手書きのメモを書き込める、Amazonのスタイラスペン付き電子書籍リーダー「Kindle Scribe」。11月30日の国内出荷開始を前に、同社が報道陣向けの体験会を11月24日に開催し、実機を使いながら特徴や新機能を紹介しました。
既報の通り、Amazonは9月29日に「Kindle Scribe」(キンドル スクライブ)の予約受付を開始しています。付属のペンの種類やストレージ容量によって価格が異なり、スタンダードペン付きの16GBモデルは47,980円、消しゴム機能やショートカットボタンを搭載したプレミアムペン付きの64GBモデルは59,980円。Amazon.co.jpだけでなく、エディオンやケーズデンキ、ビックカメラ、ヤマダ電機でも順次販売予定です。
Kindle Scribeのラインナップ
スタンダードペン付き
- 16GBモデル:47,980円
プレミアムペン付き
- 16GBモデル:51,980円
- 32GBモデル:54,980円
- 64GBモデル:59,980円
Kindle Scribe用純正アクセサリー
- ファブリックカバー(ブラック、ブルー、ローズ):9,980円
- レザーカバー(ブラック、マルベリー):13,980円
- プレミアムレザーカバー(タングステン、エメラルドグリーン):15,980円
- 交換用ペン先:1,980円
Kindleシリーズ初の読み書きできる機種であり、シリーズ史上最大となる10.2型/300ppiの大型E Inkディスプレイを搭載しているのが注目ポイント。文字や画像、グラフといった細かいデータなどもくっきり大画面で表示でき、光の反射を抑えて明るい光の下でも読み書きできるようにしています。画面の色調調節や、明るさ自動調整機能も装備します。
短時間試用した限りですが、見やすさとレスポンスの速さ、ペンによる書き心地はきわめて良好でした。サイズ感はこれまで触れたKindleとはぜんぜん別モノ……つまりタブレットに近い印象ですが、本体のみの重さが433gと大きさの割には軽く感じられます(参考として、10.2型画面の第9世代「iPad」Wi-Fiモデルの重さは487g)。
Kindleコンテンツへの書き込みは後述するように少々独特ですが、手書きでノートを取ったり、PDFファイルに直接コメントを書き込んだりすることもできます。画面は16階調グレースケール表示に対応。カラー表示はできないため、書き込んだ文字も黒一色のみとなります。
Kindle Scribeはあくまで“電子書籍リーダー”であり、Amazon Fireタブレットや、昨今の電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットとは立ち位置が異なることに留意する必要があります。自分で各種アプリを追加することはできず、筆圧検知にも非対応。精緻なイラストを描く“お絵かきタブレット”といった、クリエイティブな用途で使われることは想定していません。「自分だけのメモも取れる大画面の電書端末が欲しい」というニーズとマッチすれば、便利に使えることでしょう。
Kindle Scribeの使い方
Kindle Scribeの使い方を、もう少し詳しくみていきます。
このデバイスの最大の特徴は、Kindleストアで配信されている電子書籍に、付せんを追加して手書きのメモを付けられる点にあります。メモを追加したい場所をタップして、思いついたことを手早く書き込めます(Kindle本そのものに手書きできるわけではない)。線の太さ・細さは選択可能。マーカーも引けます。
ただしAmazonによれば、マンガや雑誌、一部の実用書など、手書き入力機能に対応していないKindle本があるとのこと。具体的にはフィックスドレイアウトのKindleコンテンツ(実際の紙の書籍をそのまま表示できるよう、文字の位置や画像の大きさを固定して作成したもの)で、これらには付せんを付けられない場合があるためです。
すべての固定レイアウトのコンテンツが付せん追加非対応、というわけでもないようで、AmazonではKindleストアにおいて、Kindle Scribeで付せん追加できるかどうかを示すアイコンを付与。ユーザーが対応状況を確認しながらコンテンツを購入できるようにするそうです。
いっぽう、Kindle ScribeにインポートしたPDF文書や、Kindle Scribeで作成したノートなどには、直接手書きでメモを書き込めます。ノート機能はメモ帳や日記として使え、罫線付き、白紙、ToDoリストなど18種類のテンプレートを使って手軽に作成できます。作成したノートやメモはサムネイルで見返せるので見やすく、フォルダごとに管理もできます。
Send to Kindle機能を使って、PDFやdocx形式の資料をスマートフォンやPCから直接Kindle Scribeに取り込んでメモを追加した場合、それらも含めてPDF形式で出力できます。ちなみに、Kindle Scribeで作成した付せんやメモは、Kindle Scribe以外のアプリでは編集できないとのこと。別のデバイスやアプリにエクスポートしたあとの再編集はできないとみた方がよさそうです。
購入したKindle本に付けた付せんやメモは自動で保存され、クラウドにもバックアップ(無料)。スマートフォンやPC(デスクトップ)のKindleアプリからもアクセスできるようにしています。この機能は、Kindle Scribeの発売に合わせて提供する、Kindleアプリのアップデートによって実現するそうです。
付属のスタイラスペンは、書き込むだけのスタンダードペン、または消しゴム機能やショートカットボタン搭載のプレミアムペンの2種類から選べます。
ペンはKindle Scribe本体にマグネットで取り付けられますが、ペアリングや充電は不要。Kindle Scribeの画面上で手書き文字の太さの調整、マーカー、消しゴム、元に戻す、などの機能が利用できます。ちなみに、両者の書き心地に差はないそうです。
プレミアムペンのみの特徴のひとつが、カスタマイズ可能なショートカットボタン。通常は画面上でペンとマーカーを切り替えるといった操作が必要ですが、プレミアムペンなら手元ですぐに行えます。さらにもうひとつ、ペンの後端の“消しゴム”を使い、書き込んだ線や絵を直感的に消せるという便利機能も備えています。なお、どちらのペンも交換用ペン先(別売、1,980円)が利用できます。
本体はチタン風のカラーリングを採用。背面には卓上に置くときに支えとなる小さなゴム足があります。読書のみで最大12週間、読み書きで最大3週間持続可能なバッテリーを搭載。付属のUSB-C充電ケーブルで充電でき、9W出力のUSB-C充電アダプター経由での充電時間は約2.5時間。ちなみに本体のUSB-C端子は充電・給電専用で、外付けのストレージには対応しないとのこと。
本体サイズは230×196×5.8mm(縦×横×厚さ)。Kindle Scribeの素材には、再生利用プラスチック48%と再生利用アルミニウム100%を使用。デバイスの梱包に使用する梱包材の100%が、適切に管理された森林やリサイクル資源から調達された木質繊維で作られています。
ユーザーの声から生まれたKindle Scribe
「Kindle Scribeは、『紙の本やノートのように(Kindleを)使いたい』、『自分だけのメモを書き留めたい』といったユーザーのニーズから生まれた製品です」。Amazonデバイス事業本部 Kindle事業部・Fire タブレット事業部・デバイスアクセサリー事業部 事業部長の清水文弥氏は、報道陣向けに開催された体験会の中で、このように語っています。
2022年、Kindle電子書籍リーダーは日本での販売開始から10年目を迎えました。現在、手ごろなKindleや、防水機能やワイヤレス充電機能を備えたKindle Paperwhite、ページ送りボタンも備えたKindle Oasisの3モデルを展開していますが、そこにKindle史上初の10.2型手書き入力対応の最上位機を投入したかたちです。
Amazonとしては「電子書籍リーダーとして最高のものを出したい」という考えがあり、「10.2型/300ppiのディスプレイを載せたい」、「レスポンスには妥協しない」といったこだわりをKindle Scribeで具現化。そこにプラスアルファとして、手書き機能を付け加えました。
「手書き機能なら、これまでのKindleでも実現できたのでは?」と考えてしまいそうですが、清水氏の説明によれば、上記のようなユーザーのニーズに応えつつ「手ごろでユーザーにとっても価値を十分感じてもらえる価格帯に収められた」のがちょうど今だった、とのこと。また、Kindleが米国市場で15周年、日本市場で10周年という節目を迎えたタイミングであることも、今回の市場投入時期と関係しているそうです。
「高機能なKindleを求める既存の電子書籍ユーザー」のほか、「多機能デバイスが欲しい新規購入ユーザー」をターゲットとしており、本を読みながらメモを取って勉強したい知的好奇心旺盛な人、さらには業務文書や原稿チェック、執筆・推敲作業を効率的に進めたい人も想定ユーザーとして挙げています。「大画面で文字サイズを大きくし、目に優しく読書を楽しみたい」という人にもオススメとのこと。
「万人受けするモデルではないとは思いますが、逆にこのサイズ感と手書きできるというところで、Amazonが今までリーチできなかった、新しいユーザーにもKindleの体験を拡げたいと考えています」(清水氏)。
個人的には、片手で持てるサイズ感の“小型版Kindle Scribe”が将来登場するのかも気になるポイント。清水氏は「Kindle Oasisのサイズでも実現可能だと思います」と前置きした上で、「大きな電子書籍リーダーが欲しい」というニーズには応えられなくなることと、小さい画面サイズでは少し書きにくくなるということもあり、「最初に出すのは10.2型の大画面が一番最適という判断に至りました」と話していました。