うねりやパサつきなど、髪の悩みはつきません。そこで大切なのが毎日使うドライヤーです。パナソニックが9月1日に発売する最上位モデル「ナノケア EH-NA0J」(以下、EH-NA0J)の実機をチェックしてきました。

ヘアードライヤーのナノケアは2005年から発売されたシリーズ。国内の累計販売台数は1,500万台を達成しています。

  • パナソニックは1937年からドライヤーを発売していますが、ナノケアシリーズは2005年から。2006年モデルはプロダクトデザイナーの深澤直人さんがデザインを手がけました

  • 右が新製品。ぐっとコンパクトになりました

  • カラーは3色展開です

新モデルのEH-NA0J、価格はオープンプライス、推定市場価格は39,000円前後です。特徴はなんといっても小型化した本体。サイズは高さ22.1×幅14.8×奥行7.4cm、重さは約550gです。従来モデルと比べて体積は約27%も小さくなり、EH-NA0Jを手に持った感覚もなかなか軽い印象でした。

多くのドライヤーは2つに折り曲げて収納しますが、EH-NA0Jはそのままサッと収納できそうです(折り曲がったほうが片付けやすい場面もありますが)。小型化のポイントは高密度ヒーターの採用です。

  • EH-NA0Jの体積は従来比で約27%減

  • 左側が従来のヒーター、右側がEH-NA0Jの高密度ヒーター。ぎゅっと全体の幅が小さくなっています

  • ヒーターの巻き方を密にしています

  • 金属の特性を考慮した巻き方を、日本のものづくり技術で実現したそうです

従来モデルと新モデル(EH-NA0J)を比較すると、ヒーターが半分に減っていることが見て取れます。小型でも高パワーを持つ高密度ヒーターを製造できたことで実現されました。

「従来のヒーターでも密に巻けば小型化できますが、山を尖らせるだけでは狙った性能が出ません。狙った形のU型にヒーターを巻くには、金属の曲げ量、曲がってから元の形状に戻ろうとするバネ量、寸法の管理など細かい精度が求められます。これは日本のものづくりと製造工場の集合知によって実現できました」(パナソニック ビューティー・パーソナルケア事業部ビューティ商品部 ヘア技術開発課 菊池勇人主任技師)

小型化したということは、内部で部品を配置するスペースも少なくなるということ。部品を密に配置することで、風が通りにくくなって部品の発熱を逃しにくいという新たな課題が出てきました。

そこで、配線や部品の配置、風路を見直し、「髪を乾かす風」「高浸透ナノイーとミネラルを含んだ風」「内部冷却に使う風」の3つに分けて解決しました。とはいえ、1つの風をただ3つに分けただけでは、「髪を乾かす風」「高浸透ナノイーとミネラルを含んだ風」が少なくなりますよね。流体解析やハイスピードカメラ解析を駆使して、風がどのように髪に届くかを検証。速乾性と髪への効果のバランスが良い風を導いたそうです。

  • 従来モデル(左)では上部に集約配置していたパーツや配線を分割して、EH-NA0J(右)ではハンドル側にも収めています

  • ハンドル部分に冷却用の風を送るほか、髪を乾かす風と、高浸透ナノイーとミネラルを含む風という3種類の風を生み出します

  • 乾かす風とは別に、高浸透ナノイーとミネラルを含む風が下部から吹き出します

本体デザインを変更したことで、髪と吹き出し口の距離が近くなりました。

「新デザインでは、高浸透ナノイーとミネラルを含む風の吹き出し口の位置が髪に近くなるように配置。髪がうるおい、頭皮のうるおいも約20%向上しました」(パナソニック ビューティ・パーソナルケア事業部 商品企画課 ヘアケア商品企画課 高野創志主務)

  • パナソニック独自の高浸透ナノイー技術を採用

  • 高浸透ナノイーが髪の内側に入り込んで髪をうるおします

  • 高浸透ナノイーとミネラルが頭皮と髪に届きやすくなり、うるおいアップ

近距離から乾かせるので、髪の温度が上がり過ぎないセンサー技術

ドライヤーを髪に近づけて乾かしていると、髪が熱くなりすぎることがありますよね。EH-NA0Jでは、それを防ぐために「風温センサー」を搭載しました。

従来モデルも、室温に応じて風温を調節する「環境温度センサー」を備えていましたが、EH-NA0Jの「風温」センサーは風そのものの温度も検知。風の吹き出し口から約3cmの距離だと温度は約95℃ですが、髪に届くときには(距離にもよりますが)65℃~75℃になるよう風の温度をセンシングしているそうです。使い方にあわせて自動で風温を調節してくれるのはうれしいところ。

「至近距離でドライヤーの風を当て続けると、髪に熱が蓄積されます。髪とドライヤーの距離が近いときは、センサーが風温をセンシングし、状況に合わせて温度を下げ、過度な熱ダメージが起きないように自動でコントロールしています」(菊池主任技師)

  • 風温センサーを新たに搭載しました

  • 温度ムラを少なくし、過度な熱を抑えます

  • 筒の内側に見える小さな赤いパーツが風温センサーです

ノズルは3種類が同梱されます。強弱差のある風をつくり出して髪をスピーディに乾かす「速乾ノズル」は、本体にあらかじめセット。加えて、髪の根元まで風を届けるため毛量が多い人などに適した「根元速乾ノズル」、狙った場所に風を当てやすい「セットノズル」を用意しており、シーンにあわせて使い分けられます。

EH-NA0J風量は、ナノケアシリーズで最大となる毎分1.6立方メートル。パナソニックは「イオニティ」という大風量速乾モデルのドライヤーを発売していますが、イオニティ「EH-NE7G」の風量は毎分2.0立方メートルです。単純にスペックを比較すればイオニティのほうが早く乾きそうですが、ナノケアシリーズとイオニティでは風の出し方が違うとのこと。

「ナノケアシリーズは、風を絞って風圧で髪を乾かしていきます。そのため、毛束のほぐしやすさはナノケアシリーズが優れています。一方、イオニティシリーズは風量がありつつ広がる風です。お好みによって使いやすさは異なると思います」(菊池主任技師)

実際に髪に風を当ててみたところ、風圧をしっかり感じるせいか、毎分1.6立方メートル数字以上に風の勢いを実感しました。頭皮にも風を感じるので、普段からすばやく乾かしたい人に良さそうです。

【動画】速乾ノズルのデモンストレーション。髪がなびく様子を見ると、けっこう風が強いことがわかります(音声が流れます。ご注意ください)

  • 向かって右側にだけ新製品の風を当てた状態。うねりが抑えられています

  • 速乾ノズルは本体に装着されています。強い風と弱い風を組み合わせて、毛束をほぐします

  • 新たに根元速乾ノズルを付属

  • ノズルも本体もコンパクトなので、収納しやすくなりました

  • マイナビニュース・デジタルの林編集長も体験。パナソニックによると、高機能ドライヤーを使う男性も増えているそうです

パナソニックのナノイー技術

少々余談ですが、2022年6月9日にダイソンが「パナソニックのヘアドライヤー(EH-NA0G)の広告が不正競争防止法に違反する」として東京地方裁判所に提訴した件については、次のように説明しています。

「7月19日に当社としての見解は発表済み。係争中につき詳細は申し上げられませんが、長きにわたるドライヤーの研究開発とともに、ナノイーについては20年以上の研究開発の歴史があり、第三者の知見とともに開発してきました。裁判では当社の主張を明らかにしたい。(ナノケアシリーズの)訴求については、きちんとしたエビデンスを持って訴求しているため、これまでと特に変えることはありません」(パナソニック ビューティー・パーソナルケア事業部 マーケティング統括国内マーケティング部 神本暁氏)

「当社では、2007年に白金や亜鉛粒子による毛髪影響研究を開始。ミネラルマイナスイオンがキューティクルを引き締め、ダメージの抑制に成功。2014年にはさらなる水分量アップのため高浸透ナノイー研究を開始、2019年には高浸透ナノイー搭載モデルを発売しました」(神本氏)