キヤノンが、RFマウントのミラーレスカメラ2機種を発表しました。上位機種並みの撮影性能を備えながら小型軽量化を図ったフルサイズ機「EOS R8」も目を引きますが、特に気合いが入っていると感じたのがAPS-Cセンサー搭載のエントリーモデル「EOS R50」。本体のデザインは歴代のEOS Kissと比べても一番かわいらしく、それでいて撮影性能も上位のフルサイズ機譲りのハイレベルな内容です。「EOS Kiss」の名前こそなくなりましたが、最新の“キスデジ”と呼ぶにふさわしい手抜きのない仕上がりに、キヤノンのEOS R50に対する本気を感じました。
デザインは歴代のキスデジと比べても一番かわいらしい
EOS Kissシリーズといえば、キヤノンのレンズ交換式カメラの屋台骨シリーズとして知られています。2003年に登場したデジタル一眼レフカメラ「EOS Kiss DIGITAL」は、当時のデジカメブームにも乗って大ヒットとなり、“キスデジ”の愛称が広く浸透するとともに、デジタル一眼レフが家庭に普及するきっかけを作りました。直近は、EF-Mマウントを採用したAPS-Cミラーレス「EOS Kiss M2」が、2020年11月の発売以来ロングヒットを続けています。
今回登場したEOS R50は、キスデジの「かんたん・きれい・コンパクト」のコンセプトを受け継いだ入門機でありながら、「Kiss」の名称がありません。キヤノンはEOS R50のターゲットとして、スマホネイティブ世代やVlogger(ビデオブロガー)などの新規購入層を中心に据えており、これまでのキスデジがターゲットとしていた“パパママファミリー層”からのイメージ一新を図るべく、「Kiss」の名前を付けなかったとみられます。「Kissの名称はちょっと恥ずかしい…」と感じていた人にとってもうれしい変化といえるかもしれません。
「Kiss」の名前がなくなったEOS R50ですが、フルオートで誰でもきれいな写真や動画が撮れる点や、柔らかでかわいらしいデザイン、いつでも持ち出したくなる小型軽量ボディなど、実にキスデジらしく仕上げられていることが体感できます。
特に、デザインは見事だと感じました。丸みを帯びたデザインは、歴代キスデジのなかでも一番柔らかでかわいらしく、デザインは相当力を入れて磨き上げてきたと感じさせます。ホワイトモデルを用意したこともあり、「見た目がかわいらしいから」という理由で購入を決める人も多そうです。
ちなみに、本体の幅や高さはEOS Kiss M2とほぼ同じですが、重さは10gちょっと軽く仕上げられています。さまざまな性能アップを図りながら、コンパクトさで定評のあるEOS Kiss M2よりも軽く仕上げてきた点は注目に値します。
デザインをかわいらしく仕上げるだけでなく、小ささと軽さも手抜きがありません。標準ズームレンズ「RF-S18-45mm F4.5-6.3 IS STM」を装着した時の重さは約505gで、かなり軽く感じます。このレンズは長さも抑えられていて、レンズを装着したまま持ち歩いたりバッグに収納するのもラクチン。ボディが厚くレンズも長い一眼レフのキスデジを愛用してきた人は、「レンズ付きでも薄い!」と驚くでしょう。
機能は上位機種譲り、コンピュテーショナルフォトも積極活用
外観は小型軽量でかわいらしく仕上げつつ、中身は最新技術や将来性たっぷりにまとめてきている点が評価できます。
画質や速写性能、AF性能を左右するイメージセンサーや画像処理エンジン、デュアルピクセル CMOS AF II、EOS iTR AF Xは最新のEOS Rシリーズと同等。さらに、カメラが自動的に複数枚の写真を撮影して合成し、逆光や夜景などの失敗しやすいシーンでも見た目に忠実に撮影するアドバンスA+モードも新たに追加するなど、誰でもフルオートでさらにきれいに撮れるようになっています。
人物や猫が画面の端にいても食らいつくように瞳にピントを合わせ続け、撮影者はフレーミングに専念すればよくなった点は、一眼レフのEOS Kiss DIGITALを愛用してきた人は特にインパクトを感じるでしょう。また、HDRの強化で明るい空や暗部の階調をしっかり残せるようになり、コンピュテーショナルフォトの活用による写真表現の改良はスマホにグッと近づいたと感じます。
VlogやYouTubeの撮影ニーズの高まりを受け、カメラの前に差し出した商品などに素早くピントを合わせるレビュー用動画モードや、カメラが左右に傾いていても水平方向の傾きを電子的に自動補正する自動水平補正機能など、動画関連の機能も大幅に充実させています。UVCに対応し、USBケーブルでパソコンとつなぐだけでライブ配信ができるのも評価できます。
将来性に関しては、EOS Kiss M2が採用するEF-Mマウントを踏襲せず、主力のRFマウントを採用したことが大きいといえます。EF-Mマウントは交換レンズのラインアップがわずか7本にとどまり、2018年9月発売の「EF-M32mm F1.4 STM」以来、新しいレンズが登場していません。特に、スマホネイティブ層が求める望遠~超望遠域が撮影できるレンズは「EF-M55-200mm F4.5-6.3 IS STM」が最望遠となり、本格的な望遠撮影にはいささか物足りなく感じます。
それに対し、EOS R50が採用するRFマウントはすでに33本も揃い、今後も追加される見込みです。小型軽量で価格も手ごろな超望遠ズーム「RF100-400mm F5.6-8 IS USM」や、驚くほどの小ささと安さで話題を呼んだ異色の超望遠レンズ「RF800mm F11 IS STM」など、個性豊かな交換レンズがそのまま使えるのが魅力。小型軽量化が図れるAPS-C専用のRF-Sレンズの拡充も期待できます。
予想実売価格は、標準ズームレンズと望遠ズームレンズの2本のレンズが付属するダブルズームキットが156,200円。もうひと声ほしかったところですが、3月下旬の販売開始のタイミングでキャンペーンを実施する可能性もあり、実質的な負担はもう少し下がるかもしれません。
カメラを所有したことのないスマホネイティブ層には「予想していたよりも小さく軽いし、簡単に撮れる」と感じさせ、カメラに詳しい人にとっても「小さいのに結構よくできてる」とインパクトを与えそうなEOS R50、2月23日から始まるCP+で目玉となるのは間違いなさそうです。