借り手を置き去りにした賃料の上昇
実需層が置き去りにされた価格帯でも売買が成立するのは、そこに投機的なマネーが流れ込んでいるからだ。竣工前に購入契約を結び、引き渡し直後に転売して数千万円の利益を得る「プレビルド投資」のような動きも、都心部では散見される。
その「受け皿」として存在感を増しているのが海外資金だ。港区の「三田ガーデンヒルズ」では、購入者の相当数を海外勢が占めているとも噂される。
彼らの潤沢な資金が、23区の中古マンション平均価格を1億円の大台(2025年10月時点)へと押し上げ、前年同月比+25.7%という新築以上の高騰を招いているのだ。しかし、実需とかけ離れたマネーゲームは、賃貸市場において無視できない歪みを生じさせつつあるとか。
「海外投資家は日本の新築抽選には参加しづらいため、割高でもすぐに手に入る、中古市場や転売物件の有力な購買層となっています。ただ、問題はその後です。彼ら海外投資家を含めて、実需(自ら住む目的)ではなく投資目的で分譲マンションを購入した層は、高値で買った分、利回りを確保しようと強気の家賃設定を行いますが、いまの日本の借り手にはそれが払えない。データを見ると状況ははっきりします。掲載家賃は急上昇している一方で、実際に問い合わせが入る『借り手が払える家賃』との差が、どんどん広がっているのです。貸し手は高く貸したい。しかし借り手には払える上限がある...。このギャップが拡大していること自体が、市場が変調し始めたサインかもしれません」(小原氏)
相続で余るはずなのに下がらない…都心マネーの力
では、2026年の市場はどう動くのか。
日本の社会構造だけを見れば、先行きは決して明るくない。団塊の世代が後期高齢者となり、「大相続時代」が本格化すれば、郊外を中心に物件放出が増える。論理的に考えれば調整局面に入るのが自然だが、小原氏は「暴落は起きない」と話す。
「たしかに長期的なトレンドとして、需給が緩み価格が下がるのは間違いありません。私の実家がある千葉県野田市のような郊外では、もはや売りに出しても二束三文です。ただ、2026年にすぐさま暴落が起きるかと言えば、そうは思いません。構造的な下落圧力よりも、現在は都心部に集中するマネーの勢いのほうが圧倒的に勝っているからです」(小原氏)
暴落は回避されるものの、2025年のような「年2割上昇」という高騰もまた、終わりを迎えつつある。そして、すでに調整が水面下で始まっているのだそう。
「現場の肌感覚として、『思ったより売れないから少し下げよう』という動きが出てきています。結論として、2026年は『上昇基調は続くものの、その幅は縮小し、調整局面に入る』というのが私の予測です。足元のトレンドが継続すると見て、2026年も2割上がるという前提で買うのは極めて危険です。高値で仕入れて売れずに損切りする、そんなケースがプロのあいだでも増えてくる年になるでしょう」(小原氏)
「億ション」という言葉や数字の魔法に踊らされてはならない。2026年は、高騰から覚め、自身のライフプランに基づいた冷静な選球眼が試される一年となりそうだ。
