2020年11月12日にPlayStation 5(PS5)が発売されてから約4年。ストーリーに感動した作品があった。アクションが抜群におもしろい作品もあった。超美麗なグラフィックに圧倒されたゲームもあれば、3Dオーディオで高い没入感を味わえるタイトルもある。進化した次世代機とその機能を活かした作品が、すばらしいゲーミングライフを提供してくれたことは間違いない。

しかし、いまだかつて、コントローラー1つで魂を震わされたタイトルはなかったと思う。PS5にプリインストールされている『ASTRO’s PLAYROOM』を除いて――。

『ASTRO’s PLAYROOM』は、主人公キャラクター「ASTRO」を操作して冒険するアクションゲーム。PS5の「DualSense ワイヤレスコントローラー」(以下、DualSense)に搭載されているハプティックフィードバック、アダプティブトリガー、モーションセンサーなどの機能を最大限活用するようにデザインされているのが特徴だ。

たとえば、ASTROが土の上を歩くのか、草むらを歩くのかによって、歩行による振動が異なるのだが、そのバリエーションがかなり豊富。砂浜、木の橋、金属、氷など、かなり細かく設定されていることに驚かされたのを今でも覚えている。

そんな『ASTRO’s PLAYROOM』の拡張版とも言えるPS5用アクションゲーム『アストロボット』が2024年9月6日に発売された。価格は7,980円。PS5の技術の粋を詰め込んだ『ASTRO’s PLAYROOM』からどのような進化を遂げているのだろう。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から商品が届いたので、実際にプレイしてみた。

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    PS5用アクションゲーム『アストロボット』をプレイ!

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    ニューゲームで選べるセーブスロットは3つ。初代PlayStationのメモリーカードデザインだ。カーソルを動かすと、早速ブルリとコントローラーが揺れた

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    導入はシンプルでわかりやすい。悪い宇宙人「ネビュラックス」によってASTROたちの乗るPS5型の宇宙船が破壊され、仲間の「ボット」たちが散り散りになってしまう。みんなを助けに、いざ出発

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    「DualSense」の形をしたジェット機「デュアル スピーダー」に乗って、6つの銀河にあるさまざまな惑星を冒険だ

「DualSense」のポテンシャルを発揮させる作り込みが相変わらずスゴい

『アストロボット』を一言で表すなら、「シンプルな操作の3Dアクションゲーム」だろう。移動、ジャンプ、パンチなどを駆使して、あちこちに散らばった仲間の「ボット」を探しながら、ステージのゴールを目指す。基本的なシステムは『ASTRO’s PLAYROOM』と同じ。新しい敵や能力が追加されたほか、ステージが80以上に増えてボリュームアップした。

特筆すべきは、何と言っても「DualSense」を最大限に活用した“遊び”をふんだんに取り入れていること。なかでも、さまざまな振動をコントローラーに伝えるハプティクスは、『ASTRO’s PLAYROOM』と同様の圧倒的作り込みで驚かされる。

石の上を歩くと、左右の足の着地に合わせて「トコトコ」とコントローラーの左右のグリップが振動。苔が生えている場所に進むと、振動が細かくなり、やわらかい印象を伝える。草が伸びたエリアを歩いたら、「ザワザワ」と植物をかき分けるような重めの振動に変化した。

水中の移動も圧巻。不規則に「ドブンドブン」と震えるコントローラーからは、リアルな水の抵抗を感じさせる。さらに、金属の上でジャンプすれば「キーン」と弱い振動の余韻が残るし、氷の上をスケートのように滑れば「シャー」という小さく長い振動が続く。なにもないところにインクをぶちまけたら、その場所だけ振動が重く変化することもあった。

そんな、手に伝わる振動がプレイヤーの好奇心を刺激。「あの場所を走り回ったらどんな感覚なんだろう」と、あちこち歩きたくなる。

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    ステージの惑星に降り立ったら、ボットを探しながらゴールを目指す

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    石、芝、苔、雑草など、歩く場所によって「DualSense」の振動が変化する

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    「ドブン」と揺れる水中

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    金属の床は「キーン」と特徴的な振動が伝わる

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    インクがあるところもハプティクスが変化する

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    『ASTRO’s PLAYROOM』でも感動した傘の振動。「ポツポツ」とランダムに雨粒が当たる表現が超リアルだ

もちろん、振動は歩行時のみに起こるものではない。たとえば、ASTROのパンチアクションで小さな敵キャラを殴ると「ボイン」と愉快な振動が返ってくる。それも殴るものによって異なり、木の場合は重たく「ドゴゴ」、花の場合は軽く「ボヨ」。右手で殴ったときはコントローラーのグリップの右側、左手の場合は左側が振動した。

それ以外にも、巨大ファスナーを開けるときは「ゴリゴリゴリ」と振動するなど、ステージのギミック発動時や周辺の環境に合わせたすべての状況をコントローラーに反映させる。いついかなるときでもASTROのいる世界を両手で感じ取ることができるのだ。

また、モーションセンサーも大活躍。ステージ開始時にASTROが乗っているDualSense型のジェット機「デュアル スピーダー」はコントローラーを傾けることで左右に移動するし、上下にブンブンとコントローラーを振って進むギミックもあった。

「デュアル スピーダー」をブーストするための「L2/R2」ボタンは、まるでエンジンの振動のようにカタカタ震えるなど、シーンに応じて変化するアダプティブトリガーの重さも『ASTRO’s PLAYROOM』と同じクオリティに仕上げている。今作では追加された能力によって「L2/R2」を使う機会も多いので、トリガーを押す楽しみも存分に味わえた。

まさに、「DualSense」の機能のフルコース。しかも、それらの機能を使うシーンが、ゲームのなかに自然に溶け込んでいる。ゲームをプレイする楽しさに遊園地のアトラクションを体験するワクワク感が加わったような、不思議な感覚だ。

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    敵を殴ったときの振動もある

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    ファスナーを開けるときはどんな振動かな?

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    ステージ開始時の「デュアル スピーダー」の移動はモーションセンサーで左右に移動する

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    突然、コントローラーを傾けて進むエリアに直面することも。さまざまな機能を使うが、どれも直感的に操作できた気がする

【ネタバレあり】多彩な能力によるアクションが冒険を彩る

ステージのデザインやギミックにも力が入っており、多彩なアクションで仕掛けを攻略する楽しさが満載。エアダッシュでガラスなどを突き破る「ブルドッグブースター」、バネでパンチが伸びる「ツインフロッググローブ」、水を吸い上げて巨大化する「ジャイアントスポンジ」といった特定の能力がステージごとに用意されており、アクションに変化をもたらしてくれる。

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    かわいいワンちゃんを背負う「ブルドッグブースター」

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    伸びるパンチの「ツインフロッググローブ」

なかでも、個人的なお気に入りは、水を吸い上げて巨大化する「ジャイアントスポンジ」と、小さい姿に切り替えられる「ネズミ(正式名称は不明)」だ。

「ジャイアントスポンジ」は、ASTROの体がスポンジのような素材に変化する能力。水場に入ると水を含んだASTROが巨大化するほか、体から水を抜いて「脱水」すると周囲に水を撒き散らし、植物を成長させたり、火を消したりできる効果もある。

巨大化した状態で「ドシンドシン」と敵やオブジェクトを破壊しながら進撃するのはかなり爽快。また、ジャンプすると「ドシーン」としたハプティクスを感じられるほか、周囲のオブジェクトが「ボヨン」と浮き上がる演出は見ていて楽しい。

ちなみに、見ていて楽しいものはほかにもある。ASTROは、コントローラーを操作せずに一定時間経過すると、その場でさまざまな動きを披露するのだが、能力によっても違うアクションを見せてくれる。「ジャイアントスポンジ」のときは、木桶を置いて、ジャンプして乗るアクションだ。水を含んでいない小さい姿だとちょこんと収まってかわいらしく、大きい姿だと木桶に入り切らずに粉々に壊してしまった。そんな細かい変化にも遊び心を感じる。

もう1つ、「ネズミ」を使ったステージも印象的だった。ネズミの相棒を背負ったら、好きなタイミングでネズミサイズまで小さくなれるのだ。

まるで、ミニチュアの世界に飛び込んだような感覚。通常サイズでは届かない高い場所も、文字通り視点を変え、あえて小さくなることで、花を階段のように登っていけるようになるなど、さまざまな驚きを味わえた。

もちろん、小さくなったらハプティクスも変化。スポンジの巨大化とは反対に、近くでウサギのようなロボットが飛び跳ねたら、その振動が「ドーン、ドーン」とダイレクトに伝わる。左側でジャンプすると着地の振動がコントローラーの左側に伝わり、右側だとコントローラーの右側が振動。左から右に移動してくると、その様子が手で理解できるほどだった。

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    「ジャイアントスポンジ」の巨大化状態で移動すると、小さい敵やオブジェクトを吹っ飛ばしていく

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    特定の場所で放水すると、植物が成長する演出が用意されていた

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    ネズミのように小さくなる能力をゲット

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    小さいからこそ見える景色や発見があった

ほかにも、ロケットのように飛び上がる「ニワトリ」、長い手を貸してくれる「サル」、吸い込んだ素材で足場を作れる「ゾウ」、泳ぎが上手になる「ペンギン」など多彩な能力が用意されている。ただジャンプしてステージを進んでいくだけではなく、さまざまな能力が攻略にアクセントを加えて、飽きさせない。

また、6つの銀河にある80以上のステージは、「古代遺跡」や「カジノ」、和風の「温泉」、ハロウィン感のある「墓場」など、バリエーション豊か。ボス戦もユニークなギミックばかりで楽しめた。

さらに、「特別な能力」が使えるステージも用意されている。過去に発売されたSIEスタジオのタイトルに登場するキャラクターのボットからアイテムを借りると、ASTROの姿がそのキャラクターに大変身。ステージがまるごとそのゲームの世界観になっており、「アストロボット風の別ゲー」を遊んでいるような気持ちになる。

それらのうち、いくつかチラ見せしよう。どんなタイトルとコラボしているか、ネタバレを避けたい人は、ここでそっとブラウザを閉じてほしい。

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    高く飛べる「ニワトリ」

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    ぶら下がったり、岩を投げたり、アクションが豊富な「サル」

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    吸い込んだ素材によってさまざまな足場を作れる「ゾウ」もおもしろい

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    多種多様な惑星を冒険する

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    スロットを止めるなど、そのステージにちなんだギミックも

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    墓場ではASTROが怖がっていた

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    強すぎず、弱すぎず、さまざまなギミックを楽しませてくれるボス戦

まずは、サルを捕まえるゲームの世界観の「ピポピポ ピポゲッチュ」。ここでは、通常のステージとは違って、「サルレーダー」でピポサルボットを探し、「ゲットアミ」で捕まえる。いきなりのゲーム性の変化に驚きを隠せない。

一度すべてのピポサルボットを捕まえたあとに、もう一度ステージにトライしたら、救出ボット数は増えないものの、ボット自体は復活しており、再びサルゲッチュすることができた。

また、北欧神話の世界「九界」を舞台にした「ボット・オブ・ウォー」もおもしろい。ヒゲを生やした雄々しきASTROが、氷の力を宿した戦斧「リヴァイアサン」を手に暴れまわる。1回ボタンを押すと標的に向かって投げつけ、もう一度押すと手元に戻ってくる原作の仕様もしっかり反映されていた。

パンチ力がアップするほか、リスポーン時に雄叫びをあげるなど、まるでクレイトスのように雄々しくなるASTRO。ジャンプしたときに「ドスン」と着地する振動や仕草はまさに“スパルタの亡霊”だ。隠れている仲間ボットが同作のキャラクター風なのはもちろん、緑に輝く「オーディンの鴉」まで再現しているこだわりっぷりである。

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    「ゲットアミ」を手に取るASTRO

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    すると、姿が変化

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    レーダーでピポサルを探して、網で捕まえるゲームが始まった

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    「ボット・オブ・ウォー」では、クレイトス風ASTROが戦斧リヴァイアサンをぶん投げる

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    斧は敵や水流を凍らせる効果がある。斧を手元に戻すと、凍った水流が水に戻る仕組みまで再現

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    「オーディンの鴉」をすべて見つけるとどうなるのだろう

そのほか、ステージの演出で個人的に驚いたのが、膨大な数の宝石やボール、落ち葉、木の実といったオブジェクトたち。たとえば、殴ると大量の葉っぱが落ちてくる木があるのだが、演出のみですぐ消えるかと思いきや、落ちたあともずっと「落ち葉」として存在している。しかも、一つひとつに“接触判定”があり、近くに行ったり、殴ったりすると、ちゃんと動くから驚きだ。

10個程度ならまだしも、その数がとにかく多い。大量のオブジェクトにギミックが隠されているケースもあるが、ほとんどが演出用の小道具的ポジション。しかし、決して無駄ではなく、いろんなものがバラバラと無秩序に存在する空間は、なんだか賑やかでプレイヤーの心を弾ませる。

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    たくさんのオブジェクトが落ちているシーンに何度も出くわす

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    全部ちゃんと動くので、トランポリンの上では、ボールと一緒にジャンプ!

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    幻想的な星のオブジェクトが降り注ぐ

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    大量のオブジェクトに隠されている仕掛けがあることも?

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    近づいたり、殴ったりすると、それぞれが動くからスゴい

試練や仲間の捜索など、何度も繰り返しプレイしたくなる!

おもしろいギミックの連続で、爽快アクションが楽しい『アストロボット』。ミスしても直前からすぐやり直せるし、難易度は比較的「易しめ」な印象だ。アクションゲームが苦手な人でもカジュアルにプレイできるのではないだろうか。

だが、全部が全部、“ヌルゲー”なわけではない。「試練」系のステージは一筋縄ではいかないことも多く、思わずコントローラーを握る手に力が入った。

惑星には、「◯の試練」や「△の試練」など、やや特殊なタイプが存在する。コース自体は短めで、うまくいけばサクッと1分程度でクリアできるステージだ。しかし、失敗すると最初からやり直しなうえ、苦手なコースではドツボにはまることもあった。

同じところで何度もミスを繰り返し、焦りやいらだちがさらなるミスにつながる。一度良くない流れに陥ると、悪いループが起きてしまう。ようやくクリアできたときには小さな達成感に包まれた。

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    個人的に苦戦した□の試練。「放水アヒル」で足場を洗いながら進む

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    あとちょっとで……焦って、あ~……

また、仲間「ボット」の捜索はけっこう骨が折れる。あちこちに散らばったボットは全部で300。意外な場所に隠れていることも多く、うっかり見逃して進んでしまうことが何度もあった。隠しステージへ続くルートもあるので、じっくりくまなく探索する必要があるだろう。

ちなみに、助けたボットは「ベースキャンプ」に集合する。過去のPlayStationタイトルに登場したかなりの数のキャラクターがカメオ出演するので、ファンならばテンションが上がること間違いなしだ。

ピースを集めて開放される施設には「ガチャガチャ」があり、桐生一馬ボットには「神室町一番街」と書かれたアーケード、心の怪盗団のジョーカーボットには「予告状」、オトモアイルーボットには「大タル爆弾」など、カメオ出演するボットたちの専用アイテムが手に入ることも。ベースキャンプにいるボットに変化が起きるので、眺めたり、殴ったりして楽しめるだろう。

そのほか、キャンプでは、ASTROのスキンやコントローラージェットのデザインも変更可能。仲間を一定数救出していれば、ボットたちが協力して道を切り拓いてくれる場所もあるので、キャンプ自体を探索するのも大事だ。

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    あちこちに散らばったボットを探し出そう

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    さまざまなタイトルのキャラクターの姿をしたカメオボットも多い

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    ガチャガチャで専用アイテムをゲットすることも

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    ベースキャンプで睨みをきかせる堂島の龍ボット

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    仲間のボットが増えると、ベースキャンプで行ける場所が増える

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    ASTROのスキン変更も可能

懸念点は、一直線に進めば、5~6時間でゲームクリアできるボリュームだ。価格が7,980円と、いわゆるゲーム用語での“フルプライス”のため、物足りなさを感じるプレイヤーもいるだろう。このあたりは賛否両論ある気がする。

個人的にも意外とあっという間に終わってしまった印象があった。だが、これが倍の160ステージに増えたなら、いくらさまざまなギミックで新鮮さを提供してくれるとはいえ、飽きてしまったかもしれない。ハプティクスの高密度な設定も、このボリュームだからこそ実現できたのではないだろうか。

また、スピードラン的なタイムアタック目的でないならば、急いでクリアするゲームでもない。プレイする際はぜひ、どんなハプティクスの違いがあるのか、仲間のボットたちはどこにいるのか、じっくり足元を噛み締めながら一歩一歩進んでほしいと思う。

もちろん、ゲーム全体の完成度は文句なし。「DualSense」のポテンシャルを最大限に引き出しつつも、いたるところに遊びを散りばめた『アストロボット』は、間違いなく、プレイする価値のあるタイトルと言える。2024年後半には無料のDLCをリリース予定なので、こちらも期待したいところだ。

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