ダイキン工業は今月5日、AIデータセンター向け負圧式液体冷却システムを開発する米チルダイン(Chilldyne)を買収したと発表した。これにより、データセンター向け冷却ソリューションの拡充を図る。
販売網を活かし、AIデータセンター冷却市場で存在感
チルダインは、米カリフォルニア州サンディエゴに本社を置く企業で、冷却水分配装置(CDU=Cooling Distribution Unit)向けに、負圧式ダイレクトチップ液体冷却システムの設計、製造を行っている。高い信頼性と、エネルギー効率を実現しているのが特徴だ。
2014年から、液体冷却ソリューションとして、CDUからマニホールド、コールドプレートまでの一貫した液体冷却システムを提供しており、陽圧方式に代わる選択肢を顧客に提供してきた。
負圧式システムは、同社が取得した特許をもとに製品化したものであり、サーバールーム内での冷却液の液漏れによるデータセンターの停止や、サーバー損傷のリスクを低減し、AIデータセンターや、GPUサーバーに最適なソリューションを提供することができるという。
2025年11月5日に開催したダイキン工業の2025年度上期業績発表において、ダイキン工業の竹中直文社長兼COOは、「データセンターは、AI時代の到来によって、さらなる市場拡大が見込まれている。また、発熱量が増大し、チップやサーバーを直接冷却することが求められている。データセンター市場は約3兆円規模の市場があり、2030年度には5兆円を超える規模になる。年平均成長率は14%以上が見込まれている」と前置きしながら、「今回の買収により、ダイキン工業は、熱源となるチラー、二次側製品となるエアハンドリングユニット、ラック冷却、チップ冷却の4つを手に入れることができた。これまでのチラーとエアハンドリングユニットでは、空冷を対象にしたビジネスだったが、今後、成長が期待できる液冷において、ラック冷却およびチップ冷却技術を提供できる。また、これらのすべてを束ねるトータルソリューションも提供が可能になる」とする。
ハイパースケールおよびAIデータセンター向け冷却ソリューションの包括的エコシステムの提供を目指す考えを示しており、「データセンターが抱える電力消費問題や、騒音問題の解決にも貢献できる。米州からスタートし、これを横展開し、グルーバルに拡大し、一気呵成に展開していく」と述べた。
チルダインの買収は、ダイキン工業の子会社であるダイキンアプライドアメリカズ(DAA)を通じて行い、DAAのポートフォリオに「ダイレクトチップ液体冷却技術」を追加。DAAが持つデータセンター向けソリューションの製品群を補完し、持続可能で高効率な冷却技術を提供する取り組みを、さらに強化できるとした。
冷却液がコールドプレートを通じて、安全で、効率的に、サーバーから熱を直接除去し、最新のGPUサーバーを、安定して稼働させるとともに、液漏れを防ぐことで、データセンターの稼働停止のリスクの低減。さらに、設置の簡素化、冷却システムコストの低減と、エネルギー効率の向上などのメリットも提供するという。「冷却システムの設置コストおよび運転コストの削減、顧客の資産であるサーバーの保護に寄与することができる」とした。
高性能コンピューティングやAI用途のように熱負荷が大きい場面では、液冷技術が不可欠となるなか、安定稼働が求められるハイパースケールおよびAIデータセンターに対して、信頼性の高い包括的な冷却ソリューションが求められている。「AI向けデータセンター冷却分野におけるダイキン工業の存在感を高めることができる」としている。
また、DAAは、2025年8月には、モジュラー高密度冷却キャビネットを開発、製造するDDC Solutionsを買収しており、チルダインの液体冷却システムを組み合わせたソリューションを、すでに市場に提供している実績もあるという。
この組み合わせにより、高密度ラック環境向けの効率的かつ信頼性の高い冷却ソリューションの提供を可能とするほか、AI向けデータセンターなどのデータ集約型環境に多くの利点をもたらすことができるとしている。
チルダインのチームは、DAAに加わり、拡大するデータセンター向け技術を推進し、全社横断組織の実現にも貢献することになるという。
竹中社長兼COOは、「この分野における市場シェアではトップ10に入っている。ダイキン工業が持つ世界の販売網を活用して、シェアを拡大していきたい」と述べた。
2025年度の上半期決算、過去最高を更新
一方、ダイキン工業が発表した2025年度上期(2025年4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比0.6%減の2兆4787億円、営業利益が前年並の2466億円、経常利益が同7.9%増の2418億円、当期純利益は同6.1%増の1609億円となった。
ダイキン工業の竹中社長兼COOは、「厳しい事業環境のなか、引き続き、収益重視の事業運営を徹底し、売上高、営業利益は計画通りの水準を確保できた。経常利益と当期純利益は、上期として過去最高を更新した」と総括。「第2四半期以降は、米国住宅市場の低迷や、中国の不動産不況の長期化などにより、想定を上回る需要の低迷となった。米国や欧州における販売力の強化、国内での高付加価値商品の拡大、売価アップやコストダウンなど、6つのテーマにおいて、施策を実行するとともに、追加施策の実行が、今回の業績につながっている」と振り返った。
セグメント別では、空調事業の売上高は前年並の2兆3069億円、営業利益は同6%増の2323億円。そのうち、日本の売上高は前年同期比5%増の3406億円となった。
猛暑予測により、4月から需要が増加し、6~8月も記録的な猛暑が続いたことや、賃金改善による消費マインドの回復もあり、業界需要は改善。住宅用空調では「うるさらX」などの差別化商品の提案を強化し、電気代の上昇や、猛暑による使用時間の長時間化によって、高まった省エネニーズを捉えて、高級機種の拡販に努めたという。また、業務用空調では、事務所や商業施設の改修など、民間設備投資が拡大。省エネ性の高い「FIVE STAR ZEAS」を軸に、電気代削減につながる提案強化で販売を拡大したほか、ビル市場向けには、既存の配管を利用して、簡単に更新が可能な「VRV Q」シリーズ、施工性を高めた「machi マルチ」、R32冷媒を採用した「VRV 7」シリーズなど、高付加価値機種により、シェアが高まったという。
米州の売上高は同2%増の97989億円、中国の売上高は同12%減の2304億円、欧州の売上高は同3%増の3614億円、アジア・オセアニアの売上高は11%減の3956億円となった。米州では、業務用大型空調(アプライド)において、データセンター向け製品のラインアップを強化し、拡販に努めたことが売り上げ増に貢献したという。
また、化学事業は売上高が同2%減の1268億円、営業利益は同48%減の137億円。半導体や自動車での需要低迷、流通在庫調整などの影響によって減収減益になった。その他事業(油機、特機、電子システム)の売上高は同4%減の452億円、営業利益は同53%減の6億円となった。
一方、2025年度通期(2025年4月~2026年3月)の業績見通しは、売上高が前年同期比2%増の4兆8400億円、営業利益が同8%増の4350億円、経常利益が同13%増の4150億円、当期純利益は同6%増の2800億円としており、売上高、営業利益では過去最高業績の更新を目指す。なお、経常利益と当期純利益の見通しを、5月公表値から上方修正した。
ダイキン工業は、2025年度を最終年度とする「FUSION25」に取り組んでいるが、「現在、2026年度からスタートするFUSION30の策定に取り組んでおり、ここには、新たな資本政策を盛り込む予定である。将来の成長機会に対して、積極的に投資し、成長戦略の実行により、企業価値向上と、社会課題解決への貢献につなげることを目指す。将来に渡って、成長戦略を支えるために、ROEの改善を強く意識した経営を推進する考えである」と述べたほか、計装やエネルギーマネジメントなどの買収した企業の能力を活用しながら、市場ごとに顧客に寄り添いながら、ライフサイクル全体で価値提案を図る「ソリューションで稼ぐ事業構造への転換」、インバータやR32などによる環境プレミアム商材による事業拡大、アプライド事業の拡大を進める「北米での売上ナンバーワンの実現と利益率の向上」、現地での開発、生産、販売、サービスの一大体制を構え、品揃えの充実やコスト競争力を高める「インドをはじめとするグローバルサウスでの事業拡大」の3点に重点的に取り組む方針も示した。
また、成長市場であるデータセンターや工場などに対応した付加価値の高いサービスを提供していく考えを強調したほか、東南アジアや欧州での中国メーカーの攻勢に対しては、「各市場にマッチした差別化戦略を展開し、中長期的に収益性を高める」と述べた。



