Google Japanは10月29日、Chromebook Plusの新機能説明会を開催した。米Googleは5月28日(現地時間)にChromebook Plusへ新たなAI機能を追加することを発表済み。そのAI新機能の一部が、10月30日から日本でも提供される。

  • 日本で発売しているChromebook Plus。4メーカーから8製品が登場している

そもそもChromebook Plusって?

GoogleのChromeOSを搭載したPC「Chromebook」はいまや文教市場で最も高いシェアを持つデバイスだ。文部科学省による「端末利用状況等の実態調査(令和3年7月末時点・確定値)」(2021年10月)によると、GIGAスクール構想における整備済み端末のOSシェアはトップがChromeOS(40.0%)、次いでWindows(30.9%)、次いでiOS(29.1%)、その他(0.1%)となっている。

Chromebookは検索やメール、画像編集といったGoogleのサービスが統合されており、クラウドと密に連携することでデバイスの価格を抑えられること、職員による端末管理がしやすいこと、高いセキュリティを備えることなどが、教育現場での支持につながっていると言われる。

そんな中、2023年10月に登場したChromebook Plusはいったい何が「Plus」なのだろうか。端的にいうとChromebook Plusは、一般的なChromebookから基本性能をアップした「Chromebookの高性能モデル」だ。具体的には、一般的なChromebookから基本性能(処理速度やメモリ、ストレージ)が倍増しており、そのスペック要件として下記が定められている。

  • プロセッサ:Intel Core i3(第12世代)以降またはAMD Ryzen 3 7000シリーズ以降
  • メモリ:8GB以上
  • ストレージ:128GB以上
  • ウェブカメラ:1080p 以上
  • ディスプレイ:フルHD IPS以上

説明会に登壇したGoogleのJohn Maletis氏(Vice President, ChromeOS Product, Engineering and UX)は、「家族を野球観戦に連れていく」ため何百もの検索を行い、各種サイトを全部見比べ、交通やスケジュールを調べ上げるといったエピソードを例に挙げ、AIが人間に寄り添って、人間がしなければならない細かい(しかし多大な)労力を省くような仕事をすることを、Chromebook Plusで実現したいと紹介した。

Chromebook PlusのAI新機能を体験、サクサク感が印象的

すでに提供されているものも含め、Chromebook Plusで使えるいくつかのAI機能を紹介しよう。

  • Chromebook Plusで利用可能なAI機能の例

まずは「読解サポート」。米国では「Help me read」という名称で、長いPDFやWebサイト、テキスト、Word文書などをAIが認識し、短く要約する機能だ。

2024年10月30日に提供予定で、現時点では英語のみに対応する。対応する文書やその要約は英語となるが、機能自体は日本でも利用可能。要約後に気になる点があれば、追加で質問を入力できる。

日本語は2025年上旬に対応予定で、「早いタイミングで日本語でも使えるよう取り組んでいる」(John Maletis氏)とのことだ。

  • 文章読解サポート。現在は英語のみ提供されている

「読解サポート」が動いている様子。長いPDFやWebサイトなどのテキストをAIが把握し、短く要約してくれる機能だ。デモでは待ち時間なく、「要約」ボタンを押してすぐに要約が表示された

  • Chromebookシリーズを紹介するGoogleのWebサイトを要約したところ。要約したいWebサイトなどを右クリックすることで起動する。要約スペースの下部には質問ボックスが設けられ、気になる点をAIに尋ねられる

  • (Chromebookで)最も革新的な特徴は? と追加で尋ねると「Help me read」(読解サポート機能)という回答。要約元となったWebサイトにもそのように書かれている

  • 試しに日本語のWebサイト(マイナビニュース)で同機能を使ってみたところ、機能自体は起動できたものの、言語がサポートされていないという表示が出た

また、ライティング支援機能「文書作成サポート」(Help me write)は、2024年9月から提供されている機能。日本語も含めた12言語をサポートしている。

Geminiの言語モデルを活用し、「こんな文章を作成したい」というアイデアを入力すると、希望に沿った文章が生成される。招待状やお詫び文など、ゼロから作るのは手間がかかり、“たたき台”を作ってからニュアンスなどを調整したい――といった用途に向く機能だ。

読解サポートや文書作成サポートはOSに組み込まれた機能のため、アプリを問わず利用可能。SNSの「X」で投稿する文の下書きや、メールの作成などにも活用できる。

「文書作成サポート」が動いている様子。Geminiの言語モデルを活用し、「こんな文章を作成したい」と説明を入力すると、希望に沿った文章が生成される

  • Google Chatのテキスト入力欄で右クリックすると「文書作成サポート」が起動。「プロンプトを入力」のボックスにどんな文を作りたいかの説明を入力する

  • 生成された文書は「絵文字を追加」や「簡潔に」「詳しく」「フォーマルに」など、ニュアンスを調整できる。右下の「挿入」ボタンをクリックすると、利用している

このほか、ビデオ通話の画質と音質の向上も10月30日に追加される機能。AIを活用し、ノイズキャンセリングや明るさ自動調節などを行う。また10月2日に提供を開始した「リアルタイム翻訳」は、動画で話されている言葉を自動で翻訳するもので、MeetやZoom、YouTubeのライブストリームなど多彩な動画に対応する。日本語を含む19カ国の言語をベースに、100カ国以上の言語への翻訳・字幕表示が可能だ。

  • ビデオ通話の画質と音質の向上も10月30日に提供を開始

  • リアルタイム翻訳もOSに組み込まれるAI機能の1つ。MeetやZoom、YouTube、ローカルに保存した動画など多彩な動画に対応する

「リアルタイム翻訳」が動いている様子。Chromebook紹介動画(英文)を再生すると日本語へ翻訳した字幕が表示される ※音が出ます

  • Chromebookシリーズを紹介する動画で「リアルタイム翻訳」を動かしたところ。動画が進むにつれて日本語訳も変化していく

ちなみにPixelシリーズで知られるGoogleフォトの「編集マジック」も、ChromebookシリーズではPlusのみの機能。被写体の拡大や縮小、位置の変更などがPC上で行え、こちらは2024年5月から提供中。一方「消しゴムマジック」はChromebookシリーズ全体で使える機能だ。なお消しゴムマジックのみローカル側でのAI処理となり、読解サポートや文書作成サポートといった主要なAI機能はクラウド側での処理となる(インターネット接続が必要)。

  • 編集マジックの例。Googleフォトの「編集」ボタンから選択できる。被写体の女の子を数秒長押しすると自動で被写体を選択

  • 被写体の選択後は自由にドラッグして動かせるようになる。被写体の大きさも変更可能だ

  • こちらは消しゴムマジックの例。Googleフォトの「編集」ボタンから「ツール」を選択し、消しゴムマジックを起動。消したいものを丸で囲うほか、消したほうがいい対象を自動で提案されることもある

  • 芝生の上の人物を消したところ

Chromebook Plusに限らず、Chromebookシリーズ全般に提供されている新機能も改めて紹介された。以下の4つの機能は10月からChromebookシリーズに加わっている。

  • Geminiをホーム画面へ標準搭載(10月2日提供)
  • ログイン時の画面復帰(10月2日提供)
  • フォーカス(10月2日提供)
  • ドライブの統合(10月提供)

ログイン時の画面復帰は、ログイン時に以前中断した作業の概要が表示され、その際の作業画面を再開させるか、新規でスタートするか選べるようになったもの。またフォーカスはPCに届く通知を制限する機能。ドライブの統合はオフラインでもホーム画面にピン留めした重要なファイルにアクセスできたり、ランチャーにファイルの候補を表示させたりできる機能(ファイル同期)となる。

日本でChromebook PlusはAcer、ASUS、HP、レノボの4社から8製品が登場している。GoogleとしてはChromebook Plusに限らず、より多くのAI機能をChromebookシリーズ全体に展開したいと考えているが、文書作成サポートと文書読解サポートの2つの機能に関しては、Chromebookで提供するかどうかは現段階では未定だとしている。

  • Chromebookシリーズ全般で使える新機能

  • Chromebookシリーズを購入すると、ChromebookではGoogle One AI プレミアムプランが3カ月無料(2025年2月1日まで)、Chromebook Plusでは12カ月無料(2025年1月31日まで)の特典が用意される

  • 勢揃いしたChromebook Plusシリーズ