楽天グループは8月10日、2022年度第2四半期の決算を発表した。モバイル領域では「Rakuten UN-LIMIT VII」発表後にいわゆる“ゼロ円ユーザー”の解約が増えたことで契約回線数は減少となったことに注目が集まったが、売上の発生するユーザーは増加しており、収支にマイナスの影響はないと説明した。
グループの連結売上収益が前年同期比+13.5%の約4,565億円となった今回の四半期決算発表。モバイル領域でも、「第1四半期が損失の底になる」としていた予測どおり、営業利益が前四半期から約110億円改善し、約1,242億円で落着した(ただし前年同期比では24.7%増)。この要因としては無料プラン終了によるARPUの上昇、エリア拡大等による契約者獲得の加速、パートナー回線から楽天回線への切り替えによるローミング費用の減少を挙げており、継続的な損益改善を見込んでいる。
MNO/MVNO合わせて546万件の回線契約数(6月末時点)は、4月時点から約23万件の減少。これは三木谷氏が「戦略の変化というより進化」という新料金プランの影響が大きいが、新プラン発表後に解約が増えたことを認めつつも、その8割は売上のあがらないデータ使用料1GB未満のユーザーであったとし、売上の発生する1GB以上を利用しているユーザーは純増になっていると説明する。
質疑応答で三木谷氏は「真水(編集部注:売上対象となる1GB以上利用のユーザー)でいうと30%くらい伸びている。ゼロからはじめたサービスだったので最初は大盤振る舞いをしていたが、適正な利益をあげていく方向に舵ををきったということ。われわれにとって優良なユーザーに入れ替わっていくという意味ではよい動きだった」「ゼロ円の方、まったく使っていらっしゃらない方も多かったので、一定の離脱はしかたない」と語り、大きな問題とは受け止めていない姿勢を示した。また今回解約を選んだユーザーに対しても「楽天モバイルはどんどん進化していきますし、楽天ポイントのサービスも強化します。また時期をみて、楽天モバイルの利用を検討してほしいと思っています」と語った。
今後の契約流出/流入についての展望としては、すでにゼロ円ユーザーの新料金プランをきっかけとした解約は「落ち着いてきている」という。それ以外では、ローミングから楽天回線への切り替えにより、ローミングエリアでの通信容量制限を忌避するユーザーの流出に歯止めがかかること、9月に打ち上げを予定している低軌道人工衛星で国土の回線カバー率が100%に近づくことなどから、「ほんとうに使えるネットワークは楽天モバイル」となっていき、離脱は減っていくという予測を示した。
あわせて、現在都市部に偏っているユーザー層を地方にも拡大し、東京23区におけるシェアである9.4%を全国で達成することで1,200万件の契約を獲得するという目標を設定。そのために地域特化型のマーケティングも本格的に開始していく予定だ。
これまで、楽天モバイルがユーザーの獲得により他のサービスを含む楽天エコシステムの利用拡大に大きく貢献してきたものの、一方でモバイル事業が大きな損失を計上していることが不安視されてきた。この四半期決算では、契約数が減少しつつ、損失は改善に転じている。それぞれこれまでとは逆方向の動きといえ、今後どちらの影響が大きくなるのか、注視したいところだ。