NTTコム リサーチは、2022年夏の政府による節電要請や、電力大手各社の電気料金値上げを受け、電力に関する調査を実施。調査結果を7月19日に発表した。回答者の8割以上が家庭の節電に取り組みたい意向を示したほか、節電した分ポイント還元などを受けられることで、節電意識の高まりにつながることも分かったという。

調査は、NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションが運営するインターネットアンケートサービス「NTTコム リサーチ」において、全国の20代~60代の男女を対象に、2022年6月17日~6月20日まで非公開形式で実施。有効回答者数は1,122人。

  • 回答者の属性
    (出所:NTTコム リサーチ)

8割近くが国内のエネルギー資源不足に「不安」。新電力契約者は25.5%

2022年2月から続く一連のウクライナ情勢を受け、国内のエネルギー資源不足をどう感じているかたずねたところ、「とても不安に感じている」(36.2%)、「やや不安に感じている」(40.6%)を合わせた76.8%が「不安に感じている」と回答。年代別でみると、40代~60代では8割以上が「不安に感じている」と回答しており、20代(59.8%)や30代(68.5%)と比べて多い傾向にある。

具体的な生活への不安を複数回答でたずねると、「電気料金の値上がり」を挙げた人が78.4%と最も多く、次いで「生活必需品・嗜好品の値上がり」(65.8%)、「ガソリン料金の値上がり」(58%)と続いた。

  • 国内のエネルギー資源不足に対する不安感(単一回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

  • エネルギー資源不足による具体的な生活への不安(複数回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

現在契約している電力会社については、「一般電気事業者」が70.2%、「新電力」が25.5%、「わからない」が4.2%。電力会社の切り替えを検討しているかたずねたところ、「検討している」が7.9%、「検討していないが、興味はある」が34.4%となった。

契約している電力会社別でみると、切り替えを検討しているのは一般電気事業者で7%、新電力で10.5%となっており、新電力契約者の方が切り替えを検討している人が若干多い。

  • 現在契約している電力会社(単一回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

  • 電力会社の切り替え意向(単一回答) (n=1,075)
    (出所:NTTコム リサーチ)

切り替えを検討している人に対して重視する項目(複数回答)をたずねると、「電気料金が安い」が71.8%、「電力の供給が安定している」が67.2%といずれも突出しており、NTTコム リサーチでは「昨今の情勢を受けた結果になっている」と分析している。

  • 電力会社の切り替え時に重視すること(複数回答) (n=458)
    (出所:NTTコム リサーチ)

8割以上が「家庭の節電」に取り組みたい。節電意識を上げるのは“報酬”

今夏の電力需給は厳しい見通しとなっていることから、政府は6月7日以降、家庭や企業に対して節電要請を発出している。

電力不足について感じていることをたずねると、68.5%が「危機感を抱いている」(「とても危機感を抱いている」26.2%、「やや危機感を抱いている」42.3%を合算)と回答。

男女別でみると、男性では64.5%、女性では72.4%が「危機感を抱いている」と回答しており、女性の方が危機感を抱く人が多い。年代別では、上の年代になるほど危機感を抱く人が多く、20代では53.7%、60代では81.7%と、28ポイントもの開きがある。

  • 今夏の電力不足に対する危機感(単一回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

今夏の家庭の節電については、「取り組む」(35.6%)、「取り組むと思う」(48.2%)を合わせた83.8%の人が取り組みたい意向を示した。

男女別でみると、「取り組みたい」と回答したのは男性が79.5%、女性が88%で、女性の方が意向が高い。年代別では、こちらも上の年代になるほど意向が高く、20代では66.6%、60代では94.8%と、28.2ポイントの開きがあった。

  • 今夏の家庭の節電への取り組み意向(単一回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

家庭の節電に取り組みたくなる仕組みについて、複数回答を設けてたずねたところ、「節電した分だけ報酬(ギフト券やポイント還元等)を得られる」と回答した人が35.9%で最多。次いで、「家庭の電気使用量がリアルタイムで確認できる」(30.7%)、「普段の電気使用量と比べてどれだけ節電出来たか確認できる」(26.6%)と続いた。

  • 家庭の節電に取り組みたくなる仕組み(複数回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

また、家庭以外で必要だと思う節電対策(複数回答)については「各企業(オフィスや工場等)の節電」が64.2%で最も多かった。2位以下は「街灯や看板の消灯」(53%)、「エレベーターやエスカレータの間引き運転」(38.3%)などとなっている。

  • 家庭以外で必要だと思う節電対策(複数回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

デマンドレスポンス(DR)の認知率は低いが、半数が「興味アリ」

電力の需給バランスを調整するための新しい仕組みとして、「デマンドレスポンス(DR)」が注目を集めている。電力ひっ迫時に、節電に協力した消費者に対して報酬(ギフト券やポイント還元等)を付与するといったキャンペーンを実施している電力会社もあるという。

  • デマンドレスポンス(DR)の実施事例
    (出所:NTTコム リサーチ)

DRの認知率は16.2%(「内容まで含めて知っている」5%、「内容はわからないが言葉は聞いたことがある」11.2%の合算)で、言葉として広く浸透しているわけではないものの、DRの仕組みを説明したうえで、興味があるかたずねたところ、「とても興味がある」(16.6%)と「やや興味がある」(34%)を合わせた50.6%が「興味がある」と回答した。

  • DRの認知度(単一回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

  • DRに対する興味(単一回答) (n=1,122)
    (出所:NTTコム リサーチ)

興味があると回答した理由(複数回答)については、「節電した分だけ報酬が得られるから」が76.5%で最多。次いで、「節電した結果、電気代も安くなるから」(70.4%)、「電力の安定供給につながるから」(48.7%)と続いた。

NTTコム リサーチではDRについて、「料金面でメリットを感じている人が多いことがわかる」と分析。言葉の認知度は低いが、仕組みに興味を持つ人は多いことから、「今後は認知度を高めて利用者を増やすことで、DRを新たな電力需給バランスの調整手段として確立していくことが期待される」としている。

  • DRに興味がある理由(複数回答) (n=567)
    (出所:NTTコム リサーチ)