こんにちは。久しぶりの更新記事です。今回から月1回の更新と、ちょっとゆっくりのペースにさせていただいております。

ほとんどの地域でようやく桜が開花し、気持ちのよい季節になってきましたね。私はよく早朝にランニングをしているのですが、この時期は少しでも多くの桜を愛でるべく、あちこち遠征して楽しんでいます。

ということで、前回に引き続きトップダウン設計についてのお話ですが、より具体的なことをお話していきます。

製品を新たに開発する場合、もしくは既存製品を改良する場合でも、企業によって差はあると思いますが一般的にはまず、どういう仕様を持った製品をどの程度のコストで開発して販売するかを決めると思います。そして、仕様や予算がある程度見えてきたら実際の形状検討などの設計作業に入ります。

その際、いきなり形を検討し始めるのではなく、まずは仕様に従って製品全体のイメージを考え、コンシューマ製品であればデザインも考慮し、必要なユニットを決めて配置を考えたりなどという作業に進みます。

CADに限らずどのようなツールを使用するにしても、設計全体のレイアウト検討をするための図を作ります。そして、ある程度の形が見えてきたらユニットごとに分けて少しずつ詳細検討に入っていきます。このような流れで進める設計手法のことをトップダウン設計と呼びます。

ここまでは前回お話したことです。この作業の中に、パラメトリックの手法を利用した3Dによるレイアウト設計を取り込むことで、効率的な設計を進めることができ、製品の市場投入期間短縮や品質の向上に役立てることができるようになります。つまり、そのレイアウト検討のための図も3Dモデルで表現をします。

基本的なイメージとしてはこのような感じです。厳密には、使用する3D CADやアセンブリの規模によってやり方が異なりますが、基本的な考え方は同じです。

アセンブリには、そのアセンブリを構成するサブアセンブリやパーツで構成されますが、トップアセンブリにまず、レイアウトモデルを配置します。トップアセンブリとレイアウトモデル、各々の原点を同じ位置に揃えます。

その後、レイアウトモデルを参照して各パーツを組み立てていきます。レイアウトモデルに示しておくべき項目は、各パーツの配置の基準位置や守るべき大きさなどです。なお、アセンブリの規模によっては、レイアウトモデルをパーツではなくアセンブリで表現する方法もあります。

■作業を進める上での全体的なポイントとしては、以下になります。

相互連携機能: 設計変更が関連する箇所に自動的に反映される
フィーチャーベース: 設計変更を容易にできる
●図面作成の前倒し: 3Dモデルと2D図面は連携しているので、3D設計が完了していなくても図面作成を開始できる

■重要となる基準をレイアウトモデル内で表現し、機能を具体化します。
1. 設計の条件を可視化する: パラメトリック手法を使えるCADは、パラメータを利用して関係式を設定することができます。機能として必ず維持したい条件をパラメータと関係式で表現します。

例: 幅寸法のパラメータ名 “width”。高さはその半分の値にしたいので、”width / 2” と表現する。

  1. 基準を見える化する: 仮想平面(CADによって呼び方が違います)を利用して基準位置を決めておく。すべての設計はこの基準から進めていくことになる。

例: 領域内において、各パーツやユニットの配置基準を決めるために、仮想平面で仕切りを作っておく。各パーツやユニットはこれに対してはみ出さないように設計していく。

上から見ると:

斜めから見ると:

  1. 機能を見える化する: 機能は非ソリッドフィーチャー(サーフェス、仮想平面や軸など)を使用して表現します。非ソリッドフィーチャーは重量を持たないので、全体の重心や重量の計算に影響を及ぼしません。

例: ユニットの平面レイアウトだけではなく、高さも定義したい場合はサーフェスを利用する。

  1. 重要な形状からモデリングする: 一部のユニットだけを先行して詳細に作り込むとかいうことはしない。全体的にバランス良く進めていくことで、設計変更にも対応しやすくなる。

例: この赤いパーツのように、特定のものだけを先に作り込んでいくということは極力避ける。

以上、ご紹介した内容は注意する点のほんの一部です。全体的に言えることは、設計の初期段階では特定の部位に偏ることなく全体をバランス良く眺め回しながら進めることが大切です。早い段階で不具合を見つければ修正は簡単ですが、詳細に作り込んだ後に不具合を発見した場合、他のユニットやパーツとの関連が影響して修正が大変になる可能性が高いからです。

設計を進めるにあたって設計変更は避けて通れないものですが、仕様どおりの設計をより早く進めるためには、設計変更への対応にかかる時間をいかに減らすかが重要になります。

このような考え方をベースに、ご自身が使用されているCADの場合はどのような使い方をしたらいいのか、考えてみていただければよいと思います。

では今回は以上です。また次回をお楽しみに!

著者紹介

草野多恵
CADテクニカルアドバイザー。宇宙航空関連メーカーにて宇宙観測ロケット設計および打ち上げまでのプロセス管理業務に従事し、設計から生産技術および製造、そして検査から納品までのプロセスを習得。その後、3D CAD業界に転身し、製造業での経験をもとに、ベンダーの立場からCADの普及活動を行う。現在は独立し、ユーザーの目線に立ち、効果的なCAD導入を支援している。 著書に「今すぐ使いたい人のためのAutoCAD LT 操作のきほん」(株式会社ボーンデジタル刊)がある。