ソニーが2月1日に都内に開設した、新しいコンテンツ制作の拠点「清澄白河BASE」が、報道関係者向けに公開されました。大型LEDウォールに高精細な背景を写し、プロシネマカメラで撮影した現実空間にあるオブジェクトや人物を後処理なく重ね撮りする「バーチャルプロダクション」に対応した、国内初の常設スタジオです。
国内初、最先端のバーチャルプロダクション対応スタジオ
清澄白河BASEは、ソニーグループの中で映像技術を中心とするクリエイティブコンテンツの制作、およびビジュアルソリューションを提供するソニーピーシーエル(以下、ソニーPCL)の新しいクリエイティブ拠点です。
同社が東京都江東区に構える1,430平米の大型スタジオの約半分を占める、760平米のスペースが新たにバーチャルプロダクションスタジオとして整備されました。
スタジオにはソニー独自の高画質LEDディスプレイシステム「Crystal LED」を複数組み合わせた大型ビデオウォールと、ソニーCineAltaシリーズのデジタルシネマカメラ「VENICE」を常設。映画フィルムの現像所として設立され、同社が長く培ってきた映像制作のノウハウと最先端のテクノロジーがこの場所に集結しました。
説明会に登壇したソニーPCL社長の佐藤倫明氏は、「バーチャルプロダクションは現在、ソニーの映像制作における最も勢いある領域のひとつ。バーチャルプロダクションに特化した最先端のスタジオを短期間に立ち上げることができた。これから多くのクリエーターに活用してもらいたい」と呼びかけていました。
佐藤氏は今後も、バーチャルプロダクションの技術をエンターテインメントから、企業CMなどエンタープライズ領域の映像制作も含めて、幅広く活用してもらうための提案を届けたい、と意気込みを語っています。
バーチャルプロダクションの技術や表現手法については映像コンテンツの制作に限らず、展示など空間設計、オンラインイベントなどにも活かせるといいます。佐藤氏は、これから清澄白河BASEが映像制作者やクリエイターの思いを数多く形にする場所として機能するように、全力を尽したいと話しました。
最大10K解像度の映像を映し出せるCrystal LEDディスプレイ
説明会当日には、集まった報道関係者にバーチャルプロダクションの基本的なワークフローのデモンストレーションが公開されました。
スタジオの中央にはソニーの高輝度LEDディスプレイ「Crystal LED Bシリーズ」を複数枚つなぎ、9,600×3,456ピクセルの映像を再現できる横15.2m、高さ5.4mの巨大なビデオウォールが鎮座しています。表示される映像を撮影した時に自然な立体感を再現できるよう、ディスプレイは奥の方向へU字形にカーブさせて配置。さらにパネルには低反射コーティングを施しています。
2月1日のスタジオの開設に合わせて、アーティストのSixTONES(ストーンズ)がリリースする新曲のミュージックビデオがこの場所で撮影されました。CES 2022で発表した「VISION-S 02」のコンセプトムービーの一部も、ソニーのバーチャルプロダクション技術を使って撮影されています。
クリエイターの創造性を高めるさまざまなサービスを提供
映像に余計な後加工処理を盛らずに、自然な合成映像が撮れることがソニーのバーチャルプロダクションの特徴です。屋内スタジオで完結する制作が可能になることから、アーティストや制作クルーのスケジューリングが容易になること、秘匿性の高いコンテンツの撮影がセキュアな空間で落ち着いて集中しながら撮れることなどもメリットとして挙げています。
ソニーPCLが清澄白河BASEにおいて提供するのは、バーチャルプロダクションを実現する機材とそのオペレーター、スタジオだけではありません。映像コンテンツの企画段階からサポートしたり、ビデオウォールに映す「背景映像」の制作なども、クライアントの要望に合わせて柔軟な対応ができるよう体制を整えています。
同社ではこれまでにも、日本と海外の制作拠点を映像データのやり取りによって結ぶワークフローを確立したり、クリエイターによるワークショップの開催について実績を積み重ねてきました。ソニーPCLの佐藤社長は、「今後はバーチャルプロダクションの技術とノウハウを活かした国際的な映像制作、オンライン配信イベントの実施などにも展開したい」と抱負を語りました。
バーチャルプロダクションは、ソニーが誇る業界トップクラスの高性能なディスプレイ、シネマカメラとソフトウェアの技術が融合して初めて実現する映像制作の高付加価値サービスです。ソニーグループのクリエイティブ部門であるソニー・ピクチャーズエンターテインメントが培ってきた映像制作のノウハウとも連動することにより、今後もこの場所で続々と画期的な映像作品が生み出されるのではないでしょうか。