ロゴよりストーリー。お金持ちがハイブランドで学ぶもの
そんな武藤氏自身は、「僕はそこまで駐車場代にはこだわりませんけどね。ただそのような情報をもとに、話も盛り上がるので調べることはしています」と笑う。
だが、フェラーリのオーナー仲間の徹底した姿勢から学ぶべき本質は、その「情報感度の高さ」にある。彼らが削るのは、機能だけの“無機質なコスト”だ。逆に言えば、人と情報が返ってくる出費には驚くほど気前がよい。
彼らが高級品(ブランド品)を選ぶ理由は、単なる見栄や所有欲ではない。その背景にあるストーリーや希少性を理解し、コミュニティ内での「会話」を楽しむためだという。
「フェラーリ以外にも、リシャールやエルメスを買うのは、一種の『コミュニケーションツール』を手に入れる感覚に近いんです。具体例を挙げると、エルメスのバーキンには『無秩序(アン・デゾルドル)』という、デザインが非対称になっているモデルがあります。こうしたマニアックな知識があるだけで、お金持ちの方々との会話の深度が一気に変わります。『あのモデルをご存知なんですか?』と話が弾めば、そこからまた新しいご縁や、表には出ない話につながっていくわけです」(武藤氏)
それは単なる浪費ではなく、一部の富裕層の方々との人間関係を円滑にするための「教養」であり、「引き出し」に近いものなのだろう。
「ハイブランドは、ある種の『共通言語』を学ぶための教科書のようなものです。駐車場代のような無機質なコストは削りますが、こうした人とのつながりや知見をもたらしてくれる出費には、数百万、数千万単位でお金を投じます。もちろん富裕層の方々が全員そうだというわけではありませんが、そのような方々も一定数いるということです。富裕層の中にも、ハイブランドが好きな人もいれば嫌いな人もいる。私はハイブランドというものを通じて、その世界観やコミュニティに価値を感じたからこそ、お金を使うようになりました」(武藤氏)
お金持ちの財布が開く“たった一つの基準”
また、SNSで現金の札束や派手なロゴ入りアイテムを見せびらかす“見せ方”を重視する層とは対照的に、長く成功している富裕層ほど、ロゴが目立たない上質なものを好み、クローズドな場所で静かに情報を交換するのだとか。
彼らが求めているのは一瞬だけ満たされる承認欲求ではなく、長く成功し続けること、そして知的好奇心を満たす喜びだ。
最後に、武藤氏は彼らの根底にある考え方をこう締めくくった。
「結局、突き抜けた人たちの行動原理は『自分軸』があるかどうかです。他人がどう思うかではなく、自分が価値を感じるかどうかだと思います。その基準が明確だから、傍から見れば『フェラーリに乗ってるのに駐車場代をケチる変な人』に見えるかもしれません。私の場合は自分を成長させてくれる環境にはどんどん投資をすると決めています。それがたまたまフェラーリだっただけです。フェラーリのコミュニティに入ったからこそ、視座が高くなり、より成長しようと思えたのは事実です。正直高級車自体に興味があったかと言われたら、ありませんでした。しかしそのコミュニティに価値があると感じたからこそ、高級車が好きになったのだと思います。富裕層のお金の使い方は一つではありません。あくまで一つの価値観、一つの選択肢だと思っていただければと思います」(武藤氏)
「駐車場代をケチる」という些細な行動──その裏側には、価値なきものには一銭も払わず、価値あるものには大金を張るという、富裕層ならではの透徹したイズムが隠されていた。
彼らの財布の紐は、ただ固いのではない。自分自身の人生をコントロールするために、その紐を握る握力が、多くの人より遥かに強いだけなのだ。
