米Qualcommは10月21日(現地時間)、モバイル向けSoCの新たなフラッグシップ「Snapdragon 8 Elite」を発表した。これまでモバイルチップセットで用いてきたKryo CPUに代えてOryon CPUを搭載している。これにより、より高速なパフォーマンスが可能となり、AIに関してもマルチモーダルインテリジェンスのオンデバイスサポートを提供する。搭載製品は数週間以内に登場する見通しであり、ASUS、Honor、iQOO、OnePlus、OPPO、RealMe、Samsung、Vivo、Xiaomiなどが採用する予定である。

Oryonは、Qualcommが2021年に買収したNuviaのチップ技術を取り入れて自社設計したCPUであり、PC向けの「Snapdragon X Elite」や「Snapdragon X Plus」が搭載している。

Snapdragon 8 Eliteは、モバイル向けにカスタム設計した第2世代のOryonを搭載する。これは、最大4.32GHzで動作するプライムコアが2つ、同3.53GHzで動作する高性能コアが6つという構成で、「Snapdragon 8 Gen 3」と比較してCPUの処理能力は45%向上し、電力効率は44%改善している。

メモリは、最大5.30GHzのデュアルチャネルLPDDR5Xをサポートする。また、Adreno GPUに効率的な並列処理を実現するスライス・アーキテクチャが採用されており、前世代と比較してパフォーマンスが40%、電力効率が40%、レイトレーシング性能が35%向上している。これらにより、システム全体での電力効率が27%向上し、ゲームの場合、最大2.5時間長くプレイすることが可能となっている。

生成AI市場の成長に伴い、CPU/GPUと並んで注目を集めるようになったNPU(Hexagon)は、AI処理性能が45%向上し、ワットあたりのパフォーマンスも45%改善している。Qualcomm AI Engineは、生成AIモデルのエコシステムに幅広く対応しており、大規模マルチモーダルモデル(LMM)、大規模言語モデル(LLM)、大規模ビジョンモデル(LVM)を含む様々なAIモデルを用いて、音声、テキスト、画像の理解によるインテリジェントな対話を実現する。

また、AI ISPというHexagon NPUと深く統合されたISP(画像処理プロセッサ)が採用されている。顔や髪、服、オブジェクト、背景など、フレーム内のほぼ全ての要素を認識・強調でき、さらに250以上のレイヤーによる最適化など、セルフィーからビデオチャットまであらゆるシーンをクリアに映し出す。

通信面では、「Snapdragon X80 Modem-RF System」と「FastConnect 7900 Mobile Connectivity System」を採用している。Snapdragon X80 は、3GPPリリース17および同18に準拠し、5G Advancedに対応。NB-NTN、4x6 MIMOをサポートしている。FastConnect 7900は、Wi-Fi、Bluetooth、UWBを統合した初の製品であり、AIをWi-Fiに適用している。これにより、通信性能の向上に加え、40%の効率向上を実現している。