Googleの新型スマートフォン「Pixel 9」シリーズが8月22日から順次発売されます。
「Pixel 9」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro」「Pixel 9 Pro Fold」の4機種がラインナップされ、まず登場するのはPixel 9とPixel 9 Pro XLの2機種。Pixel 9 ProとPixel 9 Pro Foldは追って9月4日に発売予定となります。
今回は、8月22日発売の「Pixel 9」「Pixel 9 Pro XL」の2機種を事前に試用する機会を得たので、ファーストインプレッションをお届けします。
6.3インチの「Pixel 9」と6.8インチの「Pixel 9 Pro XL」
シリーズ4機種のうち、唯一“Pro”が付かない「Pixel 9」は基本となるスタンダードモデル。「Pixel 9 Pro XL」は、カメラ構成やメモリ容量、外装の仕上げなどが異なる上位モデルの大画面版という位置付けです。
画面サイズはPixel 9が6.3インチ、Pixel 9 Pro XLが6.8インチ。先代のPixel 8は6.2インチ、Pixel 8 Proは6.7インチなので、画面サイズでいえばどちらも0.1インチ拡大されました。
後日発売されるPixel 9 ProはPixel 9と同じ6.3インチで、サイズとバッテリー容量を除いた仕様はPro XLと同一。ProとPro XLは純粋にサイズの好みで選べるバリエーションと考えて良いでしょう。
Pixel 9(とPixel 9 Pro)は本体サイズも順当に拡大されていますが、Pixel 9 Pro XLに関しては小ぶりな2機種よりも若干ベゼルが細いおかげか、実質的な前モデルにあたるPixel 8 Proとほぼ変わらない本体サイズをキープできています。
外装のデザインは、背面ガラスパネルもメタルフレームもフラットな形状に変更。最近は各社ともにこのような形状が多いので「よくあるスマホの形」になり個性が薄れたかと思いきや、Pixel 6から続く「カメラバー」が今回も継続採用され、ひと目でPixelとわかる象徴になっています。
本体形状そのものはシリーズ共通で統一感を持たせつつ、ベースモデルとPro/Pro XLで仕上げや質感を変えることで差別化。Pixel 9はサテン仕上げのメタルフレームにポリッシュ仕上げの背面ガラス、Pro/Pro XLはポリッシュ仕上げのメタルフレームにマット加工の背面ガラスと対照的な組み合わせです。ガラス部分は前面・背面ともにCorningの新世代強化ガラス「Gorilla Class Victus 2」が採用されています。
カラーバリエーションにも違いがあり、共通となるObsidian(黒)とPorcelain(白)の2色のほかに、Pixel 9はWintergreen(明るい緑)とPeony(ピンク)、Pro/Pro XLはRose Quartz(彩度抑えめのピンク)とHazel(グレー)を用意。ポップなカラーリングのPixel 9と高級感のある落ち着いたカラーリングのPro/Pro XLといった雰囲気です。
独自SoC「Tensor G4」を搭載、Pro系はメモリやディスプレイに違いあり
性能について確認しておくと、Google独自のカスタムチップ「Tensor G4」を搭載するのはどちらも同じ。メモリはPixel 9が12GB、Pro/Pro XLが16GBということで、AI関連機能の強化を目的に先代より4GBずつ増やされています。
過去製品の試用時と同様に、評価機材では発売日まではベンチマークアプリをインストールできないとみられる挙動でしたので、処理性能については後日あらためて紹介できればと思います。
バッテリー容量はPixel 9/9 Proが4,700mAh(Pixel 8は4,575mAh)、Pixel 9 Pro XLが5,060mAh(Pixel 8 Proは5,050mAh)。急速充電はPixel 9/9 Proが最大27W、Pixel 9 Pro XLは最大37Wとなります。ワイヤレス充電およびバッテリーシェアはどちらの機種でも可能です。
ベースモデルとPro系の性能差は少なく、メモリ容量に関してはPixel 9でも12GBと十分多いので違いを感じにくいかもしれません。比較的わかりやすかったのはディスプレイの違いで、Google独自の呼称では、Pixel 9は「Actuaディスプレイ」、Pro/Pro XLは「Super Actuaディスプレイ」とされておりグレードが異なります。Pro/Pro XLのほうが解像度が高く、数百ニトの差ですが最大輝度も高いというスペック上の差もさることながら、じっくり見比べてみると発色・色再現性でPro系が一段優れていると感じました。
少し話がそれますが、仕様面で惜しい点としてPixel 9 Pro/Pro XLの日本版では5Gのミリ波対応が省略されています(先代のPixel 8 Proではn257に対応)。もちろん、国内キャリア各社のエリア整備状況を考えると実際には使える場所が極めて限られるので不要という判断も無理はありません。
ただ、最近の携帯業界を巡る総務省周りの動向としては「ミリ波対応端末に限り、普及促進のために割引規制の緩和を認めてはどうか」という案が現実味を帯びてきているので、販売戦略まで考慮すると、このタイミングでミリ波対応に見切りをつけてしまったのは若干間が悪い印象も受けます。
カメラは望遠を除けば、ベースモデルでもPro XLと同等
Pixel 9は約5,000万画素 1/1.31インチ F1.68(広角)+約4,800万画素 1/2.55インチ F1.7(超広角)のデュアルカメラ、Pro/Pro XLはこれに約4,800万画素 1/2.55インチ F2.8の望遠カメラ(5倍相当)を加えたトリプルカメラを備えます。
つまり望遠カメラを除けば、Pro系でない普通のPixel 9を選んでも同性能のカメラというわけです。実のところ、Pro系でも望遠カメラが5倍のみと中間域が大きく空いている都合上、日常的に利用頻度の高い2倍~3倍あたりはデジタルズームでの対応になるため、よほど遠くのものを撮る機会が多い人でなければ望遠なしのPixel 9を選んでもがっかりすることは少ないのではないでしょうか。
また、Pixel 9シリーズと同じようなラインナップ構成の競合各社の場合、上位モデルのなかでもサイズ違いでカメラ性能にも差を付けている製品が多いなか、Pixel 9 ProはXLでなく小さい方を選んでも損をしないのは良いところです。
以下の作例はPixel 9 Proで撮影したものです。試用期間中が荒天続きだったこともあり作例が少なく恐縮ですが、近日中にカメラ編をお届けする予定です。
新機能は今後の上陸に期待
続いては新機能の紹介……と行きたいところですが、日本語環境で発売時点ですぐに体験できるものはそう多くなく、現段階ではあまり代わり映えしないかもしれない、というのが率直な感想です。
Pixel 9シリーズの機能面で最も力が入っているのはやはりGeminiを核としたAI関連機能であり、NPU重視だとされるTensor G4の設計や先述のメモリ強化などもそれを念頭に置いた仕様です。ただ、やはり自然言語処理に絡む部分などはどうしても各国の言語・文化にあわせたローカライズに手間がかかりますから、日本で新機能を体験できるのはしばらく先になってしまう部分が多いです。
未提供の主な新機能としては、音声対話型の「Gemini Live」(※英語設定にすれば日本での使用自体は可能)、メモ代わりに撮り貯めておいたスクリーンショットを自動分類・分析して質問に答えてくれる「Pixel Screenshots」、Tensor G4のオンデバイス処理とクラウド処理を組み合わせて実行する画像生成アプリ「Pixel Studio」などがあります。また、AI関連ではありませんが、米国のみ先行して衛星SOS機能が提供されます。
発売から7年間もアップデートが続くソフトウェアサポートの長さもPixelの魅力ですから、新機能がひとつひとつ日本にも順次上陸するのを待ちつつ、じっくりと進化を味わうのも悪くないでしょう。