2024年9月26日から29日まで開催された「東京ゲームショウ2024(TGS2024)」のインディーゲームコーナーにて、講談社ゲームクリエイターズラボがブースを出展した。昨年8月に発売された『違う冬のぼくら』や、続く新作の『違う星のぼくら』をはじめ、『FAIRY TAIL ダンジョンズ』『FAIRY TAIL ビーチバレーをぶっ壊せ』、『ガンズ・アンダークネス』など全25作品の試遊台がブース内に用意されていた。
個性豊かな作品が多く並ぶなか、筆者はスタッフの方におすすめされた『違う星のぼくら』と、グラフィカルなビジュアルに心惹かれた『ダレとカレも』をプレイ。どちらも物語の冒頭部分を体験できたので、その様子をお伝えする。
協力プレイで自然と会話が生まれる! 『違う星のぼくら』
『違う星のぼくら』は、ゲームクリエイターのところにょり氏が手がける、2人プレイ専用のパズルアドベンチャーゲームだ。前作の『違う冬のぼくら』は、多くのストリーマーやVTuberに配信され、累計売上本数60万本を突破。大きな話題を呼んだ。『違う星のぼくら』では、前作の「プレイヤー同士が協力してパズルを解きながらゲームを進める」という基本システムを引き継ぎながらも、全く別の舞台で物語が展開される。
前述の通り、本作は2人プレイが必須なのだが、会場内を1人で歩き回っていた筆者には相方となるプレイヤーがいなかった。それでも、どうしてもこのゲームをプレイしてみたい……!
しばらく試遊台の前で様子を伺っていると、1人の女性がコントローラーに触れた。この機会を逃してはならないと、思い切って声をかけてみたところ、快く2人プレイを承諾してくれた。かくして、初対面の「ぼくら」の旅がスタートした。
『違う星のぼくら』は、遠い惑星の探索を命じられた2人の死刑囚が主役だ。とある惑星に向かう途中で探査船が故障し、見知らぬ赤い惑星に不時着したところから物語が始まる。
冒頭の2人の会話シーンは、どちらのプレイヤーとも同じ画面が表示されている。いざ操作がはじまると、各々の操作キャラクターに合わせて画面が別々に動き出す。2人並んで右方向へ進んでいくと、最初の謎解きポイントが登場した。スイッチの上に重しを置き、エレベーターを起動させて先に進む、という簡単なパズルだったので、お互いのキャラクターの動きを見ながらスムーズにクリアできた。
さらに右へ進むと、記号が描かれた3つのオブジェクトとゲートが登場する。オブジェクトにXボタンで「アクション」を起こしてみると、上部に表示される記号が別の絵柄へと変わった。双方の記号をそろえるとゲートが開く仕組みで、1つ目のゲートは難なくクリアできたが、問題はその次だった。
2つ目のゲートには、地上と地下にそれぞれオブジェクトとゲートが用意され、どちらも違った記号が描かれていた。記号をそろえようにも、オブジェクトの上部には目の前のゲートとは異なる記号ばかりが表示され、そろえることができない。
どうしたものかと悩んでいたら、相方のプレイヤーから「地上と地下で連動する記号が入れ替わっているのかも」と声をかけられ、ハッと気付かされた。そこからは地上と地下の二手に分かれて操作を進め、お互いに「どんな記号が、どの順番で描かれているのか」を口頭で説明し合い、無事にパズルを解いて両ゲートを突破することができた。
その後も、触れると電撃を浴びせられて死に至る障害物など、厄介なパズル要素が多く登場したが、「こうしてみてはどうだろうか?」とお互いにアイデアを出し合ってみたり、「こちらの画面ではこうなっている」と細やかに情報共有したり、会話をしながら楽しくゲームプレイを進められた。
体験版の最後では、キャラクター同士が互いに違った思惑を巡らせている様子が描かれており、単に協力するだけのゲームではなさそうな、不穏な空気が流れていた。しかし、筆者は短くも心躍る旅を満喫し、相方を務めてくれたプレイヤーとちょっぴり仲良くなれた気がしてうれしかった。
前作の『違う冬のぼくら』を含め、「相手がいないからプレイできない」と嘆いているプレイヤーがいたら、SNSなどを使って未知の相方を探してみるのもいいかもしれない。初対面でも、パズルを解くために自然と会話が生まれてゲームを楽しめたので、ぜひトライしてみてほしい。
クリックだけで進行する不思議な物語。『ダレとカレも』
続いてプレイした『ダレとカレも』は、ゲームクリエイターのyona氏が手がける新感覚のノベルゲームだ。色彩豊かな3Dゲームが多く展示されていたブース内で、シンプルな線と陰影だけで描かれた本作は存在感を放っていた。
しばらくゲームスタート前のプレビュー画面を眺めていたが、「ノベルゲーム」にカテゴライズされているのに、テキストはほぼ無いに等しかった。一体どんなゲームなのか、これは実際に遊んでみなければ分からないだろうと感じ、試遊に臨んだ。
本作の操作方法は、マウスの左クリックのみ。タイトル画面をクリックすると、「私はロボットではありません」という、見覚えのあるセキュリティ対策の文言が表示された。ゲーム作品にしては斬新なスタートだなと思いつつ、クリックで対応していく。
次に、氏名を入力する画面が表示された。マウス操作だけで、どうやって名前を入力すればいいのだろうと考えながら、とりあえず真ん中にある丸いボタンをクリックしてみる。すると、画面全体にノイズが入り、入力フォームやテキストがぐにゃりと歪みはじめた。
その後も質問と選択肢が噛み合わない支離滅裂な内容が続き、ホラーゲームのような展開に緊張感が高まる。しかし、プレイヤーができることは、ただ白い丸ボタンをクリックするのみだ。連続してクリックをしているうちに画面がひび割れる演出が入り、少女が目覚めるシーンへと切り替わった。
ベッドから起き上がった少女は、朝の身支度をはじめる。画面には、洗面台の画とあわせて4つの丸いボタンが表示された。試しにそのうちのひとつをクリックしてみると、少女が歯ブラシを握りしめた。また別のボタンをクリックしてみると、今度は歯ブラシの上に歯磨き粉を乗せる。どうやら4つのボタンにはそれぞれ異なるアクションが設定されていて、歯を磨くためには正しい順番でボタンをクリックしていく必要があるらしい。
テキストでの説明が一切ないので、プレイヤーはあれこれとクリックして試しながらゲームを進めていくことになる。「このボタンを押すと何が起こるのだろうか」というワクワク感と、パズルのようにアクションを組み合わせて正解を導く謎解き要素に、気がつけば夢中になっていた。
直感的な操作でプレイヤーを誘導するゲームの作りにも驚かされたが、同じくらい驚きだったのがストーリーだ。
身支度を済ませた少女がリビングルームに行くと、お父さんがいなくなり、代わりに見知らぬおじさんがソファで眠っていた。少女は慌てて911通報を試みるも、おじさんに阻止されてしまう。挙句、そのおじさんは名乗りもしないまま少女に食事をするよう命じてくる。
通報や食事をする場面でも、クリック操作でさまざまなアクションが求められる。しかし、おじさんへの不信感と恐怖からか、先ほどまでとは打って変わって楽しさよりも焦りの方が強くなった。
クリック1つの気持ち良い操作感の裏側で、不気味に進行していくストーリー。この新感覚のプレイ体験は、筆者の胸に深く刻まれた。体験版では、再び少女が眠りにつくところまでが描かれており、おじさんが何者なのか、少女とどういった関係なのかは全くわからないまま終わる。製品版での次なる展開に期待感が高まった。