楽天グループは2月14日、2022年度通期および2022年度第4四半期の決算短信を開示した。モバイルセグメントの損失は4,928億円で前年度の4211億円から拡大となったが、第1四半期をピークに損失幅は縮小しているという。楽天モバイルの事業進捗については、MNO/MVNOを合わせた契約者数が506万契約と、第3四半期決算時の518万契約から減少となった。
楽天モバイルの事業進捗について、MNO/MVNOを合わせた契約者数が506万契約と、第3四半期決算時の518万契約から減少している。楽天モバイルは2021年8月の時点で契約数500万回線突破を発表しており、約1年半前の水準に戻った格好だ。
ただし決算説明会おける三木谷氏の説明によれば、MVOの契約回線数は2022年11月を底にこの2カ月は増加傾向。2022年12月/2023年1月の新規契約数は、前年同時期に申し込んで翌月に1GB以上のデータ通信を利用したユーザー数よりも増加しているという。三木谷氏は「これまで、通信量が月に1GB以下であったり、ポイント狙いであったりするユーザーが多いという実態があった。そういうところを狙うのではなく、ロイヤルカスタマーを狙っていこうと」「血の入れ替えは進んでいる」と、収益体質への転換が進んでいることを強調した。
三木谷氏はCEOとしてのグループ戦略説明において、モバイルセグメントについては、基盤確立を行った2022年までをフェーズ1とし、2023年から2024年を「利益体制の確立」を行うフェーズ2と位置付けたロードマップを示し、2024年からのフェーズ3でNo.1モバイルサービスを目指すというビジョンを示した。
利益体制確立のためのコスト減の方策としては、設備投資の一巡に伴う基地局解説費用の削減、楽天回線エリアの拡大に伴うローミング費用の削減、MVNOからMNOへの移行によるMVNO費用の削減、ショップ戦略の最適によるショップ運営費用の削減などを挙げ、月あたり約150億円のコスト圧縮が図れるとした。
また、2022年に総務省から方針が示されたことで獲得が見込まれているプラチナバンド展開についても、ネットワークの仮想化などを進めている楽天は低コストで最小限の設備投資で導入を行なえると見込んでいる。
ユーザー/売上の拡大については、Rakuten UN-LIMIT VIIの開始後、ユーザーあたりのデータ使用量が拡大しているというデータを示し、楽天エコシステム利用の引き上げ効果を含めたARPU(ユーザー一人当たり平均売上)は2,510円まで増加しているとした。なおこのうち、楽天エコシステムの利用増分を除く純粋なARPUとしては1,800円台となっている。質疑応答においてはARPUの目標について「3,000円」とする発言もあった。
また、これまでの決算説明会と同様、楽天モバイルの契約によって楽天グループのサービスの利用が増加している点についてもあらためて説明。楽天モバイルの契約者は、年間で楽天市場のショッピング額が非契約者より37,683円多く、1年以上の契約者ではプラス49%の上昇がみられるという。
また1月30日に開始された法人向けサービスについても、現在約40万以上の楽天グループの取引先を中心に営業を進めていく方針を示し、「初年度は最低でも100万回線」という目標に向けて順調にスタートしていると語った。さらに自社のバックボーンを使ったインターネットサービスプロバイダーサービス事業のローンチも予定しているとした。
質疑応答では、単月黒字化に向けた具体的な方策などを問われ、楽天グループのさまざまなWebサイトからのバナー送客や紹介キャンペーン、スーパーポイントアップ対象化によるメリット増、ポイント施策といった手段を挙げ、さらに近日中にオンラインで加入・アクティベーションまでできる仕組みを導入し、ユーザー獲得につなげたいとした。
またNTTドコモ/au/ソフトバンクなどが進めている障害発生時を念頭に置いたデュアルSIM対応について、楽天モバイルに動きがない点を問われると、楽天モバイルの矢澤俊介社長から「総務省の議論には参加している。まだ我々はネットワークを作っている最中なのでそこに集中していこうと思っているが、方向性としては同じ方向を向いている」という回答があった。