大きくなった“M2”、スマホライクな使い勝手が○

WM1シリーズに新たに加わった“M2”の2機種は、本体の素材やカラー、一部の内部パーツ、内蔵メモリの容量の違いを除けば、操作性や接続性に関しては基本的に共通です。

2つのヘッドホン端子(4.4mm 5極のバランス端子、3.5mmステレオミニのアンバランス端子)やボタンの配置なども、従来機種からほぼそのまま引き継いでいます。物理ボタンは本体の右側面にあり、画面を見ずに操作可能。左側面には少し細長くなったスライド式HOLDスイッチを備えています。背面はどちらも上部の厚みが若干増した形状になりましたが、段差はなく、ゆるやかなカーブでつながっています。

  • 2つのヘッドホン端子(4.4mmバランス、3.5mmステレオミニのアンバランス)を備える

  • NW-WM1AM2(左)とNW-WM1A(右)の右側面を比べたところ。WM1AM2では、物理ボタンのレイアウトは電源ボタンのみ上寄りに飛び出すような配置に変わった。これは上位のWM1ZM2も同じだ

従来機種から大きく変わったのはmicroSDカードスロットで、“M2”では左側面に移動し、ミドルレンジのNW-ZX507のように専用トレイを備えています(従来は底面にあり、microSDカードは直挿し)。

  • NW-WM1ZM2(左)とNW-WM1Z(右)の左側面を比べたところ。WM1ZM2はスライド式HOLDスイッチが少し細長くなり、microSDカードスロットが従来機の底面から移動してきた。スタンダードなWM1AM2も同様の配置になっている

  • NW-WM1ZM2のmicroSDカードスロットはトレイ式になっている(SIMカードは使えない)

  • 従来のWM1シリーズの底面にはmicroSDカードスロット(右)、WMポート(中央)、ストラップホール(左)が付いていた。写真はNW-WM1Z

充電/データ転送用の端子はソニー独自のWMポートが廃止され、USB Type-Cに変わりました。このあたりは既存のA100/ZX500シリーズと同じ流れではありますが、ハイエンド機種でもついにUSB-Cを採用したことで汎用のUSB-Cケーブルが使えるように。おそらく誰もが歓迎するポイントといえそうです。

  • 充電/データ転送用の端子がUSB Type-Cになった(左)。ソニー独自のWMポート端子(右)は廃止される流れにある

“M2”はAndroidを搭載し、スマホライクな使い勝手を実現した一方で、従来のWM1Z/Aよりも大きく、そして重たくなっています。音質を突き詰めつつ携帯性も兼ね備えたキャリアブルなプレーヤーに仕上がっていますが、M2のサイズ感に関して山本氏は次のようにコメントしています。

山本:本体の縦横サイズは私が普段使っている「iPhone 13 Pro」とほぼ一緒なので、画面の操作感については今やスムーズに感じられました。でも正直に言えば、WM1ZM2は片手で持ちながらハンドリングできるピークのサイズに達したと思います。

最先端のテクノロジーを「よりコンパクトなデバイス」に詰め込むことは、ピュアに高音質体験を探求するSignature Seriesならばこそ許されるアプローチではないかと思います。今度はあえて大画面化を追い求めず、「最小・最高音質のハイレゾウォークマン」を追求すれば、またスマホとの2台持ちも抵抗感なく受け入れてくれるファンも少なくないはずです。

  • NW-WM1ZM2(左)とNW-WM1Z(右)の背面。従来のシボ加工から、梨地のようなラバー仕上げになった

  • NW-WM1AM2(左)とNW-WM1A(右)の背面。上のWM1AM2のリアパネルとはやや趣を異にしている

バッテリ持ちは十分? ヘッドホン出力に「もう少しパワーを」

本体サイズの大型化はポータブル性に影響しますが、“M2”はそのぶんバッテリー持ちが強化されているのも事実です。公称でどちらも最長40時間(MP3 128kbpsまたはFLAC 96kHz/24bit再生時)使え、DSD 2.8MHz再生時は15時間聴けるようになりました。

以前、Android搭載ウォークマンのA100/ZX500シリーズのユーザーから「バッテリー持ちが悪い」と不満の声が上がっていたことを受け、ソニーは後日アップデートで自動電源オフ機能を追加。実使用の改善を図っていました

音楽を聴いていないスリープ時にもバッテリーがじわじわ消費されるのはありがたい話ではありませんが、“M2”にも自動電源オフ機能がもちろん備わっているので安心です。ただ、山本氏は本体電源のオン/オフにかかる時間が(従来機よりも)速くなっていることから、「音楽を聴かないときは(スリープではなく)ウォークマンの電源をオフにする」ことを勧めています。

これについて、工藤氏は「スマホアプリのアイコンを押すだけで音楽が聞き始められる時代に、(ウォークマンの)電源をオン/オフするのはちょっとしんどいな、という気持ちもあります」と話していました。バッテリー持ちは運用の仕方でカバーできる部分ではありますが、使い勝手のさらなる向上のためにも、メーカーには引き続き改良が求められる部分かもしれません。

そのほか、イヤホン/ヘッドホンの最大出力に関しては「もう少し馬力(パワー)が欲しい」という声がお二人から上がりました。

コロナ禍の今、おうち時間の増加に伴って、自宅でのヘッドホンリスニングを充実させるためにポータブルプレーヤーを活用する人が増えています。そしていわゆる“鳴らしにくい”(=高出力を必要とする)イヤホン/ヘッドホンを所持するポータブルファンは少なくありません。

「家で聴くというシーンが増えているので、もうちょっと馬力が欲しいというのは感じました。不足するというわけではないけれど、ちょっとパツパツというか、息切れしそうな不安感はあります」(工藤氏)

  • NW-WM1ZM2の利用イメージ

対談の中ではほかにも、「カラバリ欲しくないですか?」(山本氏)、「A(WM1AM2)の方はあってもいいですね。個人的にホワイトがあったら最高です」(工藤氏)といった、本体カラーのバリエーションへの要望も。“M2”を家で使うときのスタンドなど、アクセサリや周辺機器を充実させてほしい、といった話もありました。

工藤氏はまた、従来のWM1シリーズの本体底面にあったストラップホールが“M2”では省かれたことに着目しており、「高価格帯の製品をストラップの紐に託すのは少々気が引けるので、いろんなカタチでポータブルしやすいようにアクセサリが充実してくれたら良いですね」とコメントしています。

山本氏・工藤氏が「次のウォークマンに求めるもの」

近年、スマートフォンとワイヤレスイヤホンを組み合わせて音楽を聴くスタイルがすっかり定着しましたが、ウォークマンをはじめとするデジタルオーディオプレーヤーと有線イヤホン/ヘッドホンの組み合わせにはまだまだ根強い人気があり、ポータブルファンにとっては必須アイテムといえます。

さまざまな選択肢がある中からどれを選ぶかは、音の好みや使いたいサービス、組み合わせたいイヤホン/ヘッドホンなど、ユーザーの嗜好や環境によって決まりますが、「ウォークマンの新製品だから欲しい」という人も少なくないはず。NW-WM1ZM2/NW-WM1AM2は、最上位WM1シリーズの初代機から大きな進化を遂げており、「良いものを買った」という所有欲を満たすのに十分過ぎるほどの迫力があります。

「家で使うからこそ、ストリーミングサービスが使える価値が上がったと感じます」という工藤氏の言葉からも分かるように、ポータブルプレーヤーを家でちょっとした据え置き型ネットワークプレーヤーのように使いたいというニーズは少なからずあるので、そういった流れも2つの新機種がうまく捉えていくと考えられます。

高価なWM1シリーズは、おいそれとは手が出ない存在であることも確かです。ただ、ハイエンド機の開発で培われた技術はいずれ「買いやすい価格帯の製品」にも降りてくるもの。さまざまなエレクトロニクス製品を手がけるソニーならではの、技術開発力の結集にも期待がかかります。

ということで、最後に工藤氏、山本氏に聞いた「ウォークマンに求めたいこと」を紹介して、本レポートを締めくくりましょう。

工藤:ソニーといえば、今回のようなハイエンドなモデルからカジュアルなモデルまで幅広く手がけられる開発力が魅力のひとつ。今回のWM1ZM2/WM1AM2がかなりの出来であるだけに、その開発のフィードバックを生かし、Aシリーズの新作も期待したいところです。

山本:次にAndroidを搭載するフラグシップのウォークマンが出てくるならば、私は「常時ネットワーク接続」ができるようになるものと期待していました。

音楽ストリーミングサービスの醍醐味は、オフライン再生用にキャッシュをしなくても、いつでも・どこでも聴きたい音楽を再生できるところにあると思います。ぜひウォークマンには、スマホ以上にリッチな音楽体験を私たちに見せつけて欲しいです。

それは、必ずしもハイレゾ対応の高級機種じゃなくても良いと思います。現在メモリープレーヤーを内蔵するウォークマンも発売からずいぶんと経ちましたね。eSIM機能を内蔵するAシリーズのバリエーションモデルなども大歓迎です。

  • NW-WM1AM2の利用イメージ