デル・テクノロジーズの「New Inspiron 14 2-in-1」は、14型ディスプレイを搭載した2-in-1 PCだ。2022年4月1日発売の最新モデルには、インテルの第12世代Coreプロセッサ搭載モデルとAMDのRyzen搭載モデルを用意するが、今回はRyzen 7 5825Uを搭載してシステムメモリが16GB、ストレージ容量が512GBの「Inspiron 14 7425 2-in-1」を取り上げてその処理能力や使い勝手を検証していく。

  • デルの個人向け主力ノートPCブラントで2-in-1をカバーする「New Inspiron 14 2-in-1」

  • 天板をはじめとしたデザインはシンプルで存在を主張しすぎない

なんといっても特徴は、ディスプレイを360度折り返すことで一般的なノートPCやスレートタイプのタブレットとして利用できる点だろう。この角度によってメディアプレイヤーとして、もしくは省スペースデバイスとして使い分けられられる。

ただ、試用機の本体サイズはW314×D227.5×H17.86mmで、重さは1.73kg。スレートタイプのタブレットとしてはもちろんだが、クラムシェルスタイルのノートPCとしても今となってはなかなか重い部類に入る。そのため、2-in-1 PCではあるものの、その目的はタブレットとしてもノートPCとしても使える機動性ではなく、用途に応じた幅広いディスプレイの開閉角度を選択できる点がポイントになりそうだ。

  • これまで数多くのフリップタイプ2-in-1 PCを見てきたが、置き場所を選ばないテントスタイルは使ってみるとけっこう便利

  • 右側面にはHDMI 1.4出力と2基のUSB 3.2 Gen 2 Type-Cを備える

  • 左側面にはSDカードスロットとUSB 3.2 Gen 1 Type-Aを搭載する

  • 正面

  • 背面には排気用スリットを設けている

  • ディスプレイを開くと排気スリットから排出した熱気がディスプレイパネル表面に沿って上に出ていく

  • 底面の前方左右端にはスピーカーを内蔵

  • 標準で「Dellアクティブペン」が付属する

本体に搭載するインタフェースは、USB 3.2 Gen 2 Type-Cが2基にUSB 3.2 Gen 2 Type-Aが1基、SDカードスロット、そして映像出力としてHDMIを備えている。無線接続用には「MediaTek Wi-Fi 6 MT7921 2x2」を内蔵してIEEE802.11axに対応したほか、Bluetooth 5.2も利用できる。デジタルカメラでは依然としてSDカードを使うことになるので、本機のようにSDカードスロットを搭載するノートPCはとても重宝する。

  • キーボードは一部に“分割キートップ”レイアウトが存在する。タッチパッドのサイズは115×80mm

キーボードのキーピッチは実測で約19.5mm、キートップサイズは約17mm、キーストロークは約1.5mm確保する。スペースキーの左右に「無変換」キーと「変換」キーを間隔空けずに配置しているので、日本語入力でこれらのキーを多用するユーザーは注意する必要がある(一応くぼみを設けて認識できるように配慮されている)。

同様に1つのキーでキートップを分割しているレイアウトとして「¥」と「BackSpace」、「」と「Enter」、「\」と「右シフト」、「上カーソル」と「下カーソル」がある。このうち「」と「Enter」、「上カーソル」と「下カーソル」の組み合わせは日本語で多用するので影響が大きい。特に「上カーソル」と「下カーソル」は分割する縦方向のサイズが小さいこともあって、ミスタイプが生じやすかった。

  • キータイプの感触はやや軽め

  • 右上端にある電源ボタンは指紋センサーを組み込んでいる

New Inspiron 14 2-in-1のディスプレイは1,920×1,200ドットで、フルHDと比べて縦方向にやや広い16:10のアスペクト比を採用している。さらに独自の「ComfortView」の搭載で有害なブルーライトの発生を低減するだけでなく、DCディミングと併用することでフリッカーも減らして目の負担を軽減している。なお、パネルは光沢タイプなので色彩にメリハリがあるが、周囲の環境光はやや気になる。

  • タッチパネルを組み込んだディスプレイは光沢パネルを採用する

  • ディスプレイの上に内蔵するWebカメラにはハードウェアレンズカバーを用意する

  • ディスプレイは水平まで開く。ディスプレイを開くと本体が持ち上がり、キーボードにタイプしやすい角度が付く

最新Ryzenの気になる性能は?

CPUとして搭載するRyzen 7 5825Uは8コア16スレッドの構成で、動作クロックは基本で2GHz、最大ブーストクロックで4.5GHzとなる。TDPはデフォルトで15W。L3キャッシュメモリの容量は合計で16MBだ。グラフィックスコアはAMD Radeon Graphicsを組み込んでいる。グラフィクスコアは8基で動作クロックは2GHz、グラフィックスメモリは2GBまで利用可能だ。

  • CPU-ZでRyzen 7 5825Uのスペックを確認する

Ryzen 7 5825Uを搭載するNew Inspiron 14 2-in-1の処理能力を検証するため、ベンチマークテストのPCMark 10、CINEBENCH R23、3DMark Time Spy、ファイナルファンタジー XIV:漆黒のヴィランズを用いて測定した。比較対象としてCPUにRyzen 5 PRO 4650U(6コア12スレッド、動作クロック2.1GHz/4GHz、L3キャッシュ容量8MB、統合グラフィックスコア Radeon Graphics)を搭載し、ディスプレイ解像度が1920×1080ドット、システムメモリがDDR4-3200 8GB、ストレージがSSD 256GB(PCI Express 3.0 x4接続)のノートPCで測定したスコアを併記する。

ベンチマークテスト New Inspiron 14 2-in-1 比較対象ノートPC
PCMark 10 5442 4542
PCMark 10 Essential 9479 8649
PCMark 10 Productivity 9042 6712
PCMark 10 Digital Content Creation 5102 4383
CINEBENCH R23 CPU 7343 6086
CINEBENCH R23 CPU(single) 1409 1158
3DMark Time Spy 1174 941
FFXIV:漆黒のヴィランズ(最高品質) 2631「やや快適」 2348「普通」

New Inspiron 14 2-in-1と比較対象を比較すると、ほぼすべてのベンチマークテストでNew Inspiron 14 2-in-1のスコアが上回った。製品登場時期(比較対象PCの出荷開始は2020年)の違いを考えると、Ryzenの進化に合わせた順当な処理能力向上が反映されていると言えそうだ。

また、2-in-1 PCという性格上、処理能力以上に静音性も重視しなければならない。加えて、ディスプレイを360度開いてスレートスタイルで使用するときはタブレットのように本体を直接手で持って使うことになる。このとき、本体の表面温度は使い勝手に大きく影響する。

そこで、使用中の騒音と本体表面温度を評価するため、電源プランをパフォーマンス優先に設定して3DMark NightRaidを実行し、CPU TESTの1分経過時において、Fキー、Jキー、パームレスト左側、パームレスト左側、底面のそれぞれを非接触タイプ温度計で測定した表面温度と、騒音計で測定した音圧の値は次のようになった。

表面温度(Fキー) 38.6度
表面温度(Jキー) 35.9度
表面温度(パームレスト左側) 28.7度
表面温度(パームレスト右側) 27.1度
表面温度(底面) 40.5度
発生音 43.6dBA(暗騒音37.5dBA)

パームレストの表面温度は30度以下で、使用感にはほぼ影響しない。一方でキートップの温度は高めだ。特にFキーでは40度近くまで上がっているように、左手でカバーする領域で特に温度が高くなるようだ。今回の評価作業は気温が低めだった3月下旬に実施していたので、それほど不快でなかったものの、夏場になると熱さが気になることもあるかもしれない。

また、底面の表面温度も40度前後と高いため、膝において使う場合は少し気になりそうだ。一方で、タブレットのように使う場合は、その機構上底面に触れることがないので問題はないだろう。なお、クーラーファンの風切り音は「ムー」といういかにもモーターが回っていますという感じの振動音だが、高音成分が少ないこともあって「ファンの音が気になってしょうがない」ということはなかった。

おうちPCに“2-in-1”タイプを選ぶ便利さを実感

フリップ形式2-in-1 PCのメリットは、モード変更が容易という点にある。重さが1.7kgとそれなりに重く、屋外に持ち出して機動力を必要とする用途には正直言って向いていないと思うが、屋内限定と割り切った上で書斎、リビング、ソファー、ベッドで使ってみるととても便利だった。用途に応じて柔軟に使い方を選べるNew Inspiron 14 2-in-1なら、使い勝手がすこぶるよろしい“おうちPC”として活躍してくれるだろう。

  • ACアダプタのサイズはW112×D50×H28mmで、重さは310g(コード込み)