「ルンバと暮らすと自分が変わる」体験をどう増やすか
―― ルンバは「ユーザーの行動も変えてくれる」と感じています。毎日決まった時間に動く前提で暮らすようになることで、自然と片付けの習慣まで生まれる。こうした“共存の価値”は、どう広げていきたいですか。
山田氏:おっしゃる通りで、ロボット掃除機は“どう使いこなすか”で価値が大きく変わります。洗濯機や食洗機に“使い方”や“付き合い方”があるように、ロボット掃除機にも本来は最適な共存の方法があります。
山田氏:私たちはこれまで「どうすれば快適に長く使ってもらえるか」という情報発信が十分ではありませんでした。ロボット掃除機の価値は“頻繁に動かすこと”で初めて最大化されるにもかかわらず、前提となる暮らし方や工夫を十分に伝えきれていなかったと思います。
カテゴリーをもう一段成長させるためにも、「共存の仕方」「暮らしの中での活かし方」をていねいに伝えていくことは、これからの大きなテーマだと考えています。
―― 近年、ルンバはライフスタイル寄りの訴求が増え、テクノロジー企業としての存在感がやや薄れたようにも感じていました。とはいえ、最新機種を使ってみると、技術の進化はむしろ加速していると感じます。ブランドのコアを改めて“テクノロジー”へ戻す方針について、どう考えていますか。
山田氏:私たちはラグジュアリーブランドではなく“メーカー”です。メーカーの本分は、やはり「良いモノをつくる」ことに尽きます。これまでは、既存モデルの延長線上で改善ポイントを積み重ねる発想が強く、開発現場にもさまざまな前提や制約がありました。その結果として、どこか“自分たちの事情”が中心になっていた面は否めません。
しかし、グローバルの経営体制が一新され、新しいものづくりの仕組みに切り替わりました。2025年4月に発売した新製品は、「もう一度、しっかりとお客様に向いたイノベーションを起こす」という強い意思のもとで開発されたものです。
山田氏:メーカーはイノベーションがなければ成長できません。だからこそ今は、「お客様のインサイト」や「本当に求められる価値」を中心に据え直している最中です。現在高く評価いただいている最上位機種『Roomba Max 705 Combo ロボット + AutoWash 充電ステーション』は、その象徴的な成果だと思います。
自分たちの延長線ではなく、“お客様が明確に良いと思えるものを提供する”。メーカーとして、ようやくその本来の姿に戻りつつあり、ここからさらに加速させていきたいと考えています。
「掃除機5台に1台をルンバに」―― 野心的な目標はどう決まったか
―― 一方、2025年4月に米国本社のCEO、ゲイリー・コーエン氏が来日したとき、グローバルの挽野さんが壇上で「日本の掃除機の5台に1台をルンバにする」と宣言されました。かなり攻めた数字に聞こえましたが、あの目標はどのように決まったのでしょうか。
挽野氏:もともと2018年に「Roomba e5」を発売した際、「世帯普及率10%」という目標を立て、それを実際に達成できたのが2023年です。そこから「次のゴールをどう設定するか?」という議論を、社内でずっと続けていました。それは本社から「いつまでにやれ」という期限付きの指示があったわけではありません。
だからこそ、それなりに野心的なゴールを自分たちで設定しようと考えました。一筋縄ではいかないけれど、狙うべき数字としてどこがふさわしいのか。議論を重ねた結果、「5台に1台=20%」という数字に落ち着きました。
山田氏:むしろ「もう少し野心的な数字にしようか」という話も出ていたくらいです(笑)。
挽野氏:最終的には、「ルンバの存在感を市場でしっかり示していく」という意味で、「20%くらいはやらないとダメだろう」という結論になり、「5台に1台」という目標を掲げた――、というのが実情です。
―― 世帯普及率10%を達成したのは大きな成果ですが、「5台に1台=20%」となると、インパクトは桁違いです。この目標を、山田さんはどの程度現実的だと見ていますか。
山田氏:「掃除機5台に1台=20%」という目標は、決して非現実的ではありません。むしろ、ここまでロボット掃除機の普及が伸びていない国は日本くらいです。
中国では一時的に世帯普及率が3割に達し、アメリカや欧州でも掃除機市場の20%前後がロボット掃除機です。日本でも、年収600万円以上・4人家族といった一定のセグメントでは、すでに普及率は3割近くあります。つまり「市場がない」のではなく、今の訴求方法や提供の仕方が十分にフィットしていないだけだと見ています。
ラインナップの拡大で価格的なハードルも下がっており、届け方さえ工夫すれば20%という数字は十分に狙える水準です。もちろん、すぐ達成できるとは思っていませんが、海外ではすでに達成している国もあります。人口規模が大きく、世界2位の市場である日本には、まだ大きな伸びしろがあります。したがって「5台に1台」は、十分に射程圏内の目標だと考えています。






