「Macはクリエイティブ用途にはめっぽう強いが、ゲームは弱い」――。こういった認識が、Macへの搭載が進むアップルの独自CPU「Appleシリコン」と最新のmacOS Venturaにより、この秋一気に変わりそうです。先陣を切って登場したのが、カプコンが10月28日にリリースしたMac版の「バイオハザード ヴィレッジ」。日々の生活で使っているスリムなMacBookシリーズで、グラフィックスもサウンドも驚くほどの大迫力で楽しめました。バッテリー駆動時間も文句なしに長く、“ゲームもMacでしょ”という時代が来ると予感させました。

  • Mac版の「バイオハザード ヴィレッジ」、10月28日の13時からいよいよ販売が始まった。価格は5,000円で、MacのApp Storeで購入できる

AppleシリコンとmacOS VenturaでMacのゲーム環境が劇的進化

昨今、ゲームを楽しむためのプラットフォームとして、家庭用ゲーム機に代わってWindowsパソコンの存在感が高まっています。パソコンメーカーからは性能を高めたゲーミングPCが続々と投入され、最新のグラフィックスカードやCPUは自作ゲーミングPC派に飛ぶように売れています。重量級のAAAタイトルを含む多くのゲームを配信するSteamの存在も大きく、「ゲームを楽しむならWindows」といった認識を持つ人が増えています。

その一方で、同じパソコンでもMacはゲームを楽しむためのデバイスという認識はあまり広まっていません。Windowsのようにパーツ交換で性能を高めるのが難しいことや、Mac対応の大作ゲームがWindowsと比べて圧倒的に少ないことが、その背景にあります。

そのようななか、2022年6月に開かれたアップル世界開発者会議「WWDC22」にて、老舗ゲームメーカーのカプコンの担当者が登壇し、人気タイトルの最新版「バイオハザード ヴィレッジ」のMac版をリリースするとサプライズで発表。すでに、Steamやプレイステーション5などのプラットフォームでリリースしていましたが、まさかのMac版登場ということで大きな話題を呼びました。WWDCの閉幕から約4カ月、10月28日にいよいよApp Storeでの販売が始まりました。

  • WWDC22では、カプコンの伊集院勝氏が登壇。Mac版の「バイオハザード ヴィレッジ」のリリースをサプライズで発表した

美しいグラフィックスを用いたバイオハザード ヴィレッジのMac版が実現できたのは、カプコンが誇る内製ゲームエンジン「RE ENGINE」(アールイーエンジン)が満を持してMacに対応したから。高性能のAppleシリコンと、ゲーム向けに強化したグラフィックス描画のAPI「Metal 3」がmacOS Venturaで搭載されたことも、RE ENGINEのMac対応を後押ししたといえます。

  • macOS Venturaでは、機能強化を図ったグラフィックスAPIの新バージョン「Metal 3」を搭載している

  • Appleシリコンの高いグラフィックス性能を生かした超解像技術「MetalFX Upscaling」も備えている

グラフィックスもサウンドも大迫力、気になる騒音とは無縁

今回、M1 Maxチップを搭載した16インチMacBook Proで、リリースされたばかりのバイオハザード ヴィレッジをプレイしてみました。

  • MacBook Proの大画面でバイオハザード ヴィレッジが動いた!

まず印象的だったのが、ゲームが始まって現れた画面の美しさ。グラフィックスは、Metal 3が備える超解像技術「MetalFX Upscaling」が働いていることもあり、HDRが効いた4K画質の精細な表示に驚きました。これほど高精細でも表示がカクつくことはなく、終始なめらかな描画がバッテリー駆動のポータブルデバイスで得られるのは正直すごいと感じます。M1 Ultraを搭載したMac Studioでは4K画質に、M1 Maxを搭載したMacBook Proでは少しだけ解像度が下がり、MacBook AirではフルHD画質に対応します。

驚いたのが、わずらわしいファンの騒音に悩まされず、快適にプレイできたこと。MacBook Proには冷却ファンが内蔵されているのですが、外気と同じ温度の室内でしばらくプレイしても、ファンの回転はおだやかで、耳を近づけない限り風切り音が確認できないほど。WindowsのゲーミングノートPCは冷却ファンの甲高い風切り音がひどくて気が散る機種も多いといい、発熱を大幅に抑えたAppleシリコンのメリットが現れているといえます。

大迫力サウンドも特筆できます。MacBook Proのステレオスピーカーからは、ノートPCとは思えないパワフルでワイド感あふれるサウンドが流れてきました。本体の厚みが16.8mmとスリムなMacBook Proで、これだけのパワフルなサウンドが出ることに驚きました。このクオリティなら、外付けスピーカーは不要だと感じます。

操作も、PlayStation 5用のワイヤレスコントローラー「DualSense」が使えるので、ストレスは一切ありません。DualSenseはmacOSで標準サポートしているので、接続もワンタッチで済みます。

  • DualSenseをペアリング状態にするとMac上で表示されるので、接続は手間いらずで済む

バッテリー駆動でも一切パフォーマンスが落ちずにプレイでき、しかも数時間ぶっ続けでプレイできる点も、低消費電力のAppleシリコンを搭載するMacBook Proならではだと感じます。

何より、分厚くゴツいデザインが多いWindowsのゲーミングノートPCに対し、MacBook Proはとてもスリムで持ち運びやすいのは大きなメリット。長時間バッテリー駆動と合わせて、場所を選ばずいつでもどこでも重量級ゲームが楽しめます。MacBook Proよりさらに薄く軽いMacBook Airでも、美しいグラフィックス+ステレオサウンド+DualSense対応でプレイできます。

  • 最新のM2チップを搭載したMacBook Air(右)だけでなく、M1搭載MacBook Air(左)でもプレイできる

カプコンがバイオハザード ヴィレッジを投入したことで、ほかのゲームメーカーもMacへの主力タイトルの投入で追従する可能性があります。“いかにもなゲーミングPC”という見た目ではないのに重量級ゲームもスマートに楽しめるMacBookシリーズやiMac、今後ゲームプラットフォームとしての存在感が高まるのは間違いなさそうです。