米Mozillaは、5月3日(現地時間)にWebブラウザFirefoxの新バージョンとなる「Firefox 100」をリリースした。2004年のバージョン1.0以来、アップデートの頻度は異なるが、17年の年月を経て、いよいよ3桁バージョンとなった。オープンソースを標榜し、インターネットの自由を主張してきたMozillaにとってもひとつの記念となったことは間違いないであろう。Mozillaの公式ブログでも、動画などが公開されている。

Firefox 100:Building a better internet since 2004

これまでのFirefoxのロゴがどう変わってきたかを紹介している。では、いつも通りバージョンアップの紹介を進めていきたい。Firefox 99から4週間でのバージョンアップとなった。Firefox 99では、2022年4月12日にマイナーバージョンアップの99.0.1されている。99.0.1では、以下の変更が行われた。

  • Windows版で、新しいIntelドライバでハードウェアビデオのデコードが正しく動作しない問題を修正
  • ベンガル語でのテキストレンダリングの問題を修正
  • ドラッグアンドドロップによるダウンロードパネルで選択問題を修正
  • subdomain.zoom.usURLではなくzoom.usURLにアクセスすると、ズームギャラリーモードでの不具合問題を修正

今回のマイナーバージョンアップでは、セキュリティアップデートは行われなかった。したがって、今回のバージョンアップは、99.0.1からとなる。

Firefox 100のインストール

すでに自動アップデートが可能な状況になっているが、ここでは手動でアップデートする方法を説明したい。Firefoxメニューの[ヘルプ]→[Firefoxについて]を開くと更新が自動的に開始される。[再起動してFirefoxを更新]をクリックする(図1)。

  • 「Firefox 100」を試す - ピクチャーインピクチャーで、字幕やキャプチャーをサポート

    図1 Firefox 100へのアップデート

アップデート後のFirefox 100は、図2のようになる。

  • 図2 バージョン100にアップデート直後のFirefox

バージョン100を記念するポップアップが表示される。新規に、Firefox 100をインストールする場合、FirefoxのWebページからインストーラをダウンロードする(図3)。

  • 図3 Firefoxのダウンロードページ

[今すぐダウンロード]をクリックし、保存したファイルをダブルクリックして、インストールを開始する(図4)。

  • 図4 Firefox 100のインストール

画面の指示に従い、インストールを進めてほしい。以下では、新機能のいくつかを具体的に見ていこう。

Firefox 100の新機能

続いて、新機能であるが、今回のリリースでは、以下が加わった。

  • YouTube、Prime Video、Netflixの動画において、ピクチャーインピクチャーで視聴する際にキャプション/字幕の表示がサポートされるようになった。ページはめ込みビデオプレーヤーの字幕をオンにするだけで、ピクチャーインピクチャーに表示される。
  • Coursera.org、Canadian Broadcasting Corporationなど、Webビデオテキストトラックフォーマット(WebVTT)をサポートする動画サイトにおいて、ピクチャーインピクチャーで視聴する際にWebサイトのビデオキャプションもサポートする。
  • インストール後の初回実行時に、Firefoxでの言語とオペレーティングシステムの言語と一致しないことを検出し、2つの言語のどちらかをユーザーが選択可能になった。
  • Firefoxのスペルチェックで、複数の言語のスペルがチェックが可能に。追加の言語を有効にするには、テキストフィールドのコンテキストメニューでそれらを選択する。
  • macOS 11以降(HDR互換画面を使用)で、HDRビデオがMac版Firefoxでサポートされるように。YouTubeなどで、よりリアルなビデオコンテンツを楽しむことが可能に。HDRビデオサポートを有効にするために手動で設定を切り替える必要はなく、バッテリーの環境設定で「バッテリー使用中にビデオストリーミングを最適化する」に設定されていないことで有効化される。
  • Windows環境で、AV1をサポートしているGPU(Intel Gen 11 +、Navi 24を除くAMD RDNA 2、GeForce 30)がハードウェアアクセラレーションによるAV1ビデオデコードが可能に。MicrosoftストアからのAV1ビデオ拡張機能をインストールすることが必要。
  • Intel GPUを搭載したWindowsでビデオオーバーレイが有効となっていると、ビデオ再生中の電力使用量が削減。
  • ペイントと他のイベントの処理の間の公平性が向上。具体的には、Twitchのボリュームスライダーの動作が大幅に向上。
  • LinuxとWindows 11において、スクロールバーは1つのウインドウ内でコンテンツ収まりきらない場合のみ表示され、それ以外の場合は表示されない。これを常時表示に切り替え可能に。Linuxでは、[設定]で変更可能。 Windows 11では、Firefoxはシステム設定に従う([設定]→[アクセシビリティ]→[視覚効果]→[常にスクロールバーを表示]で設定する)。
  • 英国でのクレジットカードの自動入力とキャプチャをサポートするようになった。
  • リファラーからのプライバシーリークを防ぐために、クロスサイトからのsubresource/iframeリクエストに対して、弱い制限のリファラーポリシー(unsafe-url、no-referrer-when-downgrade、origin-when-cross-originなど)を無視する。

いくつか具体的に見ていこう。ピクチャーインピクチャーで視聴する際にキャプション/字幕の表示がサポートされるのは、図5の通りである。

  • 図5 ピクチャーインピクチャーでキャプション/字幕の表示がサポート

これは、以前からコミュニティで要望のあった機能である。スペルチェックで、複数の言語のスペルがチェックを行うには、まず、テキストボックスでテキストを選択し、コンテキストメニューで[スペルチェックを行う]にチェックマークが入った状態で、[言語]→[辞書に追加]から、言語パックを追加する。

  • 図6 言語パックの追加

また、修正項目として、以下が行われた。

  • Webサイトに適した配色をユーザーが選択可能に。テーマの作成者においては、Firefoxがメニューに使用する配色についてより適切な判断ができるように。さらに、Webコンテンツの外観を[設定]で変更可能に。
  • このリリース以降、Windows用のFirefoxインストーラは、SHA-1ではなくSHA-256ダイジェストで署名される。Windows 7で、Firefoxインストーラを実行するには、更新プログラムKB4474419が必要となる。この更新プログラムの詳細については、Microsoftテクニカルサポートサイトを参照してほしい。
  • macOS 11以降では、ウィンドウごとに1回だけフォントをラスタライズするように。結果、新しいタブを開くことが高速になり、同じウィンドウでのタブの切り替えも高速になった(ウィンドウ間でフォントを共有したり、これらのフォントの初期化にかかる時間を短縮したりするために行う作業はまだあるとのこと)。
  • 深くネストされたdisplay: grid要素が大幅に改善。
  • 複数のJavaスレッドのプロファイリングのサポートが追加。
  • Webページをソフトリロードしても、すべてのリソースが再検証されることはなくなった。
  • 非vsyncタスクの実行時間が長くなり、GoogleドキュメントとTwitchの動作が改善。
  • プロファイルのキャプチャの開始/停止時間を制御するためにGeckoview APIが追加。

節目のバージョンアップということもあり、見た目に訴えるアップデートが多かった。一部で指摘されているが、バージョン番号が3桁になったため、一部のWebサイトで不具合の可能性がある。これは、Webサイト側で、Webブラウザを識別するために、「ユーザーエージェント(UA)」をWebサーバーへ送信する。この文字列に、Webブラウザのバージョン番号も含まれるのであるが、3桁になることで不具合が発生する可能性がある。かつての2000年問題と似たような問題である。Mozillaによれば、回避策も準備中とのことである。もし、不具合があれば、開発ブログに報告してほしいとのことだ。

セキュリティアップデート

同時に行われたセキュリティアップデートであるが、修正された脆弱性はCVE番号ベース で9件である。深刻度の内訳は、4段階で上から2番目の「High」が6件、上から3番目の「Moderate」が2件、もっとも低い「Low」が1件となっている。

「High」では、

  • ポップアップを経由したフルスクリーン通知でのバイパス
  • ネストされたブラウジングコンテキストでの許可プロンプトのバイパス
  • CSS変数を使用したブラウザ履歴の漏洩
  • iframeサンドボックスでのバイパス
  • Firefox 100とFirefox ESR 91.9で修正されたメモリ安全性の問題
  • Firefox 100で修正されたメモリ安全性の問題

などが対応された。最高レベルの「Critical」はないが、早めのアップデートをすべきであろう。