高速道路の通行料金が自動的に支払える「ETC」。国土交通省の「ETCの利用状況」によると、その利用率は94.3%(2023年8月時点)にもなります。これほど普及したETCの技術を使った「ETCX」というサービスを知っていますか?

ETCXは、高速道路以外の施設で、ETCの技術を活用して料金の支払いなどができる「ETC多目的利用サービス」になります。どんなサービスなのか体験してきました。

  • ETCXサービスの看板(アネスト岩田 ターンパイク箱根)

どうやって支払う?「ETCX」の仕組みを解説

ETCXは2021年4月よりサービス開始。高速道路のETCは、情報処理装置が各レーンに設置されているのに対して、ETCXはネットワークでETCの情報処理装置に接続する「ネットワーク型ETC」というサービスになります。そのため、通信に少し時間がかかります。その一方で、ETCに比べて導入コストや運用コストが低く済むので、駐車場やドライブスルーなどの民間施設での利用が想定されています。

ETCXとETCではサービスが異なるものの、決済の手軽さは同じ。車内にいながらハンドルから手を離すことなく、キャッシュレス決済できます。施設に取り付けてあるアンテナが車体のフロントガラスなどに貼り付けたETCのアンテナと通信することで、ETCカードに紐付くクレジットカードで決済する仕組みです。

  • フロントガラスのETCのアンテナ

  • ETCカードを車載器に挿入して利用する

ETCXのサービスを利用するには、事前に会員登録が必要となります。利用しているETCカードと、それに紐付くクレジットカードの番号を登録します。なお、登録料や年会費などは無料です。

有料道路「アネスト岩田 ターンパイク箱根」でETCXを体験

今回、伊豆・箱根の玄関口となる有料道路「アネスト岩田 ターンパイク箱根」と、湯河原から熱海への海岸線の有料道路「熱海ビーチライン」でETCXのサービスを体験しました。

  • アネスト岩田 ターンパイク箱根の小田原料金所

アネスト岩田 ターンパイク箱根では2022年3月より、箱根小田原本線でETCXのサービスを開始しました。それまでは現金払いのみで、料金所でスタッフが現金を受け取るスタイルでした。それが、コロナ禍で非接触の対応が求められ、「もともと非接触の支払いにシフトしたいという希望はありましたが、その対応が加速しました」と企画・営業部長の坂部努さんは振り返ります。

  • 企画・営業部長の坂部努さん(右)と、施設管理部 料金収受課課長の新井和彦さん(左)

ETCは徐行で料金所を通り抜けることができますが、ETCXの場合は通信が必要になるため、一旦停止する必要があります。とはいえ、実際に体験してみると、その時間はごくわずかの印象でした。

決済の仕組みは、料金所に近づくと車両検知器が動作して、上部に取り付けられたアンテナが車両のETC情報を読み取り、会員登録の有無を通信して照会。会員であることが確認できると料金を決済し、その決済画面をスタッフが確認後、通過しても良いという合図をドライバーに出します。その後、メールで決済完了のお知らせが届きます。

  • 料金所の前に設置された車両検知器

  • 料金所の上に取り付けられたアンテナ(正方形のもの)

  • ETCXの会員登録の有無を照会中

  • タブレット画面で、ETCXでの決済完了を確認

  • ETCXの会員でない場合は「非会員」であることが表示される

  • 決済完了後、ドライバーに合図して通過を促す

決済までの過程を1つ1つ説明すると非常に時間がかかりそうですが、料金所を通過する時間はほんの数秒。特に、二輪車のライダーは手袋を脱ぎ、財布からお金を取り出して支払うのに時間がかかるため、ETCXにすることで決済の時間が短縮できます。

取材時、ETCX対応のライダーとそうでないライダーが料金所を通過したのですが、ETCX対応のライダーが実にスムーズに通過したのに対して、非対応のライダーは料金所を通過するのにやや時間がかかっていました。一度利用すればその便利さを実感できるため、「利用者は二輪車の方が先行して増えています」と、施設管理部 料金収受課課長の新井和彦さんはいいます。

アネスト岩田 ターンパイク箱根では、ETCXの利用率を上げる取り組みを実施しています。今後の展望について、坂部さんは「5時30分~22時30分の営業終了後に現金をカウントするのですが、ETCXへの移行が進むことで作業時間を短縮できます。より多くの人に利用してもらうことで、料金所の職員が2人必要のところ1人で対応可能に。最終的には管理棟で確認するスタイルにできればいいなと思っています」と語ってくれました。

「熱海ビーチライン」ではETCXによる割引を提供

2023年4月にETCXサービスを導入したのが熱海ビーチラインです。熱海ビーチラインは、相模湾の海沿いを走れる爽快なドライブコースで、熱海で働く人の生活道路としても機能しています。

  • 熱海ビーチラインの湯河原側の出入口

「24時間営業なので、将来的に人材確保の問題が深刻になってきます。ETCXは、付近の伊豆中央道や修善寺道路、アネスト岩田 ターンパイク箱根などで導入されていたので、それらも参考に良いタイミングで導入できたと思っています」と業務マネージャの長谷川一博さん。

  • 業務マネージャの長谷川一博さん

生活道路を兼ねることから頻繁に利用する人が多いため、熱海ビーチラインではお得な回数券を販売。この回数券と同等の割引を、ETCXでも実現できたのが大きかったといいます。回数券には11回券(2回分無料)、35回券(10回分無料)、60回券(21回分無料)、100回券(40回分無料)の4種類があり、回数が多くなるほどお得になります。

ETCXでも、この回数券と同等の割引率が適用される「ビーチラインX割引」を提供。乗車回数は自動で累積してカウントされ、100回利用することで40回分が割引になります。ETCXの最終利用日から1年または総利用100回に達するとリセットされ、改めて1回目から通行回数をカウントする仕組みです。

「回数券の場合、軽自動車・普通自動車では12,500円の35回券を利用される方が多いです。その場合、3冊利用して105回利用したとしても30回分しか割引にならないんですね。でも、ETCXならば100回利用すると40回分が割引になるので、10回分も余分にお得になります。回数券を購入する手間もなく自動で累積されるのも便利です」と長谷川さん。

そのため、熱海ビーチラインの決済画面には、過去の数件の履歴が表示されるようになっています。その理由は、家族がETCXに登録したことを知らずに、回数券で通過する人がいるため。回数券の受け取りには2秒かからないので、ETC情報を読み取って照合している間に通過してしまうことがあるのだそう。そういった場合にすぐに取り消ししやすいような画面表示になっています。

  • 料金所内のタブレット画面

  • 待機中の画面で直前の履歴情報を確認できる

  • 料金所の前に設置された車両検知器

  • 料金所の上に取り付けられたアンテナ(正方形のもの)

「近ごろの新車には、進化版のETC2.0が搭載されていて、反応速度も速くなっているので、二重払いのケースは今後減少していくと思います。また、回数券を購入する人にはETCXの利便性について説明しているので、徐々に切り替えも進んでいます」といいます。

なお、2021年7月からETCXのサービスを開始した伊豆中央道の料金所では、ドライバーから見える位置に案内板を設置。より決済完了が分かりやすくなっています。

  • 伊豆中央道の江間料金所

  • 伊豆中央道では案内板を設置

カーライフがもっと便利になるETCXの今後の展開とは?

このように、有料道路を中心に広がっているETCXサービスですが、駐車場やガソリンスタンド、ごみ処理施設などの環境施設でもサービスを展開しています。例えば、八王子のごみ処理施設「戸吹クリーンセンター」では、粗大ごみなどを乗せた車の重量を計量し、施設内で粗大ごみを荷下ろしした後に再度計量し、手数料を計算。ETCXによって決済しているのだそう。過去には、カーフェリーやドライブスルーなどで実証実験も行っています。

「ETCの車載器には、車のナンバーや車体のサイズ、重量などが登録されています。ETCXでは、これらの情報を一緒に取得できるので、有料道路はもちろん、カーフェリーでも料金がすぐに提示できます。この利便性をいろいろなシーンで使えるのではないかと、提案活動をしているところです」と、ETCXの運営会社であるETCソリューションズの取締役 兼 業務企画部・システム企画部担当の斎藤正さん。

ETCXは車に乗ったまま決済できるので、マイカーを便利な“おサイフカー”に変貌させることができます。今後、サービスが拡大していろいろな施設で使えるようになることで、カーライフがもっと便利になりそうです。