久々に開催されたインテルのアキバイベントは……雨!

2023年8月26日、ドスパラ秋葉原本店にて『「インテル×ASRock」最新インテル Arc グラフィックス紹介』イベントが開催されました。当日は12/15時の2回行われましたが、12時の会に参加してきたので内容を紹介いたします。

遅れそう! と慌てて会場に到着しまして、なんとか滑り込みましたが……どうも雲もようがおかしい。開始数分前から雨が降り出しましてイベント終了直前までずっと降っていました。

本来は後ろにも見えるように大型モニターも用意されていたのですが、雨のために軒下に入るため、全員が大型モニターを見るのは少し大変でした。

  • イベント開始10分ほど前の様子。この時は道路に軽くはみ出していましたが、スタート直前に雨となり、最後尾がギリギリ軒下になる程度に左右に広がった状態になりました

  • 本日のデモ機材。ちなみにこのテーブルも下げてなるべく軒下に人が入るように移動しています

さて、今回のプレゼンはまずインテルの太田仁彦氏のパートから始まり、大きく3つのお題について語られました。

  • Arcの説明はインテル株式会社 太田 仁彦氏が実施

  • 本日のお題。結構盛りだくさんです

まず「発売当初、あまり性能が出ないとご心配をおかけいたしました」とドライバーのアップデートを説明。Intel Arc発売以降、多数のドライバアップデートが行われており、性能が大幅に向上していたことについて触れています。

機械学習を使った超解像度技術「Intel XeSS」も70以上のタイトルでサポートされ、ドライバアップデートによる性能向上も図られています。

  • Intel Arc登場以来、ドライバはすでに30バージョンと意欲的に更新。タイトルサポートが57、超解像度技術のXeSS対応も75以上、継続的な性能向上が行われています

DX9タイトルでは最大77%、DX11タイトルでは最高28%の性能向上が図られているだけでなく、FPSタイトルではフレーム描画速度の遅延が20%縮まったことで、スムーズな表示になったと紹介。

速度向上の著しいものはと見てみると、『CS:GO』や『Apex Legends』と描画速度命なタイトルでこれは期待できそう。「インテルは真面目な会社なので、方向性が定まれば着実にアップデートをおこなっていく」と将来に期待を持たせました。

  • DX9タイトルの性能向上はこのようになっていまして、CS:GOでは77%アップ

  • DX11タイトルでは早くなっただけでなく、フレーム描画のブレも少なくスムーズに

  • DX11タイトルでは性能向上がないタイトルもありますが、Overwatch2、CS:2、Apex LegendsのようなFPS命なタイトルでは性能アップ

ASRockの原口有司氏はこれに対し「インテルは内蔵グラフィックスでずっとドライバを提供している。また、他社のGPUを使うとグラフィックスドライバが同居しているが、それによるトラブルもほとんどない」と安定性に関してコメントしていました。

ちなみにインテルはハードウェア会社というイメージが強いですが、ソフトウェア開発にも非常に強い会社で、「インテルのCコンパイラの最適化が進んだことでライバルメーカーの製品も速くなった」という逸話があるぐらいです。

また、GPU関係のツールとして「Intel PresentMon Betaが登場したことを紹介。8月18日に最初のリリースとなる、Beta v0.5が登場したばかりです。

これはGPUが現在どのように動作しているか表示するツールです。特に今GPUがどのぐらい忙しいか表示する「GPU BUSY」は、手持ちのシステムのCPUとGPUのバランスチェックによさそう。

見どころなのは、なんと他社製GPU製品でも使える点。さらにオープンソースなので、他社のアプリケーションにも統合可能だそうです。

  • Intel謹製のGPUモニタリングツール「Intel PresentMon」はBeta版が登場。GPUの状態を細かくチェックでき、Intel製GPU以外にも適用可能

  • このような形で表示されます

Intel GPUが搭載するQSVの高速なAV1トランスコード

2番目に説明したのは、高い圧縮効率と高いクオリティを誇り、採用が進むビデオエンコード方式「AV1」に関してです。

太田氏は、「現在インターネットに流れる帯域の80%が動画関係である」と、動画がインターネットの帯域幅全体を圧迫している現状を紹介。これを解決し、かつロイヤリティフリーとしてAlliance for Open Media(AOMedia)が開発したのがAV1(AOMedia Video 1)です。

H.264の半分、H.265の20%減のファイルサイズに圧縮される一方で画質は高く、コンテンツサイズを下げる方法としては非常に有力な規格ですが、ソフトウェアエンコードが致命的に高負荷(処理が遅くなる)という欠点があります。

  • インターネット帯域の80%は動画関連。ギガを減らしくないならスマホで動画を見るな?

  • より圧縮率が高く、品質が高いエンコード方式としてAlliance for Open Mediaが開発したのがAV1です。大欠点はソフトエンコーダーが劇遅な事

  • Intel ArcはすべてAV1のハードウェアエンコーダーを持っています。配信環境や制作ソフトウェアもすでに対応

インテルはAV1への対応に関してかなり積極的で、Arc 700シリーズだけではなく300シリーズでもAV1をサポートしています(Arc 700シリーズはAV1のエンコードを同時に2つこなせますが、これが活用できるかどうかはソフト次第という回答でした。コンシューマー向けのArc GraphicsだけでなくIntel Data Center GPU Flex 170(参考記事のように、マルチストリームはこのあたりのデータセンター向け製品で使うのがメインなのでしょう。

  • 75秒の動画をAV1にトランスコードするデモが行われました

  • 様子を覗き込むASRock原口氏

  • 12時の回ではエンコードになぜか時間がかかったと太田氏がコメントしていましたが、それでも実時間よりも短時間。事前検証では図のような結果だったそうです

  • AV1のハードウェアエンコーダーは上位製品のA750/770だけでなく、エントリ製品のA380でもサポートされているのが魅力です

また、マニアックなストリーム配信としてIntel Deep LinkのStream assistを使う方法を紹介。GPU内蔵のCPUに外付けGPUを搭載しているパソコンの場合、高いGPU性能が求められるゲーム処理は外付けGPUを使用し、比較的処理の軽い動画エンコードを内蔵グラフィックスで行う事が可能です。

ゲーム配信でも、外付けGPUの性能を犠牲にすることなく動画のエンコードを分散処理できます。実際にTwitchでストリートファイター6を動作させながら配信をおこなっていました。

  • CPUとGPUを協調させて動作するのがIntel Deep Linkですが、今回はその中でもStream Assistを紹介していました。この機能はラップトップでもデスクトップでも利用できます

  • デモはStreetFighter 6を外付けGPUで動かしながら、CPUの内蔵グラフィックスでストリーミング用のエンコードを行いました

  • ストリーミング配信用環境(スライドとは異なり、ノートパソコンでデモを行っていました)

  • 大型モニターではTwitchのコンソールで実際に配信しています(視聴者:0ですが)

画面右側、奥のの大型モニターがTwitchのコンソールで、配信ラグがあるので左のノートパソコンよりも遅れて表示しているのがわかります

GPU+OpenVINOで生成AIも高速化

最後に生成AIにもIntel Arcが使えることについて紹介しました紹介。生成AIというとChatGPTが話題ですが、自宅でOpenAI GPT-4を動かすことはできません。一方、参加者の中には「自宅でStable Diffusion(オープンソースAIで画像生成をおこなうアプリケーション)を動かしている」という方がいらっしゃいました。

太田氏はOpenVINO上でIntel GPUを使用しStable Diffusionを高速に動かすというデモを実施(参考記事)。CPUでは1分以上かかる表示が数秒で表示されました。

プレゼンでは細かい内容を説明していませんでしたが、Stable DiffusionがOpenVINOの中間形式で出力して、OpenVINOの処理をGPUが実行する設定によって高速化するようです。

デモを眺めてみると確かに高速ですが、思い返すと昨年のInnovation 2022(参考記事)ではGAUDI 2を使って、もっと高速に表示させていたような気がします

  • Stable DiffusionをGPUを使って高速表示

  • 実際の生成画面を撮影するのを忘れていたのですが、先のスライドの画像を生成するためのプロンプトがこれです

処理能力の差はあるとはいえ、基本的なコンポーネントはそろっており、お試しでArc 300シリーズを使ってみて、手ごたえを感じたら上位のArc 700シリーズに移行するのもありとのこと。原口氏は「Arcは他社のように『40シリーズでないと動かない』という事がない」とコメントしてました。

品質重視、そして落ちたレイテンシをクロックアップで対応!

最後に原口氏が、当日発売開始になった「ASRock A770 16GO」のアピールを行いました。型番からわかるように16GBメモリ製品ですが「パソコンでも言われているが、メモリを増設すると速度が落ちる、レイテンシが増える」とポジティブな側面ばかりではないと説明。

  • ASRockの原口 有司氏

GPU製品でも同様ですが、16GB製品は8GB製品よりもメモリをオーバークロックを実施し、さらなるパワーアップを行っているといいます。8GB、16GBどちらの製品もGPUクロックをリファレンスよりも速い2,200Mhzで動作させるのは共通ですが、8GB製品は16Gbpsのメモリクロックに対し、16GB製品は17.5Gbpsに増速させています。

  • Intel Arc A770 PHANTOM GAMING D 8GB OCのスペックシート

  • Intel Arc A770 PHANTOM GAMING D 16GB OCのスペックシート。メモリが増えているのは当然ですが、メモリクロックがさらに高速化されています

さらに「ヒートシンクに無酸素銅を使用し、ヒートパイプも他社の上位製品並みのグレードのものを使用。グリスもサーバー製品に使うものを使用して塗りなおしの必要なし」と質の高さをアピール。

ボードに関しても「Dr.MOSやプレミアムチョークでコイル鳴きを低減しているし、2ozの銅箔を使った高品位なものを搭載」、ヒートシンクとファンも「他社よりもピッチの狭いフィンと、フィンの抵抗に対応する特許のファン形状。さらに温度によってファンを止める0dBサイレントクーリングで、セミファンレス動作に耐えるようにあえてスリーブベアリングを採用」と、最近GPUが価格競争になっている中で品質重視の製品であることをアピールしていました。

  • リファレンスよりもオーバークロックされています

  • オーバークロックしても安定して動かすために品質は妥協なし、ということで基板の銅箔も厚く、チョークも高品位なもの。ヒートシンクも無酸素銅を使用し、ヒートパイプも高密度に配置。そして、グリスもサーバーに使用するグレードとコダワリ

  • ヒートシンクのフィン密度も高く、その抵抗に負けない特許ファン形状を採用。低温時はファンを止めるため、間欠回転に強いスリーブベアリングを採用とこの辺もコダワリを見せています

  • Intel Arc A770 PHANTOM GAMING D 16GB OCのドスパラ当日の価格は54,800円。こだわりの分少々お高めでした

最後に原口氏は、9月30日にも何かしらのイベントがあると予告していました。