「ChatGPT」を開発・提供するOpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏が共同設立したWorldcoinが7月24日に「Worldcoinトークン(WLD)」を発行、プロジェクトが正式に始動した。デジタルIDと暗号資産へのアクセスを世界に広げる取り組みであり、ユニバーサル・ベーシックインカムを視野に入れた実験的な試みとしても注目を集めており、WLDは一時初値の2倍以上の3.58ドルまで跳ね上がった。

Worldcoinプロジェクトは以下の3つで構成される。

  • World ID:分散型のIDプロトコル
  • The Orb:虹彩認証イメージングデバイス
  • Worldcoinトークン(WLD):Ethereumの「ERC-20」に基づいて発行された暗号資産

2020年に設立されたWorldcoinは、最初のステップとしてアルゼンチン、チリ、インド、ケニア、ポルトガル、スペインといった国でOrbを使った虹彩スキャンを開始した。

  • The Orb

世界には法的なIDを持っていない、または持っていてもデジタル検証されない人が44億人を超える。言い換えると、世界の過半数がインターネット経済にアクセスできない。Worldcoinは虹彩スキャンを受けた人にWorld IDを付与する。それらの組み合わせによって、名前や電子メールといった個人データを共有することなく、Webサイトやモバイルアプリ、DAppsへのシームレスなサインインが可能になる。脆弱なパスワード、人権やプライバシーの問題が指摘される既存の生体認証に代わるデジタル認証になり得るとWorldcoinは主張している。そして、データ提供の対価として登録者に仮想通貨を発行する仕組みだ。3月にWorld IDとWorld ID SDKを発表したのに続いて、24日のWorldcoinトークンのリリースにより、全てが揃った。現段階でWorld ID登録者は約200万人。今後は夏から秋にかけて、東京を含む世界中の35以上の都市で利用可能なOrbの数を約1500ユニットに増やす予定だ。

高度な生成AIの登場が、コンテンツ作成、コミュニケーション、エンターテインメント、作業効率性の向上や意思決定のサポートなどに多くのメリットをもたらす一方で、AIによるコンテンツや情報発信の氾濫、ディープフェイクといった負の側面も増大している。ネット上で本物の人であることを証明する仕組みの重要性が増す中で、Worldcoinは10億人突破を大きな目標としている。さらに、その先にユニバーサル・ベーシックインカムを見据えている。AIとロボットの普及によって、自分の時間を楽しむ人やクリエイティブな仕事により集中する人が増える一方で、仕事を奪われる人も出てくる可能性が懸念される。ベーシックインカムはAIやロボットが活用される社会において、人々の生活を保証するものになり得るとアルトマン氏は考えている。