ロシアのモスクワにあるスコルコボ科学技術研究所宇宙センターと、モスクワ物理工科大学の共同研究チームは、宇宙広告の人工衛星フォーメーション飛行に関する論文を発表した。これは、地上からも見られるような巨大な広告を宇宙空間で展開して見せることが、様々な観点から不可能ではないと明らかにしたものだ。
これまで実際に実現した宇宙広告としては、ロケットに搭載されたロゴマークや、国際宇宙ステーションへのブランド食品の配達などがあるそうだ。しかし、これらの例は、宇宙ミッションにおける副次的なものに過ぎなかったという。
本論文では、太陽電池反射板を搭載した複数の小型人工衛星による宇宙広告ミッションの技術的・経済的な実現可能性を評価した。結果としては、非現実的に見える宇宙広告だが、実は、技術的にはもちろん、商業的にも成立する可能性があることがわかったとしている。
具体的な宇宙広告ミッションは、50個の人工衛星を上空500~1,000キロメートルの地球低軌道に送り込むというもの。動作寿命は3カ月で、その間、衛星は常に太陽光を浴びるような軌道を回転し、フォーメーションを組みながら、太陽光を地球に反射させる。衛星は、明るい星座のようなイメージで空に現れ、ピクセル画像のように地上から観察することができるのだそう。
論文ではこの宇宙広告ミッションの費用が、6,500万ドル(約90億円)に上ると見積っている。一方で収益については、人口密度の高い大都市上空を周回し、1分間広告を表示した後、次の都市に移動する方法を取ることで、1日の宇宙広告収入は約200万ドル(約2.8億円)に達すると見積もっている。動作寿命から1回のミッションにつき91.5日間運用を行うとすると、約1億1,160万ドル(約160億円)の利益が得られる計算だそう。
ちなみに、これまでにも、こういった宇宙広告のようなものを試みた例は何度かあったそう。例えば、1989年にフランスで、エッフェル塔建設から100周年を記念して、地球表面から2,000キロメートル以下の軌道に100個の太陽反射板を連ねて、世界中に見える光の輪を作る試みが行われたが、実現はしなかったそうだ。
なお同研究チームによれば、今回の宇宙広告ミッションに対しては現在、「天文観測の妨げになる」といった反対意見が出ているという。こういった反対意見は杞憂にすぎないとの反論もあるそうで、「今回提案した軌道は、非常に地球に近く、夜間の実証実験はできず、日の出や日の入りの時間帯にしか実証実験はできない。また、経済性を考慮すると、人口が多い場所が最適だと分かっている。こういった都市では、恒常的な光害があるため、天文観測の妨げにはならない」と主張している。
ネット上では「夜空にまで広告出てきたらうざすぎだろww」「実用化されてほしくない技術。空を見上げたら広告とか絶対勘弁してほしい。」「いずれ人工物のない夜空は見られなくなるんやろね」と否定的な意見が散見された。てっきり「SFすげー」的な意見が出まくるものとも思ったが、宇宙というロマン空間と広告では、相性が良くなかったのかもしれない。