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( Life )

タイミーCTO 山口徹が語る「解ける問題、解けない問題」との向き合い方

JAN. 21, 2026 08:30
Text : 蔵元二郎
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日本のビジネスを牽引する著名なCxO(Chief x Officer)の皆さんが今、何を考え日々ビジネスに励んでいるのかを深掘りするべくスタートした本連載。聞き手は私、「Japan CxO Award」の主催を務め、CxO人材採用事業に日々携わるBNGパートナーズの代表取締役・蔵元二郎が務めます。

今回は、タイミーの執行役員CTO(Chief Technology Officer)を務める、山口徹さんにお越しいただきました。

2018年のローンチ以来、働くシーンに革新的な変化を与え、成長を続ける「タイミー」。開発組織のトップとして、戦略策定や組織マネジメントを率いる山口さんに、課題との向き合い方や、学びの技術、CTOの必須スキルなど、多岐にわたるテーマをうかがいました。

根源を考えなければ、なんの意味もない

――まず、どういう経緯でタイミーを選ばれたのでしょうか。

8カ月ほど転職活動をする中で、経営者との相性や、事業のポテンシャルを総合的に考えて決めました。2023年5月からタイミーに転職したのですが、ちょうどそのあたりは「SaaSバブルが弾けた」と言われていた時期。僕自身はずっとBtoB SaaSをやっていたので、そのノウハウを使わないのはもったいないと探していたのですが、なかなかしっくりこない。自分自身必死に勉強して戦ってきた分野で、話を聞いているとうっすら経営状況も見えてくる……すると、SaaSでは行きたいところがなかった。そこから、40社ほどを候補に入れ、BtoB事業、SaaSが主力ではない、顧客の多様性がある、事業展開の考えやすさや複数事業を展開していることなど一定の条件を設定して検討すると、2社しか残らず、そのうちの1社がタイミーでした。

――タイミーのどういったところに、事業ポテンシャルを感じたのでしょうか?

まず、タイミーはツー・サイド・マーケットプレイス。ワーカーと事業者という、2種類のユーザーグループを結びつけ、さらにその両者に対してお互いが隠蔽されていないところが面白いなと。通常、いわゆるデマンドとサプライで言うと、サプライ側が隠蔽されていることが多いのですが、成功するツー・サイド・マーケットプレイスは、両方とも表に出ていることが多いのです。また、パーソナライズされていて、各自に合った取引ができる。そういった基盤が盤石で、僕が入った段階ですでに「これはいける」という段階にありました。

さらに、HRテックは正社員向けのものが多いですが、タイミーは非正規雇用や副業など、それ以外の部分を担っていて、ワーカーのCRMとしての価値も貴重です。僕がジョインした当時で約500万人、今では1190万人ほどの登録がありますが、その会員基盤自体が素晴らしく、ビジネスとして延長していくイメージが湧きやすかった。すべてがブルーオーシャンになりうるところが、非常に魅力的なマーケットプレイスでした。

――実際にジョインされて、何かしら想定外があったと思いますが、特に印象的なところを挙げるならどのようなことでしょうか。

同じ事象がポジティブにもネガティブにも捉えられることですが、想像以上に少ない人数でサービスが作られていました。それは洗練されているとも言えるし、新しいチャレンジができていないとも言える。拡大してまでやりたいことがないのか、拡大できない理由があるのか……。タイミーの場合は、組織化がうまくできていないなどの理由で、後者でした。

――そこから山口さんが開発組織や意思決定プロセスを整えたとのこと。「再現性の高い仕事」をする上で何より必要なことはどのようなことだと思われますか。

たとえば以前「失敗したな」と思う経験があるとします。それを経て、自分がある程度その課題について知っていて、体系的に解ける問題であれば、次の場所でも同じアプローチで再現性を持って解決できるだろう、ということを志向しています。戦略の立て方、その戦術化、戦術を成功に導くための最適な組織設計と運用。その3つに集約されると思いますが、これらは再現性をもってやりましょう、という考え方ですね。

――再現性の高い仕組みを作る上で、ポリシーとしていることはありますか?

まず、根源的なところに当たった上で、具体のことを考えることが一番大事だなと思っています。たとえば、プロダクト戦略の話で言うと、プライオリティのつけかた、ロードマップに何を書いて、誰に公開するか…もちろん各論としては意味がありますが、それだけではなんの意味もない。もっと根源の、「なんのために作り、何と接続して、目標をどこに置くとバランスのいい投資になるのか」。こういったことを考えた上で、各論にいかなければいけません。

――山口さんが戦略を作るとき、ベースにしているフレームワークはどのようなものでしょうか。

僕がプロダクト戦略を作るときにベースにしているのは、ドラッカーです。あとは、リチャード・P・ルメルトの名著『良い戦略、悪い戦略』の「戦略のカーネル(核)」。他にもファイブフォース分析やSWOT分析など、典型的なビジネスフレームワークを適用し、そこに、プロダクト戦略上必要な知識やエッセンスを混ぜ込んでいます。これを再現性を持って型化し、前年の情報をもとにバージョンアップしながら転用しています。

仕事を支える「学び」の技術

――CTOの仕事を、もし定義づけるなら?

全体を俯瞰して見て、何が戦略・戦術とのギャップなのかを冷静に把握し、ギャップを埋める指針と施策を示すことでしょうか。もちろん、これを組織に浸透させて実行させ、モニタリングして計測し改善するなど、いろいろとありますが、突き詰めるとそこに尽きます。ただ、求められる役割は、フェーズによってまったく異なります。極端な話、アーリーステージであれば、社内で一番できるフルスタックエンジニアでも構わないと思っていますが、すでにIPO後のCTOであれば、そういった能力が問われますね。

もちろんCxOとして、コーポレートガバナンスや企業買収、アライアンスなど、経営についてもハイレベルに知らないといけないこともあるので、そのあたりの知識や知見も必要です。僕自身は2009年から2020年までDeNAに長いこといたので、メガベンチャーの経営がどうあるべきかをなんとなく知り、そこから前職とタイミーの直近3社で学んでいきました。

――山口さんの周囲にも、ジュニアCTOの方がたくさんいらっしゃるんじゃないかと思いますが、「もっとこのあたりを勉強するといいんじゃないか」と思うことはありますか?

3つあります。1点目は、エンジニアリング組織を俯瞰的に見る方法。2点目は、プロダクトと組織はニコイチなので、一定「プロダクトマネジメントとは何か」を理解すること。3点目は先ほどのCxOとしての必須スキルですね。

――逆に、私も自社のCTOのコミュニケーションで一部ついていけないときもあり、申し訳ない気持ちになることがあるのですが、私どものような、「技術畑ではないCxO」が知っておくべきことを挙げるなら、何をどう学んでいくのが良いと思いますか?

簡単に言うと「全員、AIを使いこなすべき」ですね。ハードスキルとソフトスキル、2つの観点があると思いますが、まずソフトスキル的な観点でいうと、まず学習のやり方そのものをブラッシュアップすることが重要です。生成AIの普及により、学習がより効率的になり、僕自身も学習スピードがグッと上がりました。これまでなら「情報量が多すぎて、見ることが億劫になっていたような知識」をベースにした戦略立案ができるようになってきています。

――たとえば、どのようなものでしょうか?

最近参照しているフレームのもとが、300ページくらいあるPDFです。これも自力では100ページにも満たない程度しか読めていないのですが、AIの補助を受けると、具体と抽象を行き来しながら対話的にリーディングができるので、圧倒的に早く勉強ができるようになりました。トッププレイヤーを見ていても、アクティブリコールや分散学習など、科学的根拠に基づいた勉強法を意図的に取り入れています。その学習方法のソフトスキルさえ身についていれば、未知のハードスキルを初めて学習するときも、適切な質問さえできれば、AIがそれなりに正確な回答を返してくれます。

たとえば「インターネットビジネスをする上で、CEOが知っておくべきハードスキルを教えてください」といったことを上手に聞けば、妥当な答えが返ってくるはずです。もちろんそれが本当に正しい答えなのかを見極めるスキルも必要になりますね。だからこそ、なんでもかんでも幅広くインプットするより、ある程度自分が持っているハードスキルと密接に関連づけて、どんどん領域を広げていく学習スタイルが今後大事になるかと思っています。

――書籍をたくさん読んでいらっしゃいますよね。

でも、実は本を読むのは嫌いなんです(笑)。ただ、ビジネス本の鉄板とも言える名著は、自己投資だと思って片っ端から買っています。気が向いたときにかいつまんで読んで満足して、「この知識だけじゃまずい」と必要に駆られたらそのとき初めて深掘りし、実践と掛け合わせる読み方ですが……。あとは、YouTubeの書籍解説動画でまず俯瞰でざっくり内容を捉えてから読むのも自分に向いていると思って取り入れています。

――横のネットワークでの学習は取り入れていらっしゃいますか?

そこは完全にX(旧Twitter)ですね。Xはレコメンデーションが賢いので、興味のある人をフォローしたり、いいねを押したり、ブックマークに入れたりなんらかの行動をすると、それ自体が学習されます。すると、フォローしている人以外の投稿がおすすめにあがってきて、「この人いいこと書いてるな」と思ったらフォローする。興味のネットワークとして機能しています。以前は情報収集といえば、ブログのRSSを登録してRSSリーダーで見ていましたが、今はXがあれば事足りますね。

ただ、周囲の興味関心をマージできると、もっと自分の興味関心のリングを広げられそうなので、それこそ社内でそういったパイプラインを作ろうかとは思っているところです。

――何社かの技術顧問もされていて、どこにそんな時間が……。

技術顧問とまとめていますが、プロダクトとエンジニアリングをメインに、プロダクト顧問をすることもあれば、かっこつけすぎかもしれませんが社長を相手に経営顧問をすることもあります。でも、それぞれに1か月につき2〜4時間で5社ほどなので、仮に平均3時間ずつだとしても、月15時間ほどですよ。

――ちなみにその際「何をして、何をしないか」は、どう線引きされていますか?

僕はあくまでアドバイザーなので、本来自分たちでやるべき作業的なところは巻き取らない。たまに巻き取ってしまうこともありますが、どちらかといえばハブとなる人にきちんとノウハウを伝え、その人が組織に展開していく流れこそ、僕がやるべきことです。僕が巻き取ってしまうことで、ハブ役の人の成長につながらないことは、本意ではないので、線を引くようにはしています。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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