100倍もの超望遠撮影ができる!とカメラ機能の高さを売りに登場したのが、サムスン電子の最新スマートフォン「Galaxy S23 Ultra」です。「100倍のデジタルズームなんてSNSでも使える画質じゃないだろう…。そもそも、まともにフレーミングできるの?」と感じたので、望遠撮影は実用的に使えるのかを試してみました。普段、iPhoneしか使っていない筆者ですが、予想外のクオリティや撮影の実用性に「かなり使える」と感じました。

  • 最大100倍もの超望遠撮影が可能なサムスン電子の「Galaxy S23 Ultra」。NTTドコモとKDDI(au)が取り扱っており、もっとも安い256GB版の一括価格はともに約197,650円前後

光学10倍カメラ搭載、最大100倍のデジタルズームにも対応

カメラ機能の高さで定評のあるiPhoneですが、唯一物足りなさを感じるのが望遠撮影です。しかし、世間一般に望遠撮影のニーズは高いことから、Android陣営は望遠撮影性能の高さを売りにした製品を高価格帯のモデルを中心に投入しています。

そのような状況で登場したのが、サムスン電子が4月21日に販売を開始した最新モデル「Galaxy S23」「Galaxy S23 Ultra」。特に注目なのが大画面モデルのGalaxy S23 Ultraで、カメラは2億画素のメインカメラや1,200万画素の超広角カメラに加え、望遠カメラは光学3倍(35mm判換算で69mm相当)と光学10倍(同230mm相当)の2つを搭載。デジタルズームの併用で、最大100倍(同2,300mm相当)もの超望遠撮影に対応します。

  • 6.8インチの大型パネルを搭載しているので、本体は大きめ。左下には、シリーズの特徴でもあるSペンを内蔵する

  • 特徴といえる背面カメラ。光学10倍カメラはペリスコープ式(屈曲光学系)のレンズユニットを搭載し、高倍率レンズを内蔵しながら薄型ボディを維持している

ただ、デジタルズーム時の数字がすごくても、実用的に使えるとは限りません。まず重要となるのが「画質は満足できるか」という点。画像処理で擬似的にズームをするデジタルズームは、画像がぼんやりしたり不自然な描写になる傾向があります。光学10倍カメラの画像を10倍にも拡大するとなると、最新の画像処理技術をもってしてもさすがにキビシイのでは…と推測しました。

さらに「撮影時にちゃんとフレーミングできるか」という点も見逃せません。超望遠撮影時は画角がきわめて狭くなることから、スマートフォンを持つ手がわずかに震えただけでもライブビューが大きく動き、マトモに被写体をフレーム内に収められないことがあります。これらの課題に対処した設計になっていなければ、実用性はゼロになりかねません。

光学10倍カメラの画質は良好、デジタルズームも30倍なら実用的

早速、Galaxy S23 Ultraで撮影してみました。結論としては、画質面は「デジタルズームは30倍までが実用範囲だが、100倍でも手ブレがほぼないのは驚き。デジタルズームを使わない光学10倍カメラの画質はかなり良好」という判断です。フレーミングについては「最新テクノロジーでデジタルカメラにもない実用性を備えており、大いに満足」でした。

  • ▲光学10倍

  • ▲デジタル30倍

  • ▲デジタル100倍

  • 遠くに見えた観覧車を撮影。光学10倍の撮影は解像感が高く、不満はない。30倍のデジタルズームは使える画質だが、100倍はさすがに厳しい

まず、望遠撮影時の画質ですが、光学10倍の撮影は解像感が高く満足できました。被写体の前後のボケも自然に描かれ、被写体が浮かび上がるような描写が楽しめます。35mm判換算で230mm相当の超望遠撮影が日常的に持ち歩くスマートフォンで楽しめるのは、とても魅力的だと感じます。

  • 光学10倍カメラで撮影。遠景までしっかり描いていて、好ましい望遠スナップに仕上がった

  • 光学10倍カメラで撮影。タイルの質感もしっかり描き分けられていて、解像感はかなり高い

  • 光学10倍カメラで印象的な植物を撮影。前後のボケが自然で大きく、ポートレート撮影も映えそう

  • 花壇の花を光学10倍カメラで撮影。前後のボケの部分にノイズが見られるが、その分解像感が保たれていて好ましい

ちなみにこの光学10倍カメラ、超望遠ながら接写性能に優れており、小さな被写体を大写しできます。小さな花や昆虫もアップで撮影できるのは圧巻で、特に子どもは楽しんでくれそうです。

  • 星の砂を光学10倍カメラで撮影。独特の形状や表面の造形がしっかり描写できた

注意したいのが、10倍未満の倍率は光学3倍レンズのデジタルズームとなるので、10倍で撮るよりも画質が悪くなること。画質重視なら、光学レンズの倍率である3倍や10倍ぴったりで撮影するようにしましょう。

光学10倍の画質は上々でしたが、それ以上の倍率はデジタルズームでノイズ低減機能が強めに働くため、倍率を高めるほど画質が悪くなります。35mm判換算で690mm相当となる30倍ぐらいまでならば良好な描写が保たれますが、さすがに2,300mm相当の100倍は細かい部分の描写がつぶれて油絵のようになります。とはいえ、100倍の撮影でも手ブレがほとんどなく、ブレによる解像感の低下がないのはお見事だと感じました。SNSでは使えそうです。

  • 30倍のデジタルズームで撮影した写真。ノイズ低減機能が働くので、解像感が損なわれてのっぺりとした描写になったが、等倍表示にしなければ十分使える

  • 100倍のデジタルズームで撮影した写真。どんな状況なのかは把握できるが、人物の表情はつぶれてしまっている。HDRを強めにかけたようなムラも気になる。だが、これほどの超望遠撮影でも手ブレはしっかり抑えているのはお見事

超望遠撮影時でも安定してフレーミングできる

フレーミング時にまず便利だと感じたのが、ズーム時のフレームを表示するサブウインドウの存在です。20倍を超えるデジタルズームをすると左上にサブウインドウが現れ、現在どこをフレーミングしているかの目安が表示されます。超望遠撮影時、今どこを撮影しているのか迷うことが多いのですが、この機能のおかげで超望遠でもフレーミングに迷うことが少なくなります。

さらに感心したのが、狙った被写体をフレームに収め続けやすくする機能の存在です。航行する船舶を100倍(35mm判換算で2,300mm相当)のデジタルズームで撮影した以下の動画を見ると、撮影者が撮りたい被写体が何なのかをGalaxy S23 Ultraが認識し、フレームの揺れやブレ、傾きを補正してピタッと張り付くようにフレーミングし始めるのが分かります。2,000mm超の超望遠でこれほどしっかりフレーミングできるのは一般のデジタルカメラではあり得ない体験で、かなりのインパクトがありました。

【動画】100倍のデジタルズームで航行する遊覧船を撮影。途中までは船をフレームに収めるのに苦労したが、途中からスイッチが入ったように船がピタッと張り付くようにフレーミングし続けられた。高度な被写体認識や画像処理のたまものといえる

ただ、シャッターボタンをタップする際にGalaxy S23 Ultraがわずかに動くことが影響するのか、撮影できる写真は被写体が上下左右に大きくズレることが少なくありません。超望遠撮影時は、シャッターを連続で2~3回切ってズレのない“当たり”の写真が得られるようにするのがよいでしょう。

  • 上の遊覧船のフレーミングをキャプチャしている最中に撮影した100倍ズームの写真。撮影時に大きくズレて被写体が切れたカットもあったので、超望遠撮影時は念のため何カットか連写した方がよさそう

超望遠のために奮発して入手する価値はある

今回は超望遠撮影をチェックしましたが、予想した以上に実用的に使えたのには驚きました。Galaxy Sシリーズのハイエンドモデルにふさわしい内容で、超望遠撮影を使いたいがために奮発してGalaxy S23 Ultraを入手する価値は大いにあると感じました。

当然ながら、ライバルのiPhoneも望遠撮影のニーズの高まりやAndroid陣営の進化は認識しているはずなので、次期モデルでは望遠撮影性能を大きく高めてくる可能性は十分にあります。今年はスマートフォンの望遠撮影競争で盛り上がりそうです。