2024年9月24日にグローバルで発売がスタートしたIntelの最新最新モバイル向けSoC「Core Ultraシリーズ2」。コードネームの「Lunar Lake」や「Core Ultra 200Vシリーズ」とも呼ばれるSoCだが、今回は上位モデル「Core Ultra 7 256V」を搭載するASUSのノートPC「Zenbook S 14 UX5406SA」を使用する機会を得た。前世代との比較も含めて全2回に分けてお届けするが、まずはCore Ultra 7 258Vの基本性能をチェックしていく。

  • Lunar Lakeは省電力でも高性能! 仕事もAIもゲームも大幅強化な「Core Ultra 7 258V」搭載ノートを試す(前編)

    Core Ultra 7 258Vを搭載するASUSの「Zenbook S 14 UX5406SA」。直販価格は299,800円

まずは、「Core Ultraシリーズ2」について触れておこう。Pコア(Lion Cove)×4とEコア(Skymont)×4という構成のCPU、Microsoft「Copilot+ PC」の要件を満たす最大48TOPSのNPU、最新のXe2アーキテクチャを採用するGPUを組み合わせたSoCだ。詳しい解説を知りたい人は「Lunar Lake正式発表! Core Ultra 200Vシリーズのラインナップを早速チェック」も合わせてチェックしてほしい。ラインナップは以下の通りだ。

  • Core Ultraシリーズ2のラインナップ一覧

CPUで特徴的なのは、すべてPコアが4基とEコアが4基で合計8コア8スレッド構成であること。PコアのLion CoveアーキテクチャはL0キャッシュの新設や並列処理の強化。1コアで2スレッド処理するハイパースレッディングの廃止などが行われた。EコアのSkymontアーキテクチャは前世代にあった超省電力のLP Eコアの役割を統合、分岐予測を強化など省電力性と性能の両面を大きく向上させている。

また、メインメモリはSoCに統合されている。16GBと32GBが用意されており、後からの増設は行えない。メモリ容量が固定化されてしまうのが弱点だが、CPUとの接続ラインが非常に短くなるため、メモリの省電力化と高速化を実現。基板の小型化にも貢献できると、メリットも多い。

  • CPU-Zの表示。8コア8スレッド構成なのが分かる

GPUには、Battlemage世代の「Xe2」アーキテクチャを採用する「Arc 140V」を内蔵。AI機能を持つXMXエンジンを搭載、8基のレイトレーシングユニットを備え、前世代の内蔵GPUから1.5倍もの性能向上を果たしている。多くのゲームがプレイできるのでは、と期待が高まるところだ。

  • Core Ultra 7 258VはGPUにXe2コアを8基搭載するArc 140Vを内蔵

AI特化プロセッサの「NPU」は第4世代に進化。前世代の第3世代NPUは10TOPSだったのに対し、最大48TOPSまで大幅に向上している(Core Ultra 7 258Vは47TOPS)。Copilot+ PCの要件を満たしており、NPU対応アプリも増加しているため、今後活躍する機会は増えていくだろう。

  • NPUの稼働状況はタスクマネージャーでチェックできる

14型ノートPCのASUS「Zenbook S 14 UX5406SA」でCore Ultra 7 258Vの実力チェック

ここからは、Core Ultra 7 258Vを搭載するASUS「Zenbook S 14 UX5406SA」で性能をテストしていこう。14型で2,880×1,800ドットの解像度、有機ELパネルのディスプレイを搭載するモバイルノートPCだ。メモリはLPDDR5X-8533が32GB、ストレージはGen 4接続のNVMe SSDが1TB。高い性能を備えながら、最薄部で11.9mmというスリムなボディを実現している。

  • 最薄部約11.9mmのスマートなボディ

  • 14型で2,880×1,800ドット、有機ELパネルのディスプレイ。リフレッシュレートは120Hzと高く、タッチ操作にも対応している

まずは、CGレンダリングでCPUパワーを測定する「Cinebench 2024」、PCの基本的な性能を測定する「PCMark 10」、定番3Dベンチマーク「3DMark」を実行しよう。

  • ファンモードは「フルスピードモード」に設定し、最高のパフォーマンスが出るようにしている

  • Cinebench 2024の結果

  • PCMark 10 Standardの結果

  • 3DMark Fire Strikeの結果

  • 3DMark Steel Nomad Lightの結果

8コア8スレッドなので、Cinebench 2024のMulti Coreのスコアはそれほど高くはないが、Single CoreのスコアはノートPCとしてかなり高い。コアあたりの性能はかなり強化されたと言ってよいだろう。PCMark 10のスコアも高く、一般的な処理で不満を感じることはないだろう。3DMarkのスコアも内蔵GPUとして最高クラスと言える。

実ゲームに移ろう。用意したゲームは6本。低画質設定で解像度はフルHD。重量級のゲームでアップスケーラーやフレーム生成に対応しているものは有効化している。測定条件は以下の通りだ。

  • Apex Legends:低画質設定で、トレーニングモードの一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • オーバーウォッチ2:画質“低”で、botマッチを実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • ストリートファイター6:画質“LOWEST”で、CPU同士の対戦を実行した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定
  • Call of Duty: Modern Warfare 3:画質“低”、FSR 3“パフォーマンス”で、ゲーム内のベンチマーク機能を利用
  • Ghost of Tsushima Director's Cut:画質“非常に低い”、FSR 3“パフォーマンス”で、旅人の宿場周辺の一定コースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」
  • サイバーパンク2077:画質“低”、FSR 3“パフォーマンス”で、ゲーム内のベンチマーク機能を利用
  • ゲーム性能ベンチマーク

低画質設定ではあるが、快適に遊べる目安と言える平均60fpsにどのゲームも到達できている(ストリートファイター6は対戦時だと最大60fps)。薄型のノートPCでも、多くのゲームをプレイできる性能がある、というのは非常にうれしいところ。内蔵GPUでトップクラスの性能があると言ってよいだろう。

AI性能はどうだろうか。さまざまな推論エンジンを実行してAI性能を測定するUL Procyon AI Computer Vison BenchmarkをCPU、GPU、NPUのそれぞれで試した。実行中のシステム全体の消費電力も合わせてチェックしている。電力計にはラトックシステムの「REX-BTWATTCH1」を使用した。

  • AI性能ベンチマーク

  • 消費電力ベンチマーク

GPUとNPUが優れたAI性能を持っているのは分かる。ここでのポイントは消費電力だろう。CPU、GPU、NPUともほとんど変わらない。それでいてNPUがトップスコア。NPUがAI処理における電力効率に優れているのが分かる結果だ。

インターフェースや重量などもチェック!

Zenbook S 14 UX5406SAのそのほか特徴に触れていこう。主なインタフェースは、右側面にUSB 3.2 Gen2×1、左側面にHDMI出力、Thunderbolt 4×2、ヘッドホン端子を備えている。ワイヤレス機能は、Wi-Fi 7、Bluetooth 5.4をサポート。有線LANは備えていない。キーボードに関しては試用したモデルは英語配列だが、製品版は日本語配列になる。白色のバックライトも内蔵。

なお、本体のサイズは幅310.3mm×奥行き214.7mm×高さ11.9~12.9mmで重量は約1.2kg、バッテリー駆動時間はJEITA測定法3.0の動画再生で約13.1時間、アイドル時で約19.7時間だ。

  • 右側面はUSB 3.2 Gen2×1のみ

  • 左側面にHDMI出力、Thunderbolt 4×2、ヘッドセット端子

  • キーボード。写真は英語配列だが、発売モデルでは日本語配列になる

  • 重量は筆者の実測で1,184gだった

低消費電力で仕事もAIもゲームもこなせる汎用性が強み

Core Ultraシリーズ2は、高い電力効率を重視した設計によってZenbook S 14 UX5406SAのようなスリムなボディでも優れたシングルスレッド性能、フルHD解像度で低めの画質なら多くのゲームがプレイできるGPU性能、Copilot+ PCの要件を満たすNPU性能の搭載を可能にした。低消費電力なのでバッテリー駆動時間も長く、仕事もプライベートも充実できるモバイルノートPCを作りやすいSoCに仕上がっている。

次回は、前世代のMeteor Lake搭載ノートPCを用意し、どこまで性能が変わっているのか比較していきたいと思う。CPUパワー、ゲーミング、AIと多角的にチェックしていく予定だ。