2023年9月1日は、関東大震災からちょうど100年に当たる節目。ワークマンが8月30日に開催した2023年秋冬新製品発表会では、過酷な災害状況から脱出する体験シミュレーション「過酷道 脱出サバイバル」が設置されていました。体験してきた様子をお届けします。

  • ワークマン2023年秋冬新製品発表会で設置されていた「過酷道(かこくみち) 脱出サバイバル」 。災害で道路にがれきが散乱したり、道路が冠水したりする状況を簡易的に再現し、避難所までの脱出を図る体験コーナーだ

ワークマン製品は防災グッズではないものの、例えば耐切創の手袋や、突起物から足を守る踏抜防止インソールなど、職人やキャンプのプロが納得する機能性があり災害時にも役立てられる、という考えから、今回「過酷道 脱出サバイバル」の展示が行われました。

「過酷道 脱出サバイバル」は、災害で道路に電柱や自転車などが散乱したり、道路が冠水してがれきが流れてきたりしている過酷な災害状況を再現し、防災にも役立つワークマン商品を身につけて脱出を図る体験コーナー。体験にあたり、身につけた主な装備は下記です。

  • 防災リュック(ジョイントバックパック ファイナルエディション)
  • 足を守る靴(ネクストマンダムミドルカットセーフティまたはセーフティブーツ。別売の踏抜防止インソール内蔵)
  • 防水・耐水圧・透湿度機能付きのレインジャケット(BAG in レインジャケット)
  • レインパンツ(INAREMレインパンツ)
  • ヘッドライト(コンテックアクアヘッドライトPRO)、
  • 手袋(TAKUMI X2 耐切創天然ゴム背抜き手袋)
  • ヘルメット(ヘルメット スチロール入り)
  • ワークマンが防災対策に勧めるアイテムの一部

防災リュックの重さは一般的に男性15kg/女性10kgと言われており、飲料水や食料、簡易トイレ、防寒具、携帯ラジオ、救急セット、懐中電灯などの防災グッズが入っています。

今回の体験では5kgのリュックを背負ったのですが、それでも非常に重く「緊急時にこれを背負って逃げられるか……?」と不安になりました。実際に備えておく際には、自分で背負えるかどうかを踏まえ、中身を厳選する必要があると感じました。

  • 各種装備を身に着け過酷道に臨む。リュックはレインウェアの中に背負っているが、5kgでも歩くバランスを崩しそうなほど重かった

  • 防災リュックに入れておいた方がよいものと、災害時に起こる可能性のある傷病およびその対応ツールの例

  • 最後の耐切創の手袋を装着

  • いざ過酷道へ!

  • 最初の道は、災害で傘や自転車、ブロックなどが散乱した道 ※実際の災害時には、電柱の近くを通ることは感電の恐れがあるため避ける必要がある

  • 狭い道にゴツゴツした固いがれきが散乱していると想像以上に歩きにくい。自転車が飛ばされて道を塞いでいると、足を置くスペースも限られる

  • 2つ目の道は砂利にがれきが散乱した道。夜という設定なのか、足元が見えにくい暗さだ

  • 石や木の板を踏み越えて進む

  • 暗い道に散乱した木の板から釘が飛び出ていて危ない。実際の避難時にもこういった危険がありそうだ

  • 最後の道は豪雨で冠水した道路。左が水たまりのある悪路、右が膝下あたりまで冠水した道。雨を降らせる装置も設置されている

  • 完全に冠水した道を選んだ筆者(右)。道路の表面が見えないためその場に足を降ろしていいか迷い、浮いているがれきを踏むにもバランスに気をつける必要があった

今回の体験では、完全に冠水した道(画像の右側)を選んだ場合はシューズタイプの靴を、水たまりのある悪路(画像の左側)を選んだ場合はブーツタイプの靴を履くことが推奨されていました。

筆者は膝下近くまで冠水し、タイヤやがれきが流れている冠水した道を選びましたが、水の中を歩くような状況では地面が見えず、がれき越えようにもぐらつくため、確かに小回りが利いて水はけもよいスニーカータイプが適しているように感じました。冠水した状態ではブーツタイプの場合、足首周りを細かく動かせず、水の中ではバランスが取りにくかったり、ブーツ内に水が溜まってしまい足が動かしにくくなりそうです。

体験コーナー付近には、東日本大震災や西日本豪雨などでも活躍した段ボールベッド「暖段はこベッド」(Jパックス発)の展示もありました。8トンまでの重さに耐えられる設計で、避難が終わった後でも使い続ける人もいるといいます。

  • 東日本大震災をきっかけに開発された「暖段はこベッド」。東日本大震災の避難所では低体温症の人が多く発生したことから、断熱性のある段ボール製の簡易ベッドを開発したという。床から離れることで(ほこり吸引などによる)感染症の対策になり、床面からの冷気を遮断するため低体温症の対策にもなる。簡単に組み立てられるため大量生産も可能だ。現在では、段ボールの箱を組み合わせるという構造から収納力も高いベッドとして一般発売もされている

「暖段はこベッド」を発案・設計したJバックスは自治体や企業、団体が災害時などに協力しあう防災協定の取り組みを全国に広げていき、災害時に要請があれば段ボールベッドを避難所に展開する仕組みを作り上げているとのことでした(賛同を得られた段ボールメーカーには無償で図面を公開し、災害時は柔軟に供給できるようにしているといいます)。

最後に、ワークマンの担当者が注意点として挙げていたのが「機能性ウェアを着ていても万全ではない」ということ。

災害が起こってからの避難は危険であり、例えば余震がある中での避難は、切れた電線や壊れた電柱による感電のおそれがあったり、豪雨の中での避難は徒歩でも車での避難も危険です。このため「事前の避難経路の確認」と「早めの避難」が大事だと強調していました。