パナソニック エレクトリックワークス社は、エネルギー使用量の半減達成によって2021年度「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した広島中町ビル(広島県広島市)をメディアに公開。その取り組みを取材してきました。
広島中町ビルは、1996年8月に竣工した地下2階・地上7階建て約12,000平方メートルのオフィスビル。現在は約300名が勤務しています。
竣工の時点から、高効率機器とガス・電気のベストミックスを意識した熱源機器を導入するなど、当時から省エネを強く意識していました。2004年にはITによって昼間の照明や空調などを制御して、 最適なエネルギー管理を行うBEMS(Building Energy Management System)を導入するなど、積極的に省エネ活動を推進しています。
継続的な省エネへの取り組みが評価された
さらに本格的な省エネ活動がスタートしたのが2009年度です。それまで空調設備用の熱源として使っていたガス吸収式冷温水機×2基を空冷電気式の熱源機に変更し、オール電化へとシフト。これによって原油に換算して24.4kLの削減効果を実現しています。
その後も、2011年から2019年まで段階的にビル内の照明をLED照明に更新。こちらの原油換算削減効果は29.9kLとなり、LED照明にしたことで年間消費電力を57%も削減しました。
このほかにも、通信機械室のエアコンを1台削減したり、エレベーターホールのムダな照明を消灯したりといったビル設備の運用によって、8.6kLの原油換算削減効果を生み出しました。加えて、社員が使うPCでスリープモード設定の徹底、クールビズ・ウォームビズを継続などによっても、1.5kLの原油換算削減効果を生み出すなど、地道にムダを省いています。
感染症対策と働き方の変化に対応する新しい取り組み
そして2020年、コロナ禍による働き方の変化に伴い、 感染症対策とニューノーマル時代への対応を目指した実証実験として、大規模な改修を実施しました。
1つ目は、天井照明機器のアップデートに対応したシステム天井の改修。働き方改革に伴って、広島中町ビルでは頻繁にオフィスレイアウトが変わるようになったそうです。そこで既設のシステム天井面に、照明器具の着脱が簡単な配線ダクトをビルトインしました。頻繁なレイアウト変更にも柔軟に照明を対応できるようにし、さらにレイアウトの自由度も高めました。
合わせて、作業スペース(タスク)を効率的に照らしながら、周辺環境(アンビエント)も最適な照度とする「タスク・アンビエント照明」を導入。作業面の明るさを確保しながらベース照明の明るさを下げることで、省エネ化を進めています。
2つ目は、画像センサーとクラウドを活用した換気設備のオートコントロール機能です。コロナ禍における感染対策のひとつとして、CO2制御による換気を常に100%近くで運転していることが多いとのこと。一方では在宅勤務も増えており、オフィス内に人が少ない時間帯もあります。
そこでオフィス内の在席人数を画像センサーで検出。クラウド上で人間の粗密情報に基づく換気量判定アルゴリズムをベースに、換気設備を自動制御しています。これにより、十分な換気量を維持しながらムダを省くことが可能。今後は、局所的に「密」な場合に換気量を増強できるような仕組みも検討しているそうです。
今回、実際に広島中町ビルのオフィスフロアを見て回りました。業務スペースは大きく2フロア。1つは「Sharedea」と名付けられたフリーアドレスの空間です。一部の部署を除き、その日の気分やタスクに合わせて、好きな席で仕事をします。
もう1つは、よりリラックスしてコミュニケーションがとれる「Comm」です。空間を広く取り、緑も多くレイアウト。チームで集まって話しながら仕事を進められるほか、一人で集中して仕事をするスペースも確保しています。
細かな積み重ね、2008年度から比べて約49%のエネルギー削減を達成
パナソニック広島中町ビルは2008年からの約12年で、ビル全体の消費エネルギーを約49%も削減しました。これは何かひとつの大きな最新技術だけで実現したしたのではありません。最新の省エネ機器への交換はもちろんですが、徹底したムダの削減、ビルの管理者と入居者の一人ひとりが協力することで実現しています。
省エネの促進は、企業にとって経済的なメリットだけでなく、CO2削減という社会的な課題のひとつでもあります。パナソニック広島中町ビルの取り組みは、省エネ、そしてSDGsへの積極的な対応のためにも、参考になるオフィスは多いのではないでしょうか。