、ミサイル固定用のレールを組み込んだ専用発射機を用意する。その発射機には固定用の輪っかが付いており、それをパイロン内部に組み込まれた兵装架に固定する。これで爆弾の代わりに、レール発射式のミサイルを搭載できる。もちろん、発射機は持ち帰って再利用する。

  • JAS39Cグリペンの翼下兵装パイロンに、Rb99(AIM-120B AMRAAM)空対空ミサイルのレール式発射機を取り付けた状態。ミサイルは、そのレール式発射機に取り付ける。ミサイル中央のフィンより少し後に、レールに取り付く四角い張り出しがあるのが見えるだろうか 撮影:井上孝司

    JAS39Cグリペンの翼下兵装パイロンに、Rb99(AIM-120B AMRAAM)空対空ミサイルのレール式発射機を取り付けた状態。ミサイルは、そのレール式発射機に取り付ける。ミサイル中央のフィンより少し後に、レールに取り付く四角い張り出しがあるのが見えるだろうか

ただし、パイロンではなく機体に直接取り付けるタイプのミサイル発射レールもある。戦闘機の翼端に、AIM-9サイドワインダーみたいな格闘戦用の空対空ミサイルを搭載するための専用発射機を取り付けることがあるが、この発射機はパイロンや兵装架を介さず、機体に直接取り付けるタイプだ。

著者プロフィール

井上孝司


鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。