ビジネスでもプライベートでも、モバイルノートPCはスマートフォンと変わらぬほど常に携行するデバイス。だからこそプレミアムなモデルが求められる。デルのXPS 13はスタイリッシュなスリムモバイルだが、今回はさらに上位グレードのXPS 13 Plusを試していこう。プレミアムデザインのスリム・軽量モバイルでありつつ、パフォーマンスも妥協をしない。所有欲を満たしてくれる上質なモデルだ。

  • 「XPS 13 Plus」を試す - こんなにスリムで12コア、デルXPSシリーズの上級モデル

    今回は「XPS 13 Plus」をレビュー

美しいデザイン、しかも幅30cm以下のモバイルは貴重

デルのXPSノートPCにはモバイルだけでなくデスクトップ代替モデルもある。13インチクラスのモバイルに絞ると3モデル。XPS 13とXPS 13 Plus、XPS 13 2-in-1だ。XPS 13とXPS 13 Plusはクラムシェルモデルで下位/上位モデルの位置づけで、XPS 13 2-in-1は2-in-1スタイルを提案するモデルとなっている。

XPS 13 PlusとXPS 13は一見すると見た目はよく似ている。現在販売中のモデル見るとXPS 13が第12世代Core、XPS 13 Plusが第13世代Coreと区別されており、XPS 13 Plusが上位という点が分かりやすい。ただし、実はデザインも両モデルで異なる。

XPS 13 Plusはビジネスプレミアム向けをうたうモデル。スリムさを追求したボディは最厚部で15.28mm。シルバーは膨張色なのだが非常にスリムに見える。角を落として丸みを持たせており、かばんへの収まりもよい。奥行きと幅は199.04×295.30mm。昨今はどんなモバイルノートPCも狭額縁ベゼルを採用しているが、デルのモバイルノートPCはとくに左右のベゼル幅が狭いパネル設計を採用している。幅が30cmを切ると、これを収めるカバンの選択肢が増え、とくに小さなカバンで持ち運びたい方はここをポイントにしてもよいくらいだ。

  • 最厚部で15.28mmとスリム。幅も295.30mmとコンパクトさを実感できるサイズ感。今回のモデルは本体カラーがプラチナシルバー。グラファイトカラーも選べる

重量は1.23kg(カタログ値)で、実測は1.215kgだった。1kgを切るモデルもある中では最軽量クラスではないが十分に軽量と言えるだろう。一方で剛性や質感は軽さとの両立が難しいし、それを突き詰めれば高価になりがちだ。プレミアム・モバイルノートPCに求められる基準を満たしつつ、剛性・質感も犠牲にしないバランスと言えるだろう。

  • 本体重量は実測で1.215kg。数値としては十分に軽量で、カバンに収めれば軽い。ただ、金属質感や密度感からか、そのまま手に持つと思ったよりは重く感じる

ディスプレイサイズは13.4型。今回お借りしたモデルは3,840×2,400ドット表示だが、標準構成ではここが1,920×1,200ドットとなる。ほかにも3,456×2,160ドットパネルもあるが、いずれにせよ16:10アスペクトだ。通常よりも縦の解像度が高いため、文書作成などで前後の内容を把握しやすい。また、今回はタッチパネル対応なので光沢パネルに反射防止加工を施したものとなる。反射防止とは言え非光沢と比べると反射は気になった。輝度は500ニト。

  • ディスプレイは13.4インチ。BTOカスタマイズで解像度やパネル駆動方式、タッチの有無などを選べるが共通して16:10アスペクト

  • ディスプレイパネルの最大開度

  • 上部ベゼル内にはWebカメラ(720p)、赤外線カメラ(Windows Hello対応)も搭載。目立たないがほかにもカメラのステータスライト、赤外線エミッタ、環境証明センサーなども搭載されている

  • 本体パネル上部の左右にある穴がマイク

フラットに詰め込まれた感のあるキーボードはデザイン優先の印象を受ける。ただ、少しだけだがキーとキーの間のスペースはあるので、タイピング時のキーの判別は実用上でも可能だ。ほか、キーボードの最上段の、通常ならESC、F1~F12……のある列がタッチ式(通電時LEDで浮かび上がる)となっている。ここはデフォルトでは音声やバックライト等の制御キーとなっているが、Fnキーを押せばF1~F12に切り換わる。タッチについては慣れもあるが、こうしたキーの使用頻度が高い方だとタッチは物足りない印象だろうか。ただし1列なくなっただけでも見た目は非常にスッキリしている。キーボードの右上のなにも刻印のない部分は電源ボタン(兼指紋認証センサー)となっている。

  • デザインに目を奪われがちなキーボードだが、慣れれば一般的なキーボードと同様にタイプできる。日本語配列のほか英語配列も選べる

タッチパッドはパームレストとの段差がないシームレスデザインを採用している。どこからどこまでがタッチパッドなのか初見では戸惑うと思われるが、実際に操作してみればそれは杞憂だった。慣れで解決する範囲内であり、実際のところ、筆者の場合は5分も経たぬうちに、ごく普通のタッチパッド同様に操作できるようになった。改めて思えば、段差があるとそこにゴミや汚れもたまりがちだった。シームレスなら清掃もかんたんだ。

ここまで、すでに何度も写真で出しているが、天板部も非常にシンプル。側面もインターフェース部分はフラットでシンプル。ヒンジ寄りの後部が斜めに切り取られてデザインされているところがXPSらしいと言えるだろうか。そしてなにより特徴的なのがインターフェースだ。左右、どちらもUSB Type-Cが1基あるのみ。このUSB Type-C端子だが、通信速度はUSB4、Thunderbolt 4対応でDisplayPort Altanate Modeにも対応しておりディスプレイ出力に対応、USB Power Delivery(USB PD)にも対応している。

  • 天板、底面もシンプル。いやみのないデザインなので、プレミアムであってもどのシーンにも馴染んでくれる

  • 左右のインターフェースは各1ポートのUSB Type-Cのみ

ただし多機能とはいえ2ポートのみで、しかもともにUSB Type-Cだ。まず、ACアダプタは当然USB PD対応のものが付属する。左右どちらもUSB PD対応なので利用環境に合わせて自由度は高い。ビデオ会議などでも利用するヘッドセットやマイクなどオーディオ入出力は、USB Type-Cから変換するアダプタが付属する。また、現状では個人レベルならUSB Tupe-Cに統一することも可能だが、社内あるいは取引先とのデータのやりとりでは従来のUSB Type-Aを用いることも多いためか、USB Type-C→Type-A変換アダプタも付属する。おそらくはこれらのアダプタを日常から携行することになるだろう。

  • USB Type-C→オーディオ変換アダプタ、USB Type-C→Type-A変換アダプタが付属する

また、検証作業では主にデータ転送で複数のUSB機器を接続する必要があったため、USB Type-Cハブを利用した。実際、本製品を運用する際もUSB Type-Cハブがあったほうがよいだろう。本製品はモバイルの機会が比較的多い方向きの製品だが、自宅および社内での運用時、USB Type-Cハブ(それもUSB PD対応のもの)があれば2ポートのみ、時にUSB Type-Aを使用する場合でも不便がない。

ACアダプタは60W対応のものが付属する。USB Type-Cケーブルは着脱できる。コンセント側はメガネプラグではなく3極タイプ。重量はACアダプタのみで95gだった。これは自宅や社内に置く用途として、モバイルには別途、60W(以上)対応のUSB PD充電器を用意するとよいだろう。

  • 付属のACアダプタ。比較的コンパクトではあるが、ケーブルなども含めるとノートPC付属品の域を出ないので、モバイル用にはより小型のものを用意したほうがよい

第13世代Coreを中心に高性能スペックを凝縮

内部スペックに移ろう。まずCPUはCore i7-1360P。標準構成ではここがCore i5-1340Pとなる。どちらもPコア4基、Eコア8基の12コア16スレッド対応だが、Core i7-1360Pは最大5GHz、Core i5-1340Pは最大4.6GHzで、キャッシュ容量も18MBと12MBといった具合で異なる。いずれにせよ第13世代Coreで、消費電力はモバイル向けの低電力タイプだが、マルチスレッド性能に優れている。また、グラフィックス機能はCPUに統合されたIris Xe Graphicsを利用する。

メモリはLPDDR5-6000で16GB。オンボードなので増設はできないが、BTOカスタマイズでは32GBを選ぶことも可能だ。

ストレージはNVMe対応のM.2 SSDで容量は512GBだった。これは標準構成と同じ。BTOカスタマイズでは1TB、2TBが選択できる。デルの製品なので内部メンテナンスのためのサービスマニュアルも用意されているが、オーダー時に必要な容量を選んでおくのがよいだろう。転送速度はシーケンシャルリードが7GB/sクラス、同ライトが5GB/sクラスと高速だった。これだけ高速だと通常の操作、たとえばアプリケーションを開く、エクスプローラを開いてコピーや移動の操作をするといった際にも好レスポンスだった。

ほか、ネットワークについてはWi-Fi 6E対応で、チップはIntelのKiller Wi-Fi 6E 1675を採用している。もちろんBluetoothも内蔵だ。OSについてはWindows 11 Home。ただしWindows 11 Professionalの選択肢もあり、日本語/英語も選べる。また、ダウングレード権を行使したWindows 10 Professionalも用意されている。

このスリムさで12コアのパフォーマンス

ではXPS 13 Plusのパフォーマンスをいくつかのベンチマークを用いて計測してみよう。

まずはCINEBENCH R23。Multi Coreは11,215pts、Single Coreは1,735ptだった。モバイル向けの低電圧版CPUとしては1万点を超えている点に注目だ。

  • CINEBENCH R23

PCMark 10ではホーム想定のEssentialsが10,811ポイント、ビジネス想定のProductivityが7,470ポイント、コンテンツ制作想定のDigital Content Creationが7,226ポイントで、Overallが5,991ポイントだった。

  • PCMark 10

3Dグラフィックスに関しては統合GPUを利用するビジネスモバイルなのであまり参考にならないが、ごく軽量のゲームならば動くといった感じだ。たとえばファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマークなどもフルHDで標準品質、HDなら高品質で平均60fpsをクリアした。

  • ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ ベンチマーク

  • 3DMark

バッテリー駆動時間については、今回のデータは参考程度としていただきたい。ユーティリティのMy Dellから温度管理を「最適化」、OS側の「電源モード」を「トップクラスの電力効率」としてPCMark 10のバッテリーテスト(Modern Officeシナリオ)を実行したが、結果は3時間25分ほどだった。参考程度としたのは、スペックから推定していた時間に比べ、だいぶ物足りなかったからだ。バッテリー容量が55Whというのがやや少ない印象もあるが、同程度の容量のモバイルノートPCは多い。スペック上ではCore i5とPBP/MTP値が同じCore i7とはいえ高クロックの分実消費電力が多いとは思われるし、パネルの解像度が高い(消費電力が大きい)点も影響していると思われるが、それでも3時間半程度というのが正しいデータなのか確証が持てなかった。テストのエラーの可能性もある。ただ、全体的にはパフォーマンス推しのモデルなので、モバイル中でもここぞという時、必要なパフォーマンス・処理のレスポンスを発揮してくれるモデルと捉えるのことはできるだろう。

現代のスタイリッシュモバイルを象徴するXPS 13 Plus

デルXPS 13 Plusは、スリム・軽量かつプレミアム感あるデザインで、パフォーマンスを重視するモバイルユーザーに最適なモデルだ。この薄さのモバイルノートPCではPBP/MTPがより低い「U SKU」のCPUを搭載するモデルが多いが、それらはCore i7でもPコア2基Eコア8基とコア数も抑えられている。一方、本製品は「P SKU」でPコア4基Eコア8基と、とくに高性能なPコア数が多いため一つ上のパフォーマンスが得られる。先にも書いたとおり、モバイルでも高パフォーマンスを求めるユーザー向きだ。

一方でインターフェースがUSB Type-C×2ポートのみという点からは、モバイルユーザーの中でもモバイルの比率が高いユーザー向きと言えるだろう。自宅や社内にはUSB Type-Cハブやドック類、モバイル時は変換アダプタのほかUSB PD充電器も用意したほうがよい。本製品とともに携行するデバイスも多いと思われるので、カバンの中のオーガナイザーなどモバイルノートPCの運用法が確率している方向きだろうか。スタイリッシュなスタイルを確立している方が使ってこそのスタイリッシュなモバイルノートPCでもあるだろう。